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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第一章 終わりの始まり

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第14話 偶然の再会

 それから駅前は、収拾がつかないほどのパニック状態となった。行き場を求め、逃げ惑う人々。悲鳴や怒号が飛び交う中で、我先にと離散していく。

 自身を含む五人も、駅前を離れるため走った。百貨店や電気店を越え、本屋を前に右折。高架下を過ぎ、駅の反対方向へ。


「こっちだっ!!」


 しかしそこではまたも、異常者とも思える人々に阻まれた。

 それでも脇道に逸れては、青空駐車場を抜け疾走。非常階段を上ってはビルに避難し、やっと落ち着ける状況となった。


 とりあえず、窮地からは脱したようだな。


 逃げ込んだ先は、ビルの二階。目の前にあるは、一本真っ直ぐな廊下。壁はベージュ色に塗装され、床は滑らかな白のタイル。

 頭上の電灯には明かりが点いておらず、外の光を呼び入れる窓も見当たらない。そのためビル内は薄暗く、かなり不気味な感じになっている。


 っつーか、このビル。本当に安全なのか? 


 一つ窮地を逃れては、全体的に弛緩した空気。

 しかしビル内の安全性には、一抹の不安があった。


「警戒したほうがいい。アイツらがまだ……いるかもしれない」


 警戒心を再び、周囲の確認。全員もそれぞれに、キリッと緊張感ある表情になった。

 しかし畑中さんだけは、どうにもならない様子。腕を負傷した影響もあって、苦悶の表情を見せ続けている。


 早く安全な場所を確保して、きちんと治療をしたほうが良さそうだな。


「俺はビル内を調べてくるよ。畑中さんは動けなさそうだし。みんなは一緒に居てあげてくれ」

「ちょっと待てよ! それならオレも行くって!」


 同行の意志を示す啓太には、武器と呼べる物は無い。


「俺にはこれがあるからな。啓太は残って、何かあったときに対処を頼む」


 新たな犠牲者が増えることは、どうしても避けたかった。

 畑中さんは、動けぬ状態。それに今は、万全の治療を行えるわけでもないからだ。


「そうか。なら気をつけろよ。蓮夜」


 鞘に収まった刀を見せ言うと、啓太は納得したようで頷いた。


「気をつけてくださいね。蓮夜さん」


 続けて見送る美月も、身を案じ心配そうにしていた。


「ああ。すぐに戻るよ」


 二階の部屋数は、六つ。廊下を挟み対面する形で、小窓ある黒色の扉で閉ざされている。


「近い所から……順番に見て回るか」

「どう? 問題ない?」


 小窓から室内を覗こうとしたタイミングで、背後から響くハルノの声。


「まだ見えてねぇーよ。……ん? ハルノ! なんで付いて来てんだよ!?」


 振り返るとそこには、何食わぬ顔をしたハルノが立っていた。


「だって蓮夜一人なら、心配じゃない!」


 心配し同行したというハルノには、全く悪気はない様子。


 啓太にも言ったのに。丸腰状態で付いてくるのかよ。

 でも普通に『戻れ』と言っても、簡単には応じてくれないよな。そういう性格だし。それに言い合いになって音を響かせるのは、どう考えても得策じゃない。


「わかった。室内の確認は俺がするから、ハルノはここで見張りを頼む」

「了解」


 落としどころを提示し、ハルノも文句なく了承。となれば再び、小窓から室内の様子を覗き込む。

 部屋の広さは学校の教室を、一回り狭くした感じ。室内には白い長机と、灰色の椅子が二脚。縦三列横三列に並べられ、中央にはホワイトボードが置かれている。


 塾って感じだな。


 見た限り室内に、これと言った異常はない。畑中さんは腕を負傷し、安全に治療できる場所が必要。


「見てくるよ」


 見張りをするハルノに言い、室内への入室を決断。

 入室しても見た限り、内観に変わりはない。違いと言えば、一つ。死角に掃除用具入れがあるだけだった。


 一応は、確認しておくか。


 掃除用具入れに手を掛けると、言いようのない不安に襲われた。


 もし……この中に……さっきのような奴らがいたら、俺は途端に襲われるかもしれないのか。


 想像しては僅かに、恐怖心が芽生えた。


「コンッ! コンッ!」


 安全確認のためノックをするも、掃除用具入れに反応はない。


 もう開けるしかないな。


 意を決して、開ける決断。勢いよく掃除用具入れを開く。

 そこにあったのは、箒やモップ。ちりとりにバケツと、普通の掃除用具。それだけであった。



 ***



 一室の安全を確保し、みんなの元へ。非常口前で座っているより、室内で休んだほうが良いと思ったからだ。


「すまない。蓮夜君。手間をかけて」  


 肩を貸し移動する最中も、畑中さんは申し訳なさそうにしていた。


「気にしないでください! 困ったときは助け合いですって! 当然の事ですよ!」


 畑中さんを椅子に座らせ、小休止。

 モップを二本取り出し、先端を外して棒状化。武器として使えそうなので、ハルノと啓太がそれぞれ持つことになった。


「ここでじっとしているわけにも、行かないからな。俺たちは他の部屋も見てくるよ。この部屋の鍵は閉めていいけど。何かあったら頼むぜ」

「当然じゃん! 任せとけって! そっちこそ気をつけろよ!」


 頼もしい応えをする啓太にこの場を託し、二階の探索をすべくハルノと二人。再び廊下に出た。

 順番に部屋を巡り、安全の確認。全て同じような間取りの室内には、参考書や鞄と学習道具が残されていた。


 現代文に数学か。やっぱり塾のようだな。


 残された参考書を見て、二階を塾と把握。さらなる全容を確認すべく、突き当りとなる奥へ向かう。

 突き当たりにあったのは、事務室にエレベーター。扉の先には、階段があった。


「反応しないな」


 エレベーターのボタンを押すも、うんともすんとも反応はない。


「さっきまでの部屋と同じよ。停電しているみたいね」


 ハルノと見回った部屋は、全て電気が点かず停電。


「仕方ない。力尽くで開けてみようぜ」


 となれば事務室の自動ドアも、感知されず無反応。やむなく左右に分かれ、力尽くでこじ開ける。


「結構……重いな」


 開かれていく自動ドア。最初に目に映ったのは、長いカウンターテーブル。床は廊下の白タイルと異なり、灰色のタイルカーペットになっている。


「何者じゃ!?」


 事務室から響いてきたのは、どこか渋みのある男の声。しかしどこを見渡しても、発言者の姿は見当たらない。


 もしかして……隠れているのか?


 カウンターテーブルの奥には、丸テーブルと背の高い本棚が複数。その気になれば、隠れられる場所は多い。


 映画やドラマなら、こういうシチュエーション。『姿を見せず失礼だと思わないのか! まずは姿を見せたらどうだ!』とか、言いそうなものだけど。

 相手の気に障って、面倒事になるのは嫌だし。できる限り穏便に済ませたい。


「俺たち。外にいた奴らに追われて、逃げてきたんです。良かったら、姿を見せてくれませんか?」


 事情を説明しつつ、視線を向ける先を探す。すると本棚の後ろから、一人の老人が現れた。

 真っ白な髪と髭を携え、ニット帽を被る老人。服装は茶色を主とし、落ち着いた感じである。しかし、あまり清潔そうには見えない。


「外からと言ったな。お主ら。どこから……」


 警戒心を見せつつも、食い気味に話す老人。しかしこのタイミングで、背後の扉が開いた。


「あーあ。もう飛ぶしかないかなぁ」


 響いてきた声は、どこか聞き覚えのあるもの。


「……夕山?」


 ウェーブがかった赤の短髪に、何もかも見透かしそうな大きな瞳。深紅のシャツに、黒のパンツ。

 バランス良く整った顔立ちは、誰が見ても美男子と称されるに間違いないだろう。成海(なるみ)夕山(ゆうざん)の姿があった。


「……蓮夜」


 声に反応して、顔を向ける夕山。こちらの存在に驚いたようで、目をパッチリ開き見つめていた。


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