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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第121話 夕山VS紫髪ネックレス

 ―*―*―夕山視点―*―*―



「赤髪の君。君からはどうも、同種の臭いを感じるなぁ。話の理解も早そうだし。もし良ければ、仲間に加えてあげてもいいけど。どうかなぁ?」


 紫髪ネックレスは鉈を構えたまま、唐突に勧誘を行い始めた。

 薄ら笑いを浮かべて、下手に出る態度。挑発的な姿勢は崩さぬものの、真剣な話だと理解できる。


「誘いは嬉しいけど。お断りだよ。僕は自分より弱い人に興味はないし。何より足手まといと組んでも、損をするだけだからね」


 何を思って勧誘に至ったのか、全く理解できぬところ。関わったこと一度もなければ、人間性も一切わからぬ人物。

 しかし今回のような騒動を起こす時点で、浅はかなトラブルメーカーは確定。知性と品性を欠く人物と判断できては、組むメリットなど一つもなかった。


「せっかくチャンスを与えたのになぁ。断ったことを、後悔するよぉ!」


 拒否のタイミングと同時に、鉈を振り上げる紫髪ネックレス。

 刀身がくの字に湾曲したククリ刀と、銀色に輝く刃渡りの長い鉈。両者とも一斬でも受ければ、怪我をすること必死。下手をすれば致命傷となり、命の危険性もあるだろう。


「ほぉらぁ!!」


 紫髪ネックレスは鉈を振り下ろすにつき、迷いや抵抗感の類いは全く見られなかった。

 常人なら人間を相手になど、常軌を逸し躊躇いが生まれるもの。容赦なく行っていることから、理性は完全に狂っているのだろう。


「無様に逃げ回っていても、すぐに捕まっちゃうよぉ!!」


 紫髪ネックレスは嬉々とした表情で、縦横無尽に鉈を振り回し続ける。

 しかし動作という点では、一つ一つが過剰。縦なら高く持ち上げ、横なら大きく振りかぶる。洗練された様とは異なり、素人と変わらぬ扱い。


「口が達者なのは、十分わかったよ。でも何度も斬りつけている割に、一度も僕を捉えていないけど。くるくると回って、扇風機なのかな?」


 酷く下手な扱いに、受け流し回避も余裕。人一倍に威勢が良くとも、実体なければ空虚なもの。


「馬鹿にしやがってっ!! 舐めんなよっ!! 畜生ぉ!!」


 安い挑発に乗り紫髪ネックレスは、鉈を高く振り上げ迫ってくる。

 ただでさえ過剰だった動作は、挑発により人一倍に大きくなる始末。戦闘において頭に血を上らせるなど、判断能力を欠く悪手に他ならない。


「これで死亡だよ」


 隙をついて懐へ潜り込み、ククリ刀を喉元に突きつける。


「うっ……!!」


 紫髪ネックレスは声を詰まらせ、急ぎ早に後退して距離を取った。

 怒りによる修羅の表情も、慌て乱れた表情に。突きつけられた現実により、劣勢であると自覚したことだろう。


「クソぉ!! 舐めやがってっ!! 奇跡的に上手く潜り込めたからって、調子に乗ってんじゃねぇぞぉ!!」


 声を大きく張り上げる紫髪ネックレスには、雲泥の差たる実力を理解できていないようだ。

 主に受け流し回避で、防御に徹していた身。攻撃という面では、まだ一度も引き出しを見せてはいない。


「ならそろそろ、僕も攻撃させてもらおうかな」

「なっ! なんだとっ!!」


 積極的な姿勢を見せたことにより、焦り動揺を露わにする紫髪ネックレス。


「殺れるものなら、殺ってみろよぉ!!」


 威勢よく鉈を高く振り上げ、紫髪ネックレスは進んで行動を起こす。自己を保つための自尊心か、負けたくないと単なる意地か。

 恐怖に抗うよう必死な姿は、無謀と知りつつ抵抗するネズミ。捕食者たるネコを相手に、勝てる道理は一つもなかった。


 攻撃のレパートリーが、実に単調なんだよね。


 鉈を縦横無尽に振り回している様子も、実際のところ基本は三パターン。

 振り下ろしてから、左の水平斬り。振り下ろしから、右の斬りつけ。左右を交互に連続して、斬りつける三パターン。


「終わりだね」


 振り上げたタイミングにて、鉈の刃元をククリ刀で打った。

 鉈の刃元には出っ張りがあり、打てば力が伝わりやすい道理。後方へ弾き飛ばしては武器を失い、紫髪ネックレスは無防備の状態になった。


「左の水平斬りからは、鉈を振り上げるのみ。単調な攻撃だから、攻略も余裕だったよ」


 戦いに決着が見えたところで、敵に塩をと一つ助言。

 展開の先が読めれば、実に簡単な対応。戦いに面白みを持たせるなら、常に頭を使って創意工夫を行うべきだろう。


「クソぉ!! 下に見やがってっ!! 馬鹿にするなよおぉ!!」


 鉈を失っても戦意は失わず、紫髪ネックレスは拳を振り上げてくる。


「動かないほうがいいよ」


 立場を理解せぬ愚か者に、忠告に勧告や警告。同時に所持するククリ刀にて、連続しての斬りつけを行う。

 一の太刀にて、右の首元に。二の太刀では左脇腹へ、三の太刀には鼻の頭。全て高速で振るいつつ、寸止めになるよう制御をした。


「なんでお前は、殺らないんだ? それほどの実力があるなら、余裕だったはずだろ?」


 ガタガタと体を震わせ紫髪ネックレスは、血の気が引いて酷く青ざめた表情に。

 ギリギリとなる寸止めに、とても恐怖したのだろう。床に後ろ手をついては涙を浮かべ、鼻水を垂らし小便を漏らしている。


「それはね。今のその顔を、見たかったからかな」


 質問を笑顔で受けては、半分冗談を混ぜて解答。答えを聞いた紫髪ネックレスは、大きく口を開け絶句していた。


 こっちはこれでお終いだね。さて、蓮夜の方はどうなったかな?


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