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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第119話 ボウリング場

「さしあたっての目的は、状況の確認だからな。誰にも気づかれないよう、隠密の偵察に徹しようぜ」


 居座る相手の人数次第で、行動の是非は変わる。仮に少数であったなら、場合によりアプローチも検討。

 しかし多人数であったなら、難しい話。数的不利を押しつけられ、足元を見られ兼ねない。まともに話を聞かぬ相手ならば、途端に窮地へ追い詰められてしまうだろう。


「誰もいないね。一階の入口ともなれば、見張りがいると思っていたけど。もしかしたら移動して、もういないのかもしれないね」


 ビル内へ入った所で、周囲を見渡し言う夕山。

 一階のゲームセンターには、クレーンゲームやメダルゲーム。太鼓の置かれた音楽ゲームから、対人の格闘ゲームと様々な物が置かれている。


 景品のフィギュアやぬいぐるみは、手付かずで置かれているけど。お菓子など食べ物を扱う所では、一つも残されていないな。


 クレーンゲームや確率機のゲームでは、ガラスが破壊され景品は強奪された模様。

 選別して破壊するなど、人間の所業でしかない。屍怪の存在を感じつつも、生存者の影を意識させた。


「そんなっ!? それでもみんなは、ボウリング場へ連行されたはずですからっ! 二階へ上がって、様子の確認へ行きましょうよっ!」


 見張りなく消極的な姿勢を見せたところに、三又は引き止め偵察の継続を懇願する。

 仲間が連行されたというのは、二階にあるボウリング場。ゲームセンターに見張りなくとも、偵察の必要性は当然にあった。


「夕山の言う通り、もういない可能性はあるけど。目的地はボウリング場だったわけだし。二階へ行って、偵察だけはしようぜ」


 言われるまでもなく、目的の偵察は継続。階段には椅子や机が作為的に積まれる様子も、直線的にならば一人ずつ通れるレベルだった。

 停電下と電気は使えぬはずなに、明かりあるボウリング場。照明と置かれるステージライトが光を飛ばし、まるでナイトクラブのような雰囲気であった。


「オイっ!! 誰だっ!? ここはオレらの縄張りだぞっ!!」


 ガラス扉を開け受付前にて立ち尽くしていると、レーン前にあるベンチから威圧的な怒声が響く。

 様々な色と重さがある、ボール置き場の後ろ。しかし今回は声を発した人物より、レーン上にて照明の当てられた椅子。半裸で縛られる者を視認し、注意は完全にそちらへ奪われた。


 なんだよ。コイツら。拷問でも……していたのかよ。


 目に映った異様な光景に、言葉なく息を飲んだ。

 目隠しにより視覚を奪われ、半裸で椅子に縛られる男。全身には無数の切り傷があり、反応なく生きているかも定かではない。


「そう大きな声を出すなよ。どうせ屍怪だろ」


 諌めて動き出すのは、同席するもう一人の男。


「やあ。誰かと思ったら、逃げた三又か」


 立ち上がり姿を見せたのは、目立つ紫髪のオールバック。首にはギラギラと輝くシルバーのネックレスを付け、白いシャツに黒いジャケットとパンツを着た優男。


「仲間を連れてきたのか。どういうつもりで、戻ってきたんだっ!? オイッ!!」


 もう一人は派手な金髪に、鼻には大きなピアス。穴の開いたダメージジーンズに、ボタンを全開にしたグレーのジャケット。着用する白いシャツはドクロを抱え、手元には十字のタトゥーが刻まれている。


 コイツらは、終わりが始まった終末の日。札幌駅地下のシェルターで怒声を発し、混乱も収まらぬ中でナンパをしていた連中。

 外に出てからは、行方知れずだったけど。岩見沢に来ていたのかよ。



 ***



「隣にいるアンテナ髪の君。どこかで会ったことないかなぁ?」

「そうか。オレは見たことねぇな。知り合いか?」


 近づいてくる紫髪ネックレスに、並行し迫る金髪鼻ピアス。シェルターで会ったことあるも、二人の記憶は曖昧なようだ。


「あぁ! シェルターへ逃げたときに、妙な正義感を振りかざしていた子だぁ!!」

「いたな。そんな奴。鼻につく生意気なガキか。チッ! まだ生きてやがったんだな」


 思い出したと紫髪ネックレスに、金髪鼻ピアスも感化された様子。


「あの子は元気? シェルターにいた、可愛い子?」


 紫髪ネックレスは悠長な物言いで、遠慮なく近況を問うてくる。シェルターにいたあの子とは、岩見沢まで行動を一緒した美月を指す。

 シェルターにてナンパをしていた二人の素行は悪く、美月や周囲の人々に嫌悪感を持たれていた。


 このまま言いなりだと、主導権を握られちまう。


「仲間は? ボウリング場には、二人で住んでいるのかよ?」

「オレたちは最初から二人だ。てか、あれだな。姿が見えないってことは、もしかして……死んじまったかっ!?」


 金髪鼻ピアスは質問に答えるも、触れてほしくないところを突く。晴れやかな表情に目を大きく見開かせ、喜んでいるのは誰が見ても明白であった。


「ガキが粋がって、結局は見殺しかっ! オレらと一緒に居たなら、死なずに済んだかもなっ!ギャハハハッ!!」


 金髪鼻ピアスは死亡を悟り、嬉々とし腹を抱え笑っていた。美月の件に関しては今もまだ、不甲斐なさに腹立たしさが残るところ。

 しかし今は全ての感情を抑え、目前の事態に対処しなければならない。うっかり口を滑らせたのか、得られた情報は有意義。ボウリング場には二人しかおらず、他に仲間はいないようだ。


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