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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第168話 空の玄関口29

「一刀理心流。蛟龍連撃(コウリュウレンゲキ)


 上段から振り下ろす一斬を始めとし、下段から切り返しを放つ連撃。間近に迫った屍怪を斬りつけ、一体は沈黙して地に眠る。

 しかしそれでも、侵攻を止めぬ屍怪。血が通っているのか定かでない紫の顔色に、血痕や泥に汚れ各所で破れた衣服。下顎を無くしもはや噛めぬ者や、片腕を欠損しアンバランスな者。今まで見た姿と同様に、怪我が目立つ者も多い。


 もうこんな所まで、……押し戻されたのかよ。


 屍怪を幾度と倒しても、全く追いつかぬ状況。自然と後退を余儀なくされ、気づけば元いた舞台前まで。

 イベントホールでも、最奥となる場所。これ以上は後退しようにも、退がることはできない。


 っ!! それならっ!!


 屍怪との距離が遠い内に、先んじで舞台上へ駆ける。

 台車に乗せられる大型スピーカーは、百五十センチはあろう人間サイズ。重さあり容易に動かせる物ではなく、横幅も腕を回せぬほど太い。


「本来ならもったいなくて、できない話だけど。今は仕方ねぇ!!」


 高価な物と躊躇うところはあるも、今は緊急時とやむなき話。目を瞑って台車から滑らせて、舞台上で横倒しになる大型スピーカー。

 前後にある階段の後方を、大型スピーカーで塞ぐ決断。階段は人が一人のみ上れる広さで、舞台と地上の差も百五十センチはある。生者と違い屍怪と化した者では、簡単に上って来られないだろう。


「ヴァアアア!!」

「うぉおおっ!!」


 前方の階段から上りくる屍怪を、愛刀の黒夜刀で斬りつける。

 階段を一体ずつしか上れないとなれば、囲まれる心配なく対峙しやすいもの。屍怪を迎撃するにあたって、これ以上ない環境だった。


「ここまでやってもっ!! 数が多すぎるぜっ!!」


 舞台上へ来た者から斬り続けるも、数という圧力に押され始める。

 倒した屍怪は舞台下に転げ落ち、舞台上では腹をつける者。それでも舞台中央まで押し込まれ、悪役に囲まれるヒーローの心境だった。


「撃てぇ!!」


 舞台下から聞こえるは、間違いなく人の声。続いて耳に届いてくるは、弾丸発射される重たい音。

 横に広がり接近してきたのは、逸れたはずの自衛隊員たち三名。屍怪に迫られる窮地に登場とは、ヒーローショーさながら演出である。


「無事かっ!?」

「はいっ! なんとかっ!!」


 舞台下まで接近してきた自衛隊員に問われ、即座に応えて戦闘へ戻る。

 合流した自衛隊員たちと、迫る屍怪の殲滅戦。一人ではなく仲間がいれば、心身ともに力が戻ってきた。


「……やっと、一段落って感じだな」


 舞台上にいた者も舞台下にいた者も、今や二十体以上が床を舐める状況。討ち漏らしがないか、死体を見回る自衛隊員たち。屍怪に迫られる窮地を、無事に乗り切ったといえるだろう。


「……そうだ。フレッドはっ!?」


 安堵の気持ちもひとしおに、一つ当然の気がかり。

 左方へ広がり後退しつつ、半数を受け持っていたフレッド。発砲して屍怪へ対抗していたはずも、今や静まり返って銃声は全くしない。


「屍怪に迫られるは、ピンチ!! 仲間の危機には、ヘルプ!!」


 中央広場から一つ影が歩いてきて、聞き覚えのあるラップ口調。

 中央広場の左方を見ると、血痕と肉片が飛び散り倒れる屍怪。アサルトライフルを持つフレッドは悠々と歩き、仲間の助けありどうやら殲滅を完了したようだ。


「……他の隊員は?」


 合流した自衛隊員たちを見て、フレッドが確認するよう問うこと。

 イベントホールへ助けにきて、合流した自衛隊員は四名。当初は八名で臨んだメンバーも、欠けて六名と揃っていない。


「フレッドも知っている通り、一人は屍怪犬に襲われて。逃げているときにも背後から襲われ、一人を失ってしまった」


 事情を知る自衛隊員は説明をし、この場にいる人間が全員と悟る。


「……わかった。人数がこれだけいれば、花火玉も全て持っていける」


 フレッドは目を瞑り三十秒ほどして、軽く頷いてから発言。

 花火玉は二ケースで、合計が十玉。二人では一ケースが持てる限界も、人数が揃えば全て持ち帰られる。


「想像以上に、ビック!! 運ぶは意外に、ハード!!」


 舞台裏に置かれる花火玉を見て、相変わらずの態度でジョシュ。


「筒も必要だったのか。忘れていたから、みんなと合流できて良かったぜ」


 舞台裏の隅にひっそりと置かれていたのは、花火玉が入るステンレス製の筒。

 筒をなくして花火は、絶対に打ち上がらない。花火玉を入手して満足し、気づかねば盲点となるところだった。


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