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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第105話 新たな基盤

「きちっと水分を取って下さいね。熱中症になったら、大変ですから」

「スポーツドリンクと塩飴です」


 ナナさんと男性医師の二人は、注意喚起をして校内を回っていた。

 うだるような暑さが続く、七月の岩見沢。梅雨がないと言われた北海道も、いつの頃からか雨は降り続き湿度は高く。夜になっても気温が下がらない、寝苦しい熱帯夜の日々が続いていた。


「体力のない子どもやお年寄りには、一段と厳しい環境だよな」

「そうね。停電下の中では、冷房も使えないもの」


 体育館隅の壁に背を預け、ハルノと見る体育館内。

 扉を全開に風通しよくしているも、解決策としては弱く。昼間も暑さが続く日々となれば、老若男女を問わず動きを鈍化させた。


「暑いからっ! みんな無理はするなよっ!」


 ヤマトは校庭にて作られた畑を前に、畑仕事をする人々に訴えている。

 雨の続く日は過ぎ去り、日差しは強く晴れ渡った空。ジメジメとした湿度は幾分か緩和されようとも、気温は高く行動するには厳しい日々が続いている。


「地球温暖化の影響は、終末の日を過ぎても変わりないな」

「動く気も失せるじゃん。てかみんな、頑張りすぎじゃね?」


 校舎の影にて畑仕事を見つめる啓太は、暑さに活力を失っていた。

 校庭ではクワを持ち、土を耕す少年。麦わら帽子を被った少女は、ジョウロを片手に水を撒いている。


「暑さにバテてるわけにもいかないだろっ! 俺たちも手伝いに行こうぜっ!」


 積極的に働く人々の姿を見ては、傍観しているわけにもいかない。渋る啓太の手を掴み引き連れて、畑仕事に加わることにした。


「なあヤマト。俺たちにも何か、手伝える事はないか?」

「おう蓮夜か! 手伝ってくれると言うなら、そうだな。土を耕す仕事を手伝ってくれ! 今はもう少し、畑を広げようと思っているんだ」


 助力の申し出に対して、ヤマトは端的に説明をして言う。

 先日の補給戦線にて食料の補給を行おうとも、野菜や果物に肉や魚。鮮度が重要な生鮮食品については、入手できぬ話。畑を作ることは、一つ生活基盤を整える試みである。


「収穫時期は、いつ頃になるんだよ?」

「収穫なんて、暫く先の話だ。それでもちゃんと世話をすれば、秋までには収穫できるはずさ」


 畑仕事に勤しむヤマトは、土に汚れ額に汗をかきながら言う。

 野菜の苗や種の入手経路は、先日の大型ショピングモール。他にもホームセンターや、近隣の農家から。ヤマトが農作業につき詳しいのは、元は農家の息子という経緯からである。


「水道が生き残っているのは、幸いだよな。水がなくなったら、マジでやばい」


 畑に水を注ぐ姿を見て、しみじみと思う。終末の日を経て、変わってしまった世界。全ての物流が止まり、明かりや電気も失った。

 人間は水をなくして、三日も生きられない。野菜を栽培し自給自足の足がかりへすることも、終末世界で新たな生活基盤を築くことも。衛生的で綺麗な水あることを前提とし、未来へ進める話なのだ。


「そうだな。全ては隊長たちが、上手くやってくれているってことだ」


 ヤマトから聞いていた話により、浄水場は健在だと推察される。

 隊長や他の自衛官たちにより、守られているだろう浄水場。今も陵王高校にて水が供給されているのは、見えぬところで彼らの働きがあるからだ。


「いずれは一度。合流をしたいとは、思っているんだけどな」


 土を耕して苗を植え、種を蒔いて言うヤマト。終末の日から、一度も顔を合わせていない隊長たち。

 生存確認や今後の方針につき、話したいことは当然にあるのだろう。


「とりあえず今は先に、畑仕事を終わらせちまおうぜ!」


 ヤマトたち自衛官は、陵王高校を離れられずにいた。

 理由は陵王高校にいる、避難者たちの存在。先日までは特に戦闘能力なく、手放しにして行くことできなかったからだ。


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