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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第125話 顛末

「うっ、うわぁあああ!!」


 地に落ちた右腕を見て、驚愕する紫髪ネックレス。

 夕山の容赦なき対応に、畏怖したのだろう。顔を引きつらせ我先にと、一人で非常口へ向かい逃げてしまった。


「あわわわっ! このままじゃあ、ボクらもヤバいですよっ! 早く避難をしましょう!」


 戦闘中は隠れていた三又も、姿を現わし焦りを露わに。

 ボウリング場には今も、屍怪の流入が多く続く。このままでは数分と経たずに、場を埋め尽くしてしまうだろう。


「倒れている人たちに手をっ!! すぐにこの場を離れようっ!!」


 指示を飛ばし、即座に行動。縛られる男性の紐を解き、三又と女性たちに上着を貸与。

 二人の女性は自力で歩き出し、男性に肩を貸し脱出の準備を整える。


「夕山! 行こうぜっ!!」


 一向に動く素振りないため、強い口調で行動を促す。

 出血量の多い右腕を押さえ、膝をつき苦しむ金髪鼻ピアス。夕山は痛々しくなった姿を、冷たい目つきで見下ろしている。


「手を貸してやれよっ! もう十分に、罰は受けたはずだっ! 今となっては、何も悪さはできねぇよっ!!」


 右腕を失ったとなれば、もはや何も事を起こせまい。迅速な処置に治療あっても、助かるか不透明なところ。

 しかし悪人だからと言って、見捨てて良い話ではないだろう。


「ここまで来ても、まだ甘いことを言っているんだね」


 受け答えをする夕山は、感情の起伏を見せず淡々としていた。


「お断りだよ。こんな奴を助けるのは」


 夕山は手を貸すことにつき、迷わず拒絶し突き放す。

 金髪鼻ピアスの発砲により、頬に怪我を負った夕山。冷徹なるスイッチが入っては、助ける気は毛頭ないようだ。


「そんなことを、言ってる場合かよっ!? 屍怪はもう、すぐそこまで迫っているんだぞっ!!」


 今は助ける可否につき、口論している時間はない。

 悪人とはいえ、軽くない人命。処分については後々にでも、話し合って決めれば良い案件。


「いやっ! 成海さんの言う通りですよっ!」


 話に割って入る三又は、助けぬほうへ共感した。


「みんなを酷い目に遭わせて。そんな奴ら、死んで当たり前なんだっ!!」


 三又は拘束に拷問や陵辱と、全ての行為に憤っていた。

 二人がやった行いは、絶対に許されぬもの。故に当事者でもあった三又は、金髪鼻ピアスの死を切望していた。


「甘ったれガキども。てめぇらの手が必要なほど、落ちぶれてはいねぇんだよ」


 冷や汗に青ざめた表情のまま、金髪鼻ピアスは強気な態度で立ち上がる。

 右腕を切断で失い、出血多量の満身創痍。それでも左手で鉈を拾って、再び戦う意志を見せている。


「自分のケツくらい、自分で拭けるんだっ!! てめぇらの助けなんて、いらねぇんだよっ!!」


 金髪鼻ピアスは鉈を振り上げ、迫る屍怪へ向かっていく。振り下ろしに振り回し、屍怪の首を一体二体。

 しかし次第に包囲されて、迫られる金髪鼻ピアス。多くの屍怪を相手に一人きりでは、戦闘を挑むこと無謀な話だった。


「うごああああああ――――っ!!」


 金髪鼻ピアスは多くの手に掴まれ、抵抗も虚しく噛まれ叫んだ。

 悲鳴が刺激となって、集い始める屍怪たち。高波に迫られるよう圧倒的な勢いに、金髪鼻ピアスの姿は完全に飲み込まれてしまった。


「急ぎましょう! ボクらは逃げないとっ!」


 死に様を見届けて三又は、標的が変わる前にと急かす。

 紫髪ネックレスが逃げた非常口から、全員が急ぎ揃って外へ。屍怪の流入が続くボウリング場から、非常階段を下りて脱出を果たした。



 ***



 今回の顛末。銃を向けられ連行されるも、隙をついて逃げたとの三又。嘘までとは言わずとも、偽りに近しい部分があった。


「誰かが逃げれば連帯責任。脅迫を受けていて、逃げることができなかったんです」


 陵王高校に帰還してから教室にて、被害者となった女性は震えて語る。


「助けに行くのは同じだから。言わなくても良いと思って」


 説明を受け応じる三又は、何食わぬ顔で弁明していた。

 独断にて逃走したとなれば、責めを受ける可能性を否定できない。知ったる情報を話さなかったのは、追及を避けるためで故意。助けに馳せ参じようとするのも、立場の回復を願った取り繕い。全て己の保身が本質と判断され、三又は大きく信用を失った。


「とりあえず危機は、去ったってことでいいのよね?」


 結末につき明確な答えが欲しいと、未だ緊張感あるハルノの問い。

 今までにないくらいの不安と、緊張感ある一夜を過ごした面々。陵王高校の守りに徹していた大人たちも、武器を置き休めるタイミングを計っていたことだろう。


「ああ。外に出てからは、紫髪ネックレスの姿も見えなかったし。今となってはもう、襲ってくることはないはずだ」


 拠点となる場所を失い、武器もなく一人で逃げる結末。

 紫髪ネックレスは降参時に、二度と関わらないと言っていた。それに陵王高校を襲撃するなど、今や力なく到底できぬ話であろう。


「ボウリング場に、浄水機や物資があるのよね? 屍怪がいるなら、対処をしないとダメそうかしら」


 顛末の報告をしてからは、ナナさん主導で話は展開。自衛官たちが居とする二階の教室にて、大人たちを混えて話し合いは続けられた。


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