1 猫と異世界転生してみました
猫との冒険の始まり!
下校中。
いつもと何ら変わりない一日を過ごす。
特に変わったこともなければ、いいこともなかった。
つまらない授業を耐えしのぎ、やっと下校だが帰ったところですることもない。
そんな愚痴を頭の中で垂らしながら、ぼーっと自転車のペダルを蹴る。
そろそろ大通りから家路に入る辺りのところで異様な光景が目に入ってきた。
猫?
猫が道路の真ん中でぽつんと立っていた。
おいおい国道だぞ。
やばいんじゃないか?どうすればいいんだ?
そんな光景の次に目に入ってきたのはトラックだった。猛スピードでこちらへ駆けて来ている。
まずい!
ガシャン
自転車を捨て、走り出した。
考えるよりも先に足が出てしまった。
何でこんなことしたんだろう俺。
変なところで正義感出しやがって。
俺が猫を抱いて走りだそうとしたときには、もうトラックはそこにいた。
ドンッ
鈍い音が鳴り響いた。
俺の視界には血で赤く染まっていく空がぼんやりと映っていた。
意識が遠のいていくのが分かる。
猫は大丈夫なのだろうか。
これで死んででもいたら最低の結果だな。
周りがザワザワとしている。
でもそんな音ももう聞こえなくなってきた。
…死んだんだな、……俺…。
次の人生では…もっと楽しい人生を遅れますように………。
気が付くと俺は真っ暗な空間に1人立っていた。
目の前には椅子がちょこんと置いてあるだけで、それ以外には何もない。
しっかりと意識を持っていて、きれいな肉体もあった。
あれ、死んだんじゃないのか?
キョトンとしていると、後ろからコツコツと足音が聞こえてきた。
その足音はどんどん俺に近付いてきて、ついに俺を通り越こす。
その足音の正体は、金髪のロングヘアを揺らしている綺麗な女性の足音だった。
白い服を着ている。まるで天使みたいだ。
そして彼女は目の前にあった椅子に座って俺に告げてきた。
「伊藤正さん。あなたは残念ながら亡くなりました。」
やはり俺は死んだみたいだ。
じゃあこの肉体は?
「え、えっと…これはどういう状況なんでしょうか…?」
恐る恐る俺が問い掛けると。
「はい、ここは天界です。」
透き通った声でそうへんてこなことを口にした。
何だこいつ?素面なのか?
「え?」
「私は亡くなられた方を導く女神です。」
天界?女神?良く分からない。
夢みたいだ。
「あなたにはこの先、2つの選択肢があります。」
「…は、はい……。」
俺の疑問符は無視し、笑顔で押し通してくる女神とやら。
もう何となく話の流れに乗ってしまおう。
「もう一度1から人生をやり直すか。その体のまま、異世界に転生するか。この2つです。」
「異世界?」
異世界と言ったらゲームとかアニメの世界の、あんな感じか?
「そう、異世界!」
急に大きな声を出してきた。
びっくりするだろ。
「冒険者として剣や魔法を使いこなし、様々な魔物と戦い合う荒くれた世界…!」
ゲームとかアニメそのまんまの超憧れる世界じゃないか!
「そ!そんな世界に転生出来るんですか!?」
「はい、出来ます!」
にっこり微笑んでそう言ってきた。
やったぞ!
つまらなかった日本の世界から、魔法やらそんなのが使える世界に行けるんだ!
日本では陰キャだった俺が、勇者に…!!
「…じゃっ、じゃあ、異世界に転生します!」
「分かりました!じゃあ早速手続きを……そうでした。そちらの方はどうしますか?」
そう言って俺の足元を指差してきた。
見てみると、そこには助けた猫がいた。
…俺が助けた猫……。
俺が助けた猫!!
「え!猫も死んじゃったんですか!」
「…は、はい、あいにく……。」
おいふざけんじゃねえぞ。
俺が助けて意味ねえじゃねえか!
…はあ…、…まあ、この際良いか。転生できるみたいだし……。
「…どうするって、どうすればいいんですか?」
「まあ、連れてくしかないですね。」
おい俺異世界に行って猫の世話して暮らすのか。
クソじゃねえか。
「抱くような形で猫に被さっていたので、装備品としてみなされたみたいです。一緒に猫も転生する形になりますが、それでも転生で大丈夫ですか?」
まあ、それしかないのか。
……仕方ねえな…。
世話っつっても、餌やるくらいだろ。
…なら良いか。
「はい、転生で大丈夫です。」
「それでは手続きに移ります。そこの魔法陣に立っててください。」
女神が指差す先に、青く光る魔法陣がファッと出てきた。
おお!すげえ!ガチじゃん!
「それでは伊藤正さん、並びに小猫さん、あなた達を異世界に転生させます。幸運を!…あ、ちなみに、その小猫さんは「ベルちゃん」、という名前があるそうです。前の飼い主さんが付けた名前とのことです。それでは改めて、行ってらっしゃいませ!」
そう彼女が言ったとたん、俺と猫の体がふわっと浮き始めた。
おお、すげえ!
ベルか、把握。
そんなことより転生だ!剣だ!魔法だ!
…って、俺魔法とか使えるのか?
て、てかどうすれば冒険者になれるんだ?
「す、すいませーん!どうしたら冒険者になれるんですか!俺って魔法使えるんでしょうか!」
「知りません。」
「へ?」
「だって私まだ新人ですもん!そんな詳しいことまだ分かりません!」
使えねぇ!こいつ使えねぇ!!
おいおいマジかよ投げやりかよ!
「おいふざけんじゃねえ!!どうすればいいんだよ!!おい!!」
「幸ー運をー!!」
「おーい!!」
そんなことを言ってる間に、もう女神の体は豆程度の大きさに見える程、俺の身体は浮いていた。
「おーい!!おーい!!女神ぃい!!」
もう俺の声は届いていないみたいだ。
そんな最悪の出だしで、俺と猫の人生の第二章の開幕した。
不安過ぎる!!
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では、次回からも
「猫と異世界転生してみました。」を、
よろしくお願いします!