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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第115話 悪報

「どうじゃ? ガソリンはちゃんと、補給できたかの?」


 陵王高校へ戻り玄関前の階段にて、座っていた梶丸さんに問われる。どうやら心配していたようで、帰りを待っていたらしい。


「バッチリですよっ! これで発電機を動かせるから、電気の使用が可能になりますねっ!」


 携行缶を持って、技術室まで移動。ガソリンを注ぎ込むと、ついに発電機は動き出した。

 電気が使えることになり、冷蔵庫や洗濯機。扇風機と電力消費が少ない一部の電化製品で、メンテナンスを終えた物に限って使用可能に。

 しかしそれでも使えるのは、発電機一台分の電力。用途に応じて使い分ける話となり、完全なる復旧とはならないだろう。


「小さな一歩かもしれないけど。これは大いなる前進だっ!」

「電気が復旧したから、使える物も増えたし。みんなも嬉しそうね」


 自衛官であるヤマトとナナさんは、状況の好転を素直に喜んでいた。

 体育館の隅に発電機を置き、扇風機を前に笑顔の子どもたち。今はまだ終末の日より、完全に劣る生活。それでも電気が使用可能になったことは、文明を一つ取り戻し日々に色つけるものだった。



 ***



「ちょっと! どうなっているのっ!? 水が全く出ないんだけどっ!?」


 という急転直下の悪報は、ハルノによってもたらされた。

 三階の空き教室にて、眠っていた日の朝。勢いよく扉を開けてハルノは、酷く動揺している様子であった。


「使っていた場所の、調子が悪いだけじゃないのかよ?」

「そういう話じゃないわよっ! 全部なのっ! 全部っ!」


 水道ある洗面所まで出向き、ハルノに促せるまま蛇口を捻る。

 最初の蛇口が空振りとなり、隣に逸れては別の場所も。やむなく三階を回って見るも、水の出る所は一ヶ所もなかった。


「ほらっ! 言った通りだったでしょ!?」

「とりあえず、下に行って見ようぜ。何があったか、わかるかもしれないし」


 興奮気味に言うハルノを宥め、階段を下り三階から二階へ。


「ここもダメよっ!」

「一階も全滅っ!!」

「どうなっているのっ!?」


 二階の洗面所に集まる奥様方は、とても慌て困惑している様子だった。

 陵王高校に避難してから、すでに三ヶ月以上。避難生活を送っている中で、水が出なくなった日は一度もない。


「どういうことだ? 全ての場所で同時なんて」


 水が出ぬという不測の事態に、ヤマトもとても困惑していた。

 水道という生命線が断たれ、不穏な空気となる陵王高校。人間は水を無くして、三日も生きられない。事態を解決するには、早期の原因究明が求められていた。


「水が出なくなったのは、いつ頃からなの?」

「最初に気づいたのは、体育館にいる避難者の一人。早朝にトイレへ行って、その時からみたいです」


 発端を探るべく出来事を遡っては、詳細を掴もうとナナさんにヤマト。

 しかし原因を特定できなければ、解決の手段も見えてこず。陵王高校全体が断水となり、事態は暗転したままであった。


「予備のミネラルウォーターで、急場を凌ぐよう訴えましょうか」

「そうですね。水なしってわけにも、いきませんからね」


 ナナさんとヤマトの提案により、保管していた水の放出が決定。同時に節水が求められ、生活は今までになく不便となった。


「きっと断水は、陵王高校だけじゃないよ。近くの民家や施設。全てで水が出なかったからね」


 体育館にて水の配給を行う中、訪れ夕山は言っていた。


「それなら根本的な原因は、浄水場ってことなるのか」


 二階の自衛官が集まる教室にて、ヤマトは深刻そうな顔をしていた。

 浄水場は上官の自衛官たちが出向き、守っていただろうとの話。今に至り水の断水は、現場で異変あったとしか思えない。


「今まで躊躇っていましたけど。水の問題は急務。原因を特定するためにも、オレは浄水場へ行こうと思いますっ!」


 ヤマトは決意を固めたようで、強い口調で言っていた。

 水が無くなるのは時間の問題で、事は一刻を争う。根本的な解決を目指すには、現場へ出向くのが一番との判断だ。


「俺も付いて行くよっ! 行けばどんな場面でも、役に立てるはずだっ!」


 ただ事態の解決を待ち、指を咥えている性分ではない。

 陵王高校にて動ける人員は、現在とても限られる。協力が必要な時となれば、黙って見過ごすわけにいかない。


「浄水場は隣の市で、距離もかなり遠い。それに行く先々で、何が起こるかわからない。ここはオレたち自衛官に任せ、蓮夜たちは陵応高校を守っていてくれっ!」


 力強い発言をするヤマトに、今回は待機を促される。自衛官たちが留守にするとなれば、人員が減り全て手薄になる現実。

 それに詳細わからぬ隣の市へ出向くとなれば、移動に時間も要し簡単には帰って来られない可能性。不明確な点とリスクを考慮すれば、自衛官のみで行くのが最適と決めたようだ。


「今回は今までになく、急を要す事態ですから。距離も遠いですし。車を使おうと思っているんですけど」

「そうね。三人全員で行くわけにもいかないから。誰が行って誰が残るか。内訳も決めないとね」


 ヤマトとナナさんは大枠を決めて言い、自衛官たちは三人で相談をしていた。

 結局のところ浄水場へ行くのは、ヤマトとタケさんの男性自衛官二人。ナナさんは陵王高校にて、戦力とし残ることが決まった。


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