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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第131話 一長一短

「南下し本州へ向かうとして、まずは新千歳空港を目指す感じかしら?」 


 東京へ向かうに際して同行者となるのは、幼馴染で同級生の朝日奈(あさひな)ハルノ。オレンジ色に近い明るい髪を、高い位置で結んだポニーテール。母親が日本人で父親が外国人と、ハーフで綺麗な翠色の瞳が特徴的。オレンジのブラウスに、白いパンツを着用した人物。


「そうだな。ってか、ハルノ。陵王高校は安全なわけだし。東京へ行くは、俺一人でも良かったんだぜ?」


 今ならまだ引き返すに、遠くない距離。

 陵王高校を離れれば、屍怪いる危険地帯。微かな望みに不透明な見通しとなれば、好んで同行する必要性はないだろう。


「行くって言ったでしょ!! 私も全てではないけど、ある程度の事情を知っていたのよ。ジェネシス社のことや、蓮夜のお父さん。叔父さんのことも。それに私自身も、無関係って話ではないもの」


 最初から知ったる点あったハルノは、立場的な面もあって頑なな態度だった。言い出したら引かない側面あり、拒絶も想定していたところである。


「武器は問題ないよな?」


 帯刀するには自転車と不都合あり、新たに背負えるよう作られたホルダー。収められているのは、愛刀である黒夜刀(こくやとう)。柄頭には【R.S.】と文字が刻まれ、所有者のイニシャルを表記。全体的に機械的で、相応に重さある刀。

 黒色の鞘には銀で二本線が走り、ソーラーシートが埋め込まれる。抜き差し口となる場所では、台形状に厚みある機械装置。迫力ある獅子の姿が描かれ、発熱機能と蓄電機能を有す。短時間であれば漆黒の刃を、赤く高熱を宿せる特異な刀だ。


「もちろんよ。矢の本数は十分だし。近接用の武器も準備したわ」


 ハルノが選び武器とするのは、コンパウンドボウと機械的な弓。飛距離は二百メートルほどで、鹿や猪を仕留められるほどの威力。

 現在は自転車の走行につき、ケースに仕舞われ荷台に固定。他にも屍怪との近接戦を想定し、サバイバルナイフを所持している。


「札幌と違って見通し良く、とても走りやすいわね」


 ハルノは自転車の速度を上げ、周囲の景色を見て言う。

 岩見沢から市外へ向かい、徐々に減っていく建物。左方には木々が生える山があって、右方は開かれた土地に田畑。


「ああ。今の感じなら、屍怪に襲われる心配は無用だな」


 札幌の街にて自転車を使用したときは、足を止めれば屍怪に囲まれた。人口密度に比例し屍怪数も多く、建物や放置車と障害物もあった札幌。

 しかし現在の進むは田舎道と、見通し良く開放的なもの。道端の雑草はユラユラと揺らぎ、背を押すよう吹き抜ける風。走るにとても快適な環境は、気持ちをとても穏やかなものにさせた。



 ***



「初日にして、かなり進んだよな。日が暮れる前に、寝床を探すか」


 水分補給に際し路肩に自転車を止め、前方の空を見上げたタイミング。

 夏も終わりに近づき、秋を感じ始める季節。日没の時間は日に日に早まり、暗くなる時間も比例し長くなっていた。


「そうね。簡易テントがあると言っても、できる限り避けたい話よ」


 頭上にある西の太陽を見つめ、ハルノも意見に賛同的である。

 屍怪を防ぐに薄いテントでは、効果は厳しく限定的。旅に際し究極的な面では、簡易テントも仕方がない。それでも屋根と壁ある家を望むのは、リスク回避のためにも自然な考え。


「次に良さそうな建物があったら、入って確認してみようぜ」


 一つ順調に小さな町を越え、走っているのは田舎道。

 人口が少なく屍怪との遭遇確率が低い一方で、借宿に適す所が簡単に見つからぬ実情。長所あれば短所もあるという、まさに一長一短な状況であった。



 ***



「あそこなんて、どうかしら?」


 行く先に向けハルノが指差すのは、【お昼処】と書かれた看板。

 周囲に建物や民家は一軒もなく、山を切り開いた通りに立地。外観は木造二階建ての古民家風で、駐車場は車が十台ほど駐車可能と広い。


「時間的にも、厳しくなりそうだしな。自転車を止めて、店内を見てみるか」


 料理屋前にて自転車を駐車し、店内の安全確認へ動く決断。

 入口前にある五段ほどの階段を上り、店外には四人が座れるテラス席。店内にはカウンター席が五席に、テーブル席が五席。全て木製で天井は高く吹き抜け、二階建てに見えても実際は一階建て。窓は大きく日当たり良くては、とても開放的な雰囲気であった。


「誰か……いませんか?」


 恐る恐る声を出してみるも、店内からは何も反応がない。


「荒らされている……感じじゃないわね」


 続き入店するハルノも、店内の様子を見て言う。

 テーブルには営業時と変わらぬまま、残されているメニュー表。埃の積もる場所あるものの、争いあった形跡は微塵もない。


「ホールに屍怪はいなさそうだな」

「厨房の方を見てみましょうか。安全確認は何よりも重要よ」


 慎重な姿勢を崩さぬハルノと、全体を把握するため店内奥の厨房へ。

 ステンレス製品の多い厨房には、冷蔵庫やオーブンレンジ。長く大きい調理台には、まな板やフライパン。他にも計量器や鍋など、調理道具が多く置かれている。


「問題なさそうね」

「だな。丁度いいから、何か食料を探そうぜ」


 安全確保によりハルノと、厨房にて物色を開始。

 最低限の食料は持っているものの、決して量は多くない。日々の食事を賄うには、現地調達が基本となるのだ。


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