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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第170話 空の玄関口31

「クソッ!!」


 手を地にフレッドは立ち上がると、屍怪の肩を掴んで引き離しに動く。

 ジョシュの背後から首元に回す手を、力任せに振り解きできる距離。両手を胸の前に構えてステップを踏むフレッドは、まるで格闘家かボクサーのよう姿だった。


「相手をしてやる」


 呟くとフレッドは足を大きく振りかぶり、高く上げてのハイキックを披露する。

 目で捉えることギリギリというほど、素早くキレあり鋭かったハイキック。爪先が頬に当たると屍怪の顔面は歪み、首は百八十度と可動域を超えあらぬ方向へ。遅れることコンマ数秒ほどして、踊るよう体を半回転させ地に沈んだ。


「フレッド!! ジョシュ!! 急げっ!! 後ろから来ているぞっ!!」


 後方にいる二人を呼び戻すため、声を上げて訴える。

 首の骨を折り一体を無力化させようとも、窮地をまだまだ逃れていない。アウトレットモールの通路を歩くは、もはや数えきれぬほどの屍怪。渋谷の細い路地を行く、ハロウィン時の群衆を彷彿させる光景だ。


「大丈夫かよっ!? 怪我はしなかったかっ!?」


 後方にいた二人と合流して並走し、すぐさま安否確認と質問を投げる。

 フレッドは屍怪犬に上を取られ、ジョシュは屍怪に背後から掴まれた。危機に際しているから想定外あらず、それでも身の心配をするは当然だ。


「ノープログラム!! 平気!! 平気!!」


 腕を前にジョシュは指を二本立て、無事だと明るい雰囲気だ。


「……問題ない」


 フレッドはどこか神妙そうな面持ちに見えるも、ジョシュの隣を走り怪我なく無事な様子。

 アウトレットモール出口となる門まで、僅か三十メートルほどという場所。上村隊長たちが待つ駐車場は、もはや目と鼻の先という距離である。


「みんな無事かっ!?」


 アウトレットモール出口となる門の前にて、腕を回し誘導をするは自衛隊員。

 騒動に気づき助けに向かおうとするも、合流できなければ最悪と自重。故に出口前にて屍怪を撃退し、退路の確保に動いてくれたのだ。


「蓮夜!! 早く車の中へ!!」


 運転席から顔を覗かす上村隊長に促され、ドアを開けてジープの後部座席へ乗車。


「上村隊長!!」

「みんなもジープへ乗り込めっ!! 退却するぞっ!!」


 感謝の呼びかけに応じる間もなく、上村隊長は自衛隊員たちに指示を飛ばす。

 アウトレットモールの門前にて、一列に並べられた五台のジープ。隊員たちが戻ってくればすぐに、場を離脱できるよう準備していたのだ。


「二人やられたっ!!」

「運転手が足りないっ!! 一人は運転してくれっ!!」


 自衛隊員たちは合流してからも、事態の大きさに混乱が生じていた。

 後方から歩き迫るは、屍の怪物と化した屍怪。危機を脱せずして安堵感は微塵もなく、離脱できねば安心感を得られるものではない。


「出発だっ!!」


 自衛隊員たちが各々に乗車したこと確認し、上村隊長はアクセルを踏み前進を始める。

 アウトレットモールの門から、駐車場へ流れ出てくる屍怪。タイミングとしてはギリギリでも、追いつかれることなく退却できた形だ。



 ***



 屍怪の行進を目撃してから数刻が経過し、頭上にあった太陽も西へ落ちつつある頃。

 新千歳空港を遠目に見える、高さ十メートルほどの道路橋。双眼鏡で見る建物の周辺はどこも、屍怪と思わしき影がウロウロしている。


「シット!! 二人もやられるなんてっ!!」

「仕方ない。起きてしまったことだ」


 何度も地を踏んで憤る自衛隊員を、上村隊長は肩に手を置き宥めている。

 屍怪いる外へ赴く行為は、常に危険と隣り合わせ。自衛隊員たちはみんな覚悟の上でも、仲間の死となれば堪えるもの当然だ。


「上村隊長。誘導作戦の開始はいつにしますか?」


 花火の入手と前提段階をクリアし、フレッドは作戦開始のタイミングを見計らう。


「太陽が沈めば、ブラックアウト!! 目が利かねば、デンジャラス!!」


 ジョシュは変わらずのラップ口調で、夜が近づく空を見上げ指摘する。

 日が落ちてはたしかに、全体の把握は難しい。終末の日から夜に外出など、リスクが高すぎて論ずるまでもない話だ。


「なら作戦開始は、明日って感じか。でも少し、残念だよな。花火っていえば、やっぱり夜だろ」


 暗い夜空に火花が散ってこそ、本来の良さが際立つ物。絶好のシチュエーションで見られぬとは、無理難題とはいえ少しもったいない話だ。


「早朝。日が昇り切る前に、打ち上げを始めよう。音だけではなく、視覚も活かす。暗いうちから打ち上げれば、効果も一段と期待できるだろう」


 上村隊長の発言により、作戦の大枠が決まる。

 新千歳空港にいるハルノたちと合流するは、明日の早朝と日が昇りきる前。離れた位置から花火を打ち上げ、屍怪の誘導をして向かう手筈だ。


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