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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第127話 雨上がりの空に

 陵王高校の校舎から近く、ほどなくした場所にある裏山。亡くなった美月を土に埋めて、木を墓標とし墓を建てた。


「これなら美月も、きっと成仏できるわよ」


 弔いにきたハルノは墓前にて、手を合わせて言う。日本では一般的に、火葬を経て埋葬される。

 しかし今の終末世界において、火葬は設備なく難しい手段。埋葬に関して他に方法なく、現状で最高な形の弔いである。


「そうだと、いいな」


 見上げる空は再会した日と同様に、ポツポツと雨が降る生憎の雨模様。

 ともに言葉なく墓前にて、思い出を振り返る時間。唐突に雨が止んで、雲の隙間から光が差した。


「綺麗な空ね」


 空を見上げる、ハルノの一言。

 雨上がりの空から、墓標を照らす後光。それはまるで、天国へ続く階段のようであった。



 ***



 ボウリング場から使えそうな物資は、リヤカーを用いて陵王高校に運ばれた。

 不備のあった製品を含め機械製品は、全て整備士である梶丸さんによりメンテナンス。使用可能となった浄水機にはホースを差し、裏山にある小川から水を引くことにした。


「こんな形で、水が確保できるとはな」


 浄水場から無事に帰還したヤマトは、水の確保に安堵し肩の荷を下ろしていた。


「浄水場に隊長たちはいなかった。代わりにいたのは、屍怪と化した人たちだ」


 帰還したヤマトから語られるは、散々たる浄水場の現状。

 屍怪と化した職員と自衛官で、浄水場は自由に歩けぬ状況。見つかっては手に負えず、復旧どころではなかったと言う。


「弾痕や打撃痕あって、機械は全く動かなかったんだ」


 ヤマトは浄水場につき、見たまま事実を語る。水道が停止した原因は、故障の可能性が高いとの話。加えて稼働や維持にも、相応の人材が必要。

 浄水場において、生者と屍怪の戦い。機械を修理できる人材はなく、稼働維持に必要な人材も不足。残っても復旧の見込みはないと判断し、諦め撤退しかなかったとの話だ。


「全く予期せぬ展開だったけど。水問題を解決できたのは、運もあって良かったぜ」


 課題だった水問題は、浄水機で補完でき一応の区切り。

 水道が活きていたときと異なり、飲料水の入手には浄水機を頼る他ない。蛇口を捻って確保できた日と異なり、生活水準が格段に落ちる生活。それでも一度は無を味わった経験により、有と存在ある事に感謝は大きかった。


「帰ってくる途中で、仲間になれそうな人たちに出会ったんだ」


 浄水場ある隣の市まで出向き、ヤマトたちが陵王高校まで連れてきた人物。緑の作業服に麦わら帽子を被った、養鶏農家の高齢夫婦。

 浄水場へ向かう際に夫は、自衛隊車両を目撃。戻ってくるかもしれないと、常に気にかけ生活していたらしい。


「帰りの道中。道路でタオルを振っていたんだよ」


 生活が困窮していたという二人を、ヤマトは助け仲間とする決断。夫婦が生業として飼っていた鶏は、卵に鶏肉と食料の供給に役立つ。

 そのため夫婦の所有するトレーラーに、鶏を積んで自衛隊車両で牽引。陵王高校まで引き連れ、無事に戻ってきたらしい。


「源蔵さんたちも、張り切っていたしな」


 陵王高校で養鶏することに決まり、校舎の離れを適すよう改築する計画。大工の源蔵さんを主に練られ、仲間たちと近日中に行う予定である。


「閉門!!」


 校門前にて見張りをする二人は、周囲の安全を確認し門を閉める。

 今までは制限も緩く、開放的であった陵王高校。人の底知れぬ暴力性に触れ、大きく方針を転換。見張りを常に一段と警備を強化し、環境は閉塞的な方へ向かっている。


「早く育つといいねっ!」


 未来を築くだろう畑には、ジョウロで水を撒く少女。

 終末の日を過ぎた今でも人々は、互いを助け合い協力し尊重する姿勢。陵王高校の新たな生活は適応する意識もあり、可変的に反映され体制とし構築されていくだろう。


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