第153話 空の玄関口14
「ハルノ!! 無事かよっ!? 連絡が取れなかったから、心配していたんだぜっ!!」
トランシーバーを通じ、聞こえてくる蓮夜の声。通信が途切れてから暫くし、何度か連絡を試みたという。
「色々あったけど。一山を越えた感じ。蓮夜の方は大丈夫?」
三階のラウンジにて、僅かばかりの小休止。状況は目まぐるしく変わり、連絡する余裕は先ほどまでなかった。
「ああ。俺の方は問題ない。状況が少し変わってきたんだ。俺たちもこれから、空港へ助けに向かうよ」
蓮夜たちが道路橋の上から、見ていた新千歳空港。
空港内への侵入が開始し、外で起き始めた変化。屍怪は穴の空いた玄関へと流れ、他が手薄になりつつあると言う。
「ハルノ。国際線ターミナルに来られないか? 国際線ターミナルの方は、屍怪がかなり少なくなってきているんだ」
屍怪数が減っている方にと、蓮夜は移動を促す。
穴の空いた玄関から、侵入する屍の怪物たち。未だ侵攻を続けている状況では、離散の展望など全く見通せない。
「一ノ瀬君。詳細を教えてもらえますか?」
隣で会話を聞いていた山際所長は、促しにつき説明を求める。
現在のところ国内線ターミナルでも、一応は屍怪を防げている。籠城という観点ならば、移動の必要性は特にない。
「国際線ターミナルの駐車場には、観光バスが止められていますよね。俺たちが合流したら、避難誘導もできます。場合によっては脱出。空港での籠城にこだわらず、選択肢を広げるための提案です」
蓮夜が言うには観光バスが七台あり、避難者の全員が乗れるとのこと。
籠城する場所については、国内線ターミナルに限らず。連絡通路を渡った先の、別館となる国際線ターミナル。移動をしたあとでも、籠城策は継続できる。
「それに俺たちは、屍怪の誘導作戦も準備しています」
さらに蓮夜たちは水面下で、色々と準備を進めているようだ。
「どうします? 山際所長?」
説明を受けて自警団員は、隣にて顔色を窺う。
国内線ターミナルに屍怪が集まり、脱出にはまたとない好機。新千歳空港から離れたいなら、機会を逃すべきではないだろう。
「脱出するかを別にしても、移動については賛成です。国内線ターミナルは悔しくも、屍怪の侵入を許している状況。別館となる国際線ターミナルへ行けば、屍怪との距離は遠ざかれます」
自警団員は現在の状況を踏まえて、移動へつき賛同的な意見を言う。
国内線ターミナルで不安となるは、シャッターの耐久性に屍怪という驚異。テラウォード・ブッチャーと大きな屍怪もおり、総合的な安全性は国際線ターミナルが優る。
「わかりました。脱出については、前向きに検討しましょう。朝日奈さん。トランシーバーを」
山際所長は提案の受け入れを決め、渡されるトランシーバー。
「気をつけてね。蓮夜」
「ああ。誘導作戦の準備もあって、暫くは連絡できないと思う。準備が整い次第。向かうときには、連絡するぜ」
身を案じつつ言葉を交わし、蓮夜からの通信は途切れた。
空港に残る者が行うべきは、国内線ターミナルからの移動。二階と三階にある連絡通路を渡り、国際線ターミナルへ行くことを決めた。
***
「山際所長ぉおお!! みんなあぁ!!」
移動に際し荷物を纏めていると、連絡通路の方から聞こえてくる叫び声。
異変を感じ取っては、様子を見に動く五人。自警団員二人に自衛隊員二人と、急ぎ早に連絡通路へ向かう。
「山際所長ぉおお!! みんなあぁ!!」
「どうしたっ!? 何かあったのかっ!?」
シャッターをガンガン叩き訴える人物に、アルバートは自制を促し説明を求める。
連絡通路は以前と異なり、シャッターが閉じ切る。訴える人物は閉じた向こう側におり、姿を確認することはできない。
「良かった! 無事だったんだ!!」
荒々しい態度で訴えていた人物も、声かけにより対応を変える。
「シャッターが開かなくて。みんなと合流したいんですけど。開けてもらえませんか?」
訴える人物によるとシャッターが開かず、国内線ターミナルに戻れないとの話。
新千歳空港のシャッターは、基本的に電動。手動で開けようと試みるも、開かず立ち尽くしていたらしい。
「待ってくれ。すぐに開ける」
アルバートは壁際にあるスイッチへ向かい、シャッターの開放を試みる。
「……どういうことだ。ちょっと来てくれ」
しかしシャッターは開かず、アルバートは招集をかける。
集まった五人にて、確認するスイッチ。上下左右どこを押そうとも、うんともすんとも反応しない。
「……故障かしら?」
二階のシャッターを下ろす際にも、反応しなかったとの事案がある。
ならば今回も同様と、故障の可能性。一度あったことは、二度あっても不思議ない。




