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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第172話 空の玄関口33

「上村隊長。通信を切る前に、少しハルノにいいですか?」


 再びトランシーバーを受け取り、通信先は新千歳空港内。


「ハルノ。俺たちはこれから、新千歳空港へ向かうよ」

「聞いているわ。私たちもこれから、国際線ターミナルへ移るから」


 決まった話を改めて伝えると、ハルノたちは移動の準備をすると言う。

 国内線ターミナルは屍怪に侵入され、合流場所となるは国際線ターミナル。連絡通路を渡った先で、避難用の観光バスもある場所だ。


「暫くあとになると思うけど。お互い無事に、空港で合流しようぜっ!!」

「うんっ!! 待っているからっ!!」


 互いの身を案じつつも、ハルノとの通信は切れた。

 新千歳空港の内と外。どちらもできることを、各々に行わなくてはならない。



 ***



「まずは花火を打ち上げる場所。近すぎず遠すぎずで、滑走路の奥がいいかな」


 ジープのボンネットに地図を広げ、上村隊長は作戦全体の詳細を詰めていく。

 近すぎては屍怪が戻ってくる可能性あり、遠すぎては引き寄せられない可能性。故に上手く注意を向けられて、目に留まる場所が理想的だ。


「ジープを二台使用して、四人で頼む。次に国際線ターミナルへ向かう組」


 上村隊長の命令により、打ち上げ組は決定。自衛隊員たちが所定の場所につき、トランシーバーで連絡してからの打ち上げとなる。


「……しかし花火を打ち上げようとも、全てを引き寄せられはしないだろう」


 上村隊長が懸念する事項は、誰もが理解するところ。

 数千規模の屍怪が行進をして、新千歳空港を取り囲む。建物の周辺や敷地内はもちろん、中には内部まで侵入した者までいるのだ。


「上村隊長たちが国際線ターミナルへ着けよう、屍怪の注意を引いてサポートします」


 フレッドが提案する内容は、身を餌にした囮作戦。

 新千歳空港の周辺でジープを走らせ、周囲にいる屍怪の注意を引く。上手く排除できたタイミングを見計らい、本隊は国際線ターミナルへ着けるというものだ。


「フレッド一人じゃあ、ハード!! 同行しての、スタート!!」


 単独では何もかも対応力に乏しいと、ジョシュも囮作戦への参加を決める。


「蓮夜と我々は、空港内の仲間たちと合流。避難用の観光バスを移動させ、人々の避難誘導を行う」


 上村隊長たちと向かうのは、新千歳空港の内部。

 今や屍怪の侵入を許し、心の休まらぬ場所。内部の人たちを観光バスに乗せ、新千歳空港から離れる計画だ。


「了解!!」


 作戦全体の詳細も詰め終わり、あとは開始を待つだけとなった。

 日の陰り始めた空に、打ち上がるだろう花火。道路橋から屍怪の移動を確認し、離れた後の作戦開始となる。



 ***



「上村隊長。所定の場所にて、準備が整いました」


 道路橋にて時を待っていると、ついに自衛隊員から連絡が入る。全員に声が聞こえるよう、今回の使用はスピーカー。

 左方にある扇状の建物は、国内線を運行する国内線ターミナル。さらに左側は飛行機の離着陸をする滑走路となり、長い一直線の道が三本で三列。合間には芝生のみで障害物はなく、とても広く見通しのよい場所。中でも最も奥となる道路こそ、打ち上げに最適と決めた位置だ。


「よし。では、打ち上げを開始してくれ」

「了解」


 上村隊長が始まりの合図をして、応える滑走路上の自衛隊員。

 双眼鏡で見る新千歳空港の敷地には、今も徘徊を続ける数千規模の屍怪。これから花火が打ち上がり、どう行動に変化あるか見ものだ。


「ヒューン。ドドンッ!!」


 空に赤い火の玉が打ち上がり、弾けて満開の花火が咲き誇る。

 イベント用の花火はやはり、大規模で圧倒的に目を見張る代物。夏の花火大会で、河川敷から見た物と類似。新千歳空港から離れた道路橋からでも、はっきりくっきり綺麗に映る鮮明さ。僅かに時が止まった感覚に陥り、感動に見惚れてしまうくらいだった。


「……っと、屍怪の様子を確認しねぇと」


 花火に目と心を奪われていては、遂行すべき本来の目的。

 全ては屍怪を誘導して、数を減らすため。新千歳空港と敷地の様子を、双眼鏡にて確認しなければならない。


「……どうだ?」


 双眼鏡を覗いて様子を見るは、手前の立体に青空と駐車場。扇状の建物である国内線ターミナルに、右方の長方形をした建物である国際線ターミナル。

 全ての場所に存在するは、徘徊する数多の屍怪。花火の一発目が打ち終わっても、特に行動変化は見られない。


「……ダメなのか?」


 際立つ行動変化のなさに、不安が胸中を覆い始める。

 目に耳と視覚的にも聴覚的も、影響力の高いだろう花火。これだけの大規模で効果を得られねば、他の策など簡単に思い浮かぶはずもない。


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