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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第128話 ジェネシスバイオファーマ

 ジェネシスバイオファーマ。祖父である獅子王(ししおう)(みかど)が一代にて、築き上げた日本の製薬会社。事業内容は遺伝子研究に、新薬開発やワクチンの製造と販売。

 世界規模で広く展開し、資金と権力ある四つのIT企業。検索エンジン大手のGloriaに、通信機器大手のOrange。ネット通信販売大手のForestと、SNS大手のAxis。通称GOFAに一社で対抗可能な、国際的にも唯一無二な大企業である。


「ほえー。蓮夜がジェネシスのご子息なんて、全く知らなかったじゃん」


 突然のカミングアウトに、驚きを露わにするのは真島(ましま)啓太(けいた)。陵王高校三年の同級生で、気心の知れた友人。

 明るい茶色の髪を、ふんわりと遊ばせた髪型。緑色シャツの中央には、黄色でメリハリの文字。ポケットがたくさんある、黒の七分丈パンツを着用している。


「てか蓮夜。蓮夜の名字は一ノ瀬じゃね?」


 話を途中に啓太から、一つ質問を受ける。

 ジェネシス社は一族経営のため、一族の者は全員が獅子王。そのため一ノ瀬を名乗っていることに、違和感を覚えたようだ。


「一ノ瀬は母方の名字なんだ。彩加とも同じだろ」


 北海道へ引っ越し、転校する以前まで。東京に住んでいたときは、獅子王の名字を名乗っていた。

 しかしある事情から、獅子王を名乗らぬ決定。名字の変更は記憶障害あるときに、一切の関与なく秘密裏に行われた。


「話を続けるぜ」


 朝には童顔と言われる顔を洗い、頑固なアンテナ髪を残しセット。髪色は地毛のため、今も僅かに茶色。服装を紺色のカーディガンと、ベージュのパンツに着替え心構え。

 鉄柵とフェンスに守られ、避難所となる陵王高校。知ったる人たちに招集をかけ、二階のとある教室。机を囲み記憶の一端を、開示する決断をしたのだ。


「今でこそジェネシス社の認知度は、誰もが知るくらい高いけど。最初は国内でも規模は小さく、認知度も低かったんだ」


 起業というのは始まりから、軌道に乗せるまでが至難。一年までに半数ほどが倒産し、十年まで残るのは約六パーセント。

 三十年を迎えられるのは、二パーセント未満。経営的にも経済的にも厳しい中で、ジェネシス社に訪れた大きな転機。それは半世紀前に世界中で拡大した、未知のウイルスによる感染症だった。


「新薬とワクチン。二つを作り出したのは、ジェネシス社の獅子王帝なんだ」


 見えない敵との戦いに、苦戦を強いられる人類。獅子王帝とジェネシス社が作り出した新薬とワクチンは、未知のウイルスと感染症に絶大な効果を与える。

 効果があるとなれば、欲するのは人の性。世界中から膨大な量の注文が入り、ジェネシス社は結果として莫大な利益を得た。


「獅子王帝の活動は、製薬会社に留まらない。事業を広げるため、様々な分野に手を伸ばし始めたんだ」


 莫大な資金を背景に、異なる業種へも参入し展開。金融・コンサル・IT・製造・流通・不動産・エネルギー・放送・サービス・食品・その他。財界や政界にも強い繋がりを持ち、圧倒的な権力を手中に収める。

 そんな獅子王帝の経営手腕は、全てを打ち砕き飲み込む剛腕。買収や吸収を積極的に仕掛ける方針で、経営面でも非凡な才能を発揮させた。


「二代目としジェネシス社を引き継いだのは、俺の父さん。獅子王(ししおう)統夜(とうや)なんだ」


 創始者の死没により、時は新たな世代へ。トップの交代をキッカケに、変化していくジェネシス社の方針。獅子王統夜の経営手腕は、時代を見通す先見の明であった。

 既存の概念に捕われず、新事業に新商品や新サービスを展開。信用を第一に多くの人脈を築き、他企業とも提携し相乗効果。経営の才能はすぐ周囲に認められ、慈善事業にも取り組み社会的立場を向上。従業員を大切に扱うことから、部下からの信頼も厚いとされる。


「ジェネシス社には、多く人材が集まっている。今の事態を打開するために、協力が必要だと思うんだ」


 終末の日から、各所に現れた屍怪(シカイ)。人の姿を残したまま歩く、おぞましき屍の怪物たち。

 噛まれた者は低体温症を経て、死亡推定され屍怪に転化。屍怪と化した者は生者を襲い、繰り返される混沌世界。


「だから俺は、東京へ行こうと思っている」


 屍怪の存在ある限り、以前までの生活を取り戻すこと叶わない。

 ジェネシス社は製薬業を主戦場とし、様々な業種にも精通している。屍怪が徘徊する現状を打開しようと考えれば、知識と技術ある者の協力が不可欠だった。


「蓮夜。決意は変わらないんだな?」


 話を聞いて問うのは、自衛官の大場(おおば)ヤマト隊員。迷彩服を纏う黒髪短髪の青年で、配属された中では二十一歳と最年少。


「ああ。決めたんだ。時間に解決を求める期間は、だいぶ前に過ぎたと思う。物事を変えようと思うなら、もう自分で動くしかない」


 ジェネシス社が立地しているのは、日本の中心部で首都たる東京。北海道から向かう道のりは、今や果てしなくと思えるほど遠い。

 しかし終末の日と呼ばれる日から、三ヶ月が過ぎ時期に四ヶ月。受け身で好転する出来事など、とても少なく希有と言ってよい。


「わかった。必要な物があったら言ってくれ。オレも準備は手伝おう」


 決意が固いとみるやヤマトは、進んで協力を約束してくれた。


「そうね。蓮ちゃんだって、冗談で言っているわけではなさそうだし。細々と言わなくても、リスクを承知しているでしょ。決意も固そうだし。止めることはできなさそうね」


 続き協力の意思を示してくれたのは、女性自衛官の中野(なかの)ナナ隊員。紫色ある波打つセミショートヘアに、迷彩服パンツと黒色タンクトップを着用。パッチリ二重に豊満なバストで、小麦色の肌が特徴的な二十三歳。

 陵王高校における守りの要となるのは、滞在する三人の自衛官たち。離れるわけには行かずとも、協力は惜しまないという姿勢だった。


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