表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)
146/322

第143話 空の玄関口4

「山際所長がお呼びだ。三階にあるラウンジに」


 寝床とする二階の搭乗待合室を訪れたのは、黒いパンツに白いアウターを着た男性。右腕には自警団と書かれた緑の腕章があり、空港自警団のメンバーに相違ない。


「なんの用かしら?」


 突然の呼び出しにハルノは、首を傾げて心当たりを探っている。

 新千歳空港に到着して、今日で三日目。打撲により負傷していたハルノも、今や左肩を自由に回せるまで回復。あと数日もすれば、完全回復となるだろう。


「さあな。まぁでも呼ばれているみたいだし。行ってみようぜ」


 寝床と決めた搭乗待合室は、【11】と書かれたゲートの前。映像なく黒い画面の電光掲示板に、椅子が左右に四列で百席ほど配置。

 椅子には寝袋が広げられ、リュックにコップと置かれる。近場の売店にはお土産用として、北海道の形をしたキーホルダー。食料は補充の機会なく、全て欠品の状況だ。


「やぁ。お待ちしていました。どうぞ、こちらへ座ってください」


 呼び出しに応じ三階のラウンジへ行くと、低姿勢な物言いで迎え入れる山際所長。

 高級感ある灰色の絨毯が敷かれ、革製で奥行きあり肘掛け付く椅子。滑走路の景色を一望できる大きな窓に、重厚感ある木製のテーブル。クッション性の高い広々した黒いソファと、明かりなくともオシャレな電気スタンド。ラウンジの設備は他と比較し、ワンランク上と言えるだろう。


「どうですか? 空港での生活には、慣れましたか?」

「はい。とても良くしてもらって」  

「それは。それは。お茶もどうぞ」


 促されソファへ着席すると同時に、山際所長により運ばれてくるコップ。自らおもてなしをしてくれるとは、立場もあって予想外の対応である。


「それはそうと。あなたたち二人は、東京へ向かっていると聞きましたが。それ本当ですか?」


 テーブルを挟み対面にて、椅子に着席する山際所長。満を持して問うのは、先の目的地とする場所。


「はい」

「ハルノの怪我が治り次第。出て行くつもりです」


 顔を向け合いハルノは応え、即座に補足情報を追加。

 飛行機が使えないというのは、すでに聞き及んでいるところ。空路が使えないとなれば、残るは陸路と海路。状況に応じ使い分けて、東京へ進むしかない。


「ほう。ほう。屍怪いる世界で東京へ向かうなど、とても無謀に思いますが。本当のところ、東京へ行く理由はなんですか?」


 上向きにカールされた前髪に軽く触れ、山際所長は東京へ向かう動機を問う。

 知られたくない話でもなければ、何も隠す必要性はない。そのためジェネシス社の協力を仰ぎ、事態の解決を図る目的であること。何度も話したことを、言える範囲で説明をした。


「なるほど。なるほど。言っていることが本当ならば、屍怪いる終末世界を終わらせられると」


 再び上向きにカールされた前髪に触れ、山際所長は前のめりに興味津々な様子。


「それなら。それなら。飛行機の修理に着手させましょう」


 そして山際所長が提案したのは、嬉しくも難しい話だった。

 整備士はいるようで修理可能と聞くも、問題は飛行機を離着陸させる方法。パイロットが不在と聞かされては、操縦可能な人間が欠けている。


「上村隊長や自衛官の方たちには、パイロットがいないのでしょう。しかしこちらは、空港関係者で結成される自警団。パイロットの件は任せてください」


 山際所長が人材確保に動いてくれると言い、飛行機の使用につきトントン拍子に進む話。

 北海道から東京へ向かうに、想定していた長い旅。飛行機の使用が可能となれば、旅路は格段に楽となり短縮できる。


「ただし二人には、整備が終わるまでの期間。みなと同じように、仕事をしてもらいます。働かざる者、食うべからず。それが新千歳空港において、唯一であり鉄の掟です」


 子どもや老人に怪我人を除いて、各々に仕事を与えていると山際所長。新千歳空港ではどんな避難者も、基本的に受け入れるという姿勢。

 しかし使えぬ食い扶持を増やすなど、誰もが納得しない所業。変わってしまった終末世界に、浮浪者を養う余裕はないのだ。


「問題ないですよっ!! 飛行機が使えるなんて、夢にも思ってなかったよなっ!?」

「そうねっ! 乗らない話はないわっ!!」


 思いもよらぬ事態の好転に、ハルノも声を弾ませている。

 仕事については各々の能力を精査し、必要とされるところに配属と決定。内容については決まり次第に、再び伝えられることになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ