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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第104話 一刀理心流

 ―*―*― 蓮夜視点 ―*―*―



「そんなことがあったのか。俺は全く知らなかったぜ」

「まぁこうやって人に話すのは、初めてだからね」


 夕山本人から聞かねば、全く掴めなかった真実。噂や憶測の類いが、いかに無責任かよくわかる。


「って言うか、納得いかないだろっ! だって相手が先に、手を出したんだろっ!?」

「真実なんかより、事をどう収めるか。結局のところみんな、保身が優先。誰かに責任を押しつけて、立場を守りたったんだよ」


 夕山の話によれば、喧嘩相手の処分は甘かったらしい。

 そうなると最も重い処分を受け者が、諸悪の根源と推定。ろくに話しも聞かず、弁解の機会も与えられず。得てして夕山の立場は、他より悪くなってしまったようだ。


「なんか人間って感じだな」

「本当。イライラするくらいにね」


 感情に起伏は見られぬも、夕山は声を低く憤りを吐露していた。

 人間社会にある、なくならない理不尽。その身をもって受けたとなれば、夕山の不平不満は計り知れぬところだろう。


「そうだ! 夕山にこれを、渡そうと思っていたんだっ!」


 謝罪の機会と同時に、持ってきた物。先日の大型ショピングモールで入手したのは、夕山が好んで食していたエナジーバーのキャロリーメイト。


「ああ。蓮夜たちは街に、行って来たんだっけ?」

「大勢で大変だったけどな。死傷者は誰一人として出さず、みんな無事に帰って来たぜ!」


 参加していなかった夕山も、補給へ行ったことは知るところ。

 補給戦線となった任務は、全員が無事に帰還。初めての大きな任務としては、上々の結果を残せたと言って良いだろう。


「そう言えば、蓮夜。記憶が戻ったって聞いたけど」


 記憶喪失は夕山も知るところで、回復の話も耳に届いていたようだ。


「まぁ完全にではないけどな」

「なら本当に剣道は、やってなかったの?」


 不完全な部分があるのは承知の上で、それでも回復していればと問う夕山。

 全国大会を優勝した夕山から、奇跡的にも一本を取った身。未経験者という話は、当初から疑われていたところである。


「剣道はやっていなかったけど。剣術に関して、まるっきり初心者ってわけでもないんだ」


 一刀理心流(いっとうりしんりゅう)。日本古武道の流派で、剣術のみならず居合術や棒術。柔術や武器を用いない徒手格闘をも含む、技の種類も多種ある総合武術。日頃の稽古の成果をもって望み、実戦経験を経て習得したものである。


「なるほどね。どんな形にせよ素人でないのなら、納得するところだよ」


 剣道でなくとも剣術を習得していたとなれば、夕山としても頷き合点がいった様子。

 初めから刀にも興味あり、種類は違うも剣の付く話。剣術につき夕山との会話は、話題性あり弾むものだった。


「それと、もう一つ。蓮夜に聞いてもいいかな?」


 刀や剣術につき一通り話し終えたところで、改まった態度で夕山は問う。


「なんだよ? 一体?」

「屍怪に迫られる中で、車に人が閉じ込められていたとき。なんで人を助けようと思ったのかな? やっぱり人の命が、大切だったから?」


 夕山が質問する内容は、札幌の街にてあった事故。暴走した車がフェンスに激突し、人が残され救出に向かったときの話である。


「それもあるけど。結局のところは、俺がそうしたかったから。そこに尽きるんだろうな。結果として人を助けられず、みんなを危険にさらす始末だったし」


 今にして振り返ってみれば、考え方を改めるところ。状況に応じて適切な判断を下さないといけぬ中、己が気持ちを優先し危険との天秤で測り違い。

 助けたいだけでは仲間の命を危険にさらし、人の命も救えず結果は伴わない。


「わかりやすくていいね。蓮夜らしいと思うよ」


 答えに対して夕山は、笑顔を見せ応じていた。   

 救出に際して意見は対立し、結果だけ見れば夕山の正着。それでも嘘や偽りない言葉は、納得できる部分も多かったようだ。



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