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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第161話 空の玄関口22

「パパ……どこかに行っちゃうの?」


 アルバートの娘たる幼女は、不安そうに顔色をうかがっていた。

 三階ラウンジの出口に集まっては、アルバートの妻は暗い雰囲気。状況を理解できぬ年齢でも、肌で感じるものがあるのだろう。


「パパは……またお仕事なんだ」

「遊んでくれるって、言っていたのにっ!?」


 無理をして自力で立つアルバートに、娘は頬を膨らませ文句を言う。

 与えられた責務を果たすために、外出も多かった自衛隊員たち。安全かつ安心な生活を守るため、家族との時間を削るもやむなき事情であった。


「今度は少し……時間がかかりそうなんだ」


 アルバートは目線を合わせるため、膝を曲げて姿勢を低く向き合う。

 自衛隊員としての職務に休みあれば、遊ぶ約束をしていたというアルバート。娘のほうは反故にされたと感じたようで、足を前に蹴って不貞腐れ気味だ。


「パパは……お仕事なの。無理を言わないで」


 アルバートの妻は宥めようと、肩に手を置き諭している。

 アルバートの娘はまだ幼く、事態を理解できぬ年齢。何もわからないとなれば、不機嫌になるのも無理はない。


「それは……パパが悪かった。暫くはまた、お仕事なんだ。だから良い子にして、ママと一緒に……」


 アルバートは頭を撫でて、謝罪の弁を口にする。そして娘を抱きかかえ、妻と顔を見つめ合う。

 目は口ほどに物を言う。もはや何も言葉にせずとも、全て伝わっていそうな雰囲気。二人には強烈な信頼関係と、愛情で結ばれているようだった。


「パパはいつも……二人と一緒にいる。だから出発前に、笑顔で見送ってくれないかな」


 アルバートは床に下ろして注文し、応じて笑顔で手を振る娘。

 アルバートの妻は目に一杯の涙を浮かべ、それでも溢さぬ気丈に振る舞う態度。娘に悟られぬようするためか、必死に堪えているようだった。



 ***



「手を煩わせて……すまない。それでも最期は……自分の手で、全てを終わらせるつもりだ」


 噛まれた者の末路を知る、アルバート最期の望み。

 サチと二人でアルバートを支え、ラウンジから離れた一室。大きな窓あり灰色のカーペットが敷かれ、部屋の中央にはパイプ椅子が一脚。本来ならば店舗が展開される場所も、改装工事中であったため物はなく広い。


「アルバートの功績や意志は、上村隊長やみんなにも……伝えておくわ」


 今は会話や連絡をできずとも、外にいる仲間たち。

 自我を失う屍怪となる前に、己が手で幕を下ろしたい。アルバートの覚悟と意思を尊重して、残された者が伝えなくてはならぬ話だ。


「ありがとう。ハルノ。蓮夜と一緒に東京へ行けるよう、空の上から祈っているよ」


 パイプ椅子に座るアルバートは項垂れつつも、最期まで進退を気にかけていた。


「サチ。上村隊長たちと合流するまで、あとの事は頼む」

「ええ。任せておいて。アルバートの家族も、みんなで支えていくわ」


 アルバートは指揮官の役目を終え、サチが新たに立場を引き継ぐ。

 笑顔を見せ頷くと、ハンドガンを一丁。片手に握るアルバートを前に、サチと二人で部屋を退出した。


「バンッ!!」


 扉を閉めて暫くした頃に、一発の虚しい発砲音が響いた。

 電力復旧を果たしたことにより、連絡通路のシャッターは開放可能に。アルバートや幾人もの犠牲を上にして、国際線ターミナルへ行けるようなったのだ。


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