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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第156話 空の玄関口17

 保安検査場にある長机には、手荷物を置くための青いトレー。荷物を自動で運ぶレーンがあり、荷を確認するためのX線検査機。

 他にも金属探知をするゲート式探知機に、ペットボトルの内容物を確認する液体物検査機。飛行機の安全を守るため、必要な検査設備が置かれる。


「さあ! 急ごう!」


 アルバートを初めに、保安検査場を通過。空港に着いては寝床と使用し、勝手を知ったる搭乗待合室。灰色の絨毯が敷かれる廊下を進む足は、電力室へ向かい自然と速くなった。

 屍怪との対面を想定していても、実際に遭遇しては話が異なるもの。襲われるという恐怖感に、電力復旧を果たしたい焦り。歩速が自然と上がるのは、心情を鑑みても当然の流れ。


「待って!! みんな隠れてっ!!」


 弓なりに曲がる廊下を歩く中で、声を抑えつつもサチは強く訴えた。

 数列に渡り椅子が並ぶ中で、身を屈めて隠れるアルバート。後方にある喫煙所の扉を開け、急ぎ逃れる二人の自警団員。サチと一緒に売店へ入店し、陳列棚の後ろにて息を殺す。


「ヴッ……。ヴッ……」


 呻き声を漏らしながら出現したのは、抱っこ紐をするパッツン頭の女性屍怪。


「アァ! アァ!」


 屍怪化した赤子を抱えているようで、必死に手を伸ばす姿を確認できた。


「……行ったみたいね」


 売店内から過ぎ去りし姿を見て、一つ危機を乗り越えたと安堵。

 出発口前にいた屍怪と比較して、数の少ない搭乗待合室。それでも気づかれたとなれば、即座の対応を求められる。騒動を起こせば集まる可能性あり、接触は避けたい話であった。


「今の……親子かしら」

「……かもしれないわね」


 屍怪にして赤子を連れるなど珍しく、さすがのサチも言葉に詰まる。

 本来ならば赤子を大切に抱え、笑顔を向けていただろう母親。過ぎ去る背に温かき姿を想像し、とても居た堪れぬ気持ちになった。



 ***



「電力室へ向かうには、ここが出口だ」


 出発口Eと書かれたゲートを確認し、先頭を歩いていたアルバートは言う。

 出発口Eにある保安検査場も、出発口Bと似たようなもの。ゲート式探知機や液体物検査機に、X線検査機にレーン。


「屍怪はどうしから? 自動ドアは閉まっているみたいだけど」


 出発口Bと異なっていたのは、保安検査場前までの道。

 出発口Bでは開いていた自動ドアも、出発口Eでは閉まったまま。そのため入れなければ出れもせず、搭乗待合室に屍怪の数は少なかった。


「自動ドアは開きそうだけど。出発口Eの前には、かなり屍怪がいるわね」


 自動ドアの隙間に手を入れ、動作の確認をしてサチは言う。

 さらに自動ドア越しに見るは、出発口E前にいる屍怪。近くの階段が閉鎖できなかったため、想定通り多数が徘徊している。


「電力室へ向かうためには、先にある緑の扉を……通過しなければならない」

「まさかこんな場所を、通らなくてはならないのかっ!?」


 行先を見つめるアルバートに、自警団員は確認するよう問う。建物端にある緑の扉こそ、電力室へ行くに唯一の道。

 しかし出発口Eの周辺には、徘徊する多数の屍怪。気づかれず向かうなど、とても不可能に思える。


「カランッ! カランッ!」


 金属のトレーを落下させたか、はたまた硬貨でも落としたか。屍怪が徘徊する空港内に、甲高い金属音が響き渡る。

 犯人は屍怪か、自然現象か。事実はわからずも揃って音に反応し、一斉に顔を向ける屍の怪物たち。音の発生源たる中央へ向かい、出発口Eは幸運にも手薄になった。


「チャンスだっ!! 今しかないっ!!」


 不意に舞い降りた好機を、逃さぬとアルバート。電力を復旧させよと、神からの天啓。自然を味方に、事を為せとの天運。

 ゆっくりと自動ドアを開け、音を立てぬよう細心の注意。抜き足。差し足。忍び足。緑の扉を開けては廊下を一直線に、目的地の電力室まで到着した。



 ***



「ブレイカーはどこかしら?」


 頭上の照明に明かりはなく、窓もなく外光もない電力室。持参した懐中電灯を点けなければ、何も見えぬ状況だった。


「待って。すぐに探すから」


 サチは持ってきた設計図を取り出し、懐中電灯で照らし確認を行う。

 頭上には何本もの配管が走り、身長台の機械が置かれる電力室。左右に触れる測りのついたメーターに、ローマ字と数字が表記されるメーター。赤や青の大小様々なバルブがあり、知識なくして用途はわからない。


「あった。ここよ」


 ロッカールームのよう機械が三列に並び、進んだ奥にてサチが顔を向ける先。

 懐中電灯で照らす天井の隅には、家庭用と類似するブレイカー。右側には十個ほどのスイッチがあり、左側には主電源と思われるレバー。現在は【入】ではなく、【切】の方へ下りている。


「このレバーさえ上げれば、電力が復旧するはずだ」


 身長の高きアルバートが動き、照明に再び明かりが灯る。

 電力復旧を必要としたのは、国際ターミナルへ向かうため。電気が通ったとなれば、閉じたシャッターも開放できるだろう。


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