第二話 10~8両目「不安」
電車の中に入れば生暖かい風を感じ背筋がゾッとする。
内部の紫色の壁はまるでワニの皮膚のようでウヨウヨと上下左右に動いており、触れるのも恐ろしかった。
「うぇっ、うぇっ、うぇっ…」
「ひいぃっ、何この声!!!」
「不気味ですがおそらく「ドアが閉まります」といったところでしょうか?」
放送で車掌と思わしき声が放送で聞こえる。
慌てて最後尾車両の運転席を確認するが、そこには誰もいなかった。
そしてやはり「うぇっ、うぇっ」という不気味な声合図だったのかドアが閉まる。
誠達はもう逃げ場は無いのだと身構えた。
「怖いよ誠くん、何かあったら守ってね?」
「ええ、任せて下さい部長!
こんな事もあろうかと!
リュックの中に護身用の武器を入れておきました!」
誠がリュックサックのチャックを開く、すると中にはスタンガンにバット、それから弓矢が入っており、それには部長も驚いていた。
「へぇ、用意周到なんだね誠くん」
「しかし部長のそのステッキも一見おもちゃに見えますが本当は電流が流れるのでは?
護身用の武器として考えても宜しいでしょうか」
「え~?どうしてバレちゃったの?
私のスペシャルな電流ステッキは最後まで隠しておきたかったのにぃ」
「スイッチと金属の電流発射口が見えてますよ、どー見てもスタンガンでしょ」
「ちっ…」
真面目な表情の誠と少し不機嫌になった部長が電車の中をゆっくりと歩き始めた。
10両目の内部は二列の席があり、中央が廊下。
ウネウネ動く壁にはガラスの窓が埋め込まれており外の景色が見える。
およそ時速80キロぐらいのスピードで走っており、開かずのトンネルの中に突入している。
「部長…行きますよ…どうやらこの電車、岩で封鎖された本来入れないはずのトンネルに入りました」
「もし何か出て来ても…夜道のナンパ野郎撃退みたいには行かなそうね」
部長と誠は不安になりながら10両目~8両目を歩いていくが壁が動く以外には何も起こらなかった。