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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第130話 言伝

「気をつけてねっ! お兄ちゃん!!」

「無事に帰ってくるのを待っています」


 校門前に見送りへきたのは、従兄妹の一ノ瀬(いちのせ)彩加(あやか)葛西(かさい)真弥(まや)。傍から見ても仲の良い、高校一年生の二人組み。

 茶色味あるセミショートの髪に、白いカチューシャを付けた彩加。服装は黄色いシャツに、デニムのショートパンツを着用。灰色味あるボブヘアーの髪型に、星形の髪留めをしている葛西さん。白い割烹着の姿が板につき、見習い看護師を続けている。


「蓮夜君。努さんに会ったら、無事を伝えくれないかしら。きっと心配していると思うから」


 続き彩加の母である一ノ瀬(いちのせ)静香(しずか)さんから、出発に際して一つ言伝を頼まれる。

 静香さんの職業は看護師で、着用するのは白い割烹着。茶色いショートヘアの髪に、年並みにほうれい線がある。


「任せてください。元気に過ごしているって、会ったら伝えておきますよっ!」


 受けた言伝を伝えるのは、会えば造作もないこと。叔父の一ノ瀬(いちのせ)(つとむ)は居住地が岩見沢でも、ジェネシス社に在籍する社員。東京への出張が年に何度もあり、終末の日も例に漏れず不在であった。

 そして一ノ瀬努については、聞きたいことが山積。なぜハルノに、黒夜刀を預けたのか。終末の日に近いタイミングとは、果たして偶然なのか。ジェネシス社の社長である獅子王統夜に続き、一度は会っておきたい人物であった。



 ***



「自転車を二台! バッチリ整備をして、準備しといたでぇ!!」


 茶髪のサイドを刈り上げたツーブロックで、他をツンツンと逆立てる髪型の梶丸(かじまる)(ひさし)。整備士と灰色の作業服を着用し、小柄ながらも筋肉質は人物。

 そんな梶丸さんが用意してくれたのは、長距離を最適に走れるツーリング自転車。荷台ありタイヤの太さなど相違はあるものの、見た目はスマートなロードバイクに酷似する。


「青とオレンジのフォルム。カッコ良いいじゃないですかっ!!」


 好みとされる色に合わせて、用意された二台の自転車。

 東京へ向かうと公言した日から、梶丸さん含め仲間たちは協力体制。浄水機能が付いたサバイバルボトルに、今も背負う迷彩色のリュックなど。役立つだろう物をいろいろと、多くの人たちから譲り受ける展開となった。


「蓮夜。これを……持って行ってくれないか」


 出発となりヤマトが手渡すのは、銀色の楕円形ペンダント。


「なんだよ? これ?」

「開けて見てくれ」


 ヤマトに促されるままペンダントを開くと、中に入っていたのは一枚の写真。映っているのは白髪に細身で、温かい顔をした老婆。膝の上には短髪の幼い男子が座っており、笑顔でVサインをしている。


「昔のオレと婆ちゃんだ。函館へ行く機会があったら、渡してくれないか。写真を見ればきっと、無事だと安心すると思うんだ」


 函館にてヤマトの祖母は、生活していたとの話。

 ヤマトにとっての、たった一人の家族。自衛官に就職してからは勤務地が遠く、転勤もあって会う機会が激減。それでも時折り電話をしては、体調など常に気にかけていたと言う。


「函館を通るかは、わからないぜ? それでもいいのかよ?」


 本州を目指し南下する予定も、通る道など詳細を固めてはいない。

 そもそも函館を、通らぬ可能性。仮に通る結果となっても、出会えるかなどわからない。


「ああ。いいんだ。オレは自衛官として、陵王高校を離れるわけには行かない。函館へ行く機会がなければ、万に一つと思っての頼みだ」


 多くの人が残る陵王高校を、ヤマトは離れず守る姿勢。

 陵王高校には関係性でき、気心の知れた仲間たち。己が家族の安否より任務を遵守し、戦闘面に精神面。全てにおいて、頼りになる自衛官の存在は大きい。


「わかった。もし会う機会があったら、そのときは届けるぜっ!」


 先行きの全てに不透明な要素が多く、傍から見ても微かな希望。全てを承服し頼むヤマトに、拒絶する理由など一つもなかった。



 ***



「二人もいろいろ大変だろうけど。屍怪と身体に気をつけてね」

「必ず戻って来いよ。親友」


 ナナさんから激励の言葉を受け、出発となり啓太と握手を交わす。

 旅立ちを知り今や校門前には、見送りにきた大勢の仲間たち。頭に白い手拭いを巻き、青い法被を着た大工の大江(おおえ)源蔵(げんぞう)さん。紫色カーディガンを着た妻の大江キヨさんに、白い大型犬グレートピレニーズのモコもいる。


「ああ。もし助けが来ていたら、陵王高校の事は伝えておくぜ。それじゃあ、みんなのことをお願いします」


 残る者との別れを惜しみつつ、荷台にリュックを固定。閉ざされる校門を後ろに、自転車を漕いで走り始めた。


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