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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第124話 悪魔の顔

「大丈夫かっ!? 夕山!!」

「問題ないよ。でも、やってくれるね」


 頬に一本の赤い線が引かれるも、拭う夕山は落ち着いた様子であった。

 弾丸が掠めただろう頬には、出血して一本の血の線。怪我の程度は軽傷であると言うも、夕山の雰囲気から憤りが見てわかる。


「馬鹿野郎っ! 銃は撃つなって、何度も言ったろっ!」

「うるせぇ!! 舐められたまま、引き下がれるかっ! ……大丈夫さ。ガキどもを早々に始末して、すぐにこの場を離れりゃいい」


 声を大にして注意をする紫髪ネックレスに、言葉を遮り反発する金髪鼻ピアス。銃口を向けては口角を上げ、得意気な顔を浮かべている。


「情けをかけ甘い対応をすれば、隙につけ込まれる。それが人間というものだよ」


 夕山は冷たい顔のまま、全く動揺を見せない。

 しかし口を閉じてから、迫力や威圧感は倍増。無言でも気圧される雰囲気に、不満や憤りが肌で感じられた。


「ここまでやってくれるとはな。しかしまぁ、てめぇらもお終いだっ!! 形・勢・逆・転!! 命乞いはしないのかっ!? 靴でも舐めれば、気が変わるかもしれないぜっ!?」


 優位な立場になったと自覚したようで、金髪鼻ピアスは悠長な話し方に饒舌である。

 絶対的な攻撃力ある、弾丸の込められた拳銃。向けられた銃口を前に、軽率な行動はできない。


「なんでお前のような奴が、銃を持っているんだよっ!? 銃の所持が可能なのは、治安を守る警察官や自衛隊。日本は銃社会じゃあないから、簡単に入手できないはずだろっ!?」


 銃の規制が他国と比較し、厳正かつ厳重である日本。権利や権限ない民間人では、簡単に入手できる代物ではない。


「はぁん? そんなの奪ったに、決まっているだろ。警察官から奪ったんだが、それはもう滑稽だったぜ。家族を探すのに必要だから、勘弁してくれって泣いて懇願。あまりに見苦しいから、縛って道路に放置したぜっ!! ギャハハハッ!」


 金髪鼻ピアスは己の非道を、武勇伝のように語っていた。


「何がおかしいんだっ!? お前には家族や友人に恋人。大切な人はいないのかよっ!? 無意味に人を傷つけて、良心はねぇのかっ!?」


 家族を探すという行為のどこに、見下し笑う要素があろうか。他者を心配しては気遣い、慈しみ愛す感情。

 生ける人ならば誰しも、持っていて不思議ない感情。当然とも思える動機を嘲笑う、金髪鼻ピアスの方が間違いなく異常である。


「良心か。そんなものはねぇなぁ。行動の動機になるのは、自分の欲を満たせるか否か。それだけだ」


 金髪鼻ピアスは自己中心的に、淡々とした口調で語っていた。


 やっぱり何を話しても、わかり合える相手じゃねぇ。

 自分の欲を満たすために、他者を蔑ろにする獣。人とし知能も備えているから、一段と厄介で悪魔的な存在だ。


「話しは終わりだ。舐めたことをしやがって。もういい加減にして、死ねやっ!!」


 金髪鼻ピアスは銃口を向け、引き金に手をかける。


「ウオオオオオオ…………」


 しかし引き金が引かれる前に、気味の悪い叫びが耳に響いた。

 ほとんど同時のタイミングにて、ボウリング場へ雪崩れ込んでくる屍怪。頬が裂けて酷く怪我ある人から、腹が破れ血色の悪い者まで。視認できる範囲でも、数え切れぬほどであった。


「だから言ったろっ!! 銃を撃つと、屍どもが集まって来るって!」

「クソがっ! ガキどもを始末して、早く退散すんぞっ!! ……ん?」


 壁際に退避をする紫髪ネックレスに、金髪鼻ピアスは想定外と驚きを露わ。

 金髪鼻ピアスが屍怪から、視線を戻したところ。一人だけ冷静かつ迅速に、敵を定め動く者がいた。


「よそ見をするなんて。舐めていたのは、そっちだったようだね」


 隙をつき間合いを詰めた夕山は、ククリ刀を手に攻撃へ転じていた。

 誰もが屍怪の出現により、注意を奪われたタイミング。金髪鼻ピアスから目を逸らさず、迅速に距離を詰めていたのだ。


「このガキぃいい!!」


 慌て銃口を向けようと、動く金髪鼻ピアス。

 しかし動く速さに、判断する決断力。先手を打った夕山と比較し、何もかもが劣っていた。


「うがああああああ――――っ!!」


 ボウリング場から周辺地域に響くよう、金髪鼻ピアスの絶叫がこだました。

 懐に入り込んでは、ククリ刀を振るった夕山。下段から振り上げるような斬撃は、銃を持つ金髪鼻ピアスの右腕を斬って落とした。


「情けや甘さなんて、無用の長物。殺られる前に、殺らなきゃダメなんだよ」


 返り血を浴びた夕山は、淡々とした口調で言う。

 切断され落ちた右腕を前に、蹲り苦しむ金髪鼻ピアス。冷たく見下す夕山の表情は、まるで悪魔の顔にも見えた。


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