珍味・メーダの眼球 part1
ばっさばっさ。ばっさばっさ。
ジャイアント・バット。でかい蝙蝠だ。噛みつかれると洒落にならない量の血を一気に吸われる。
羽ばたく音が聞こえたら警戒し、姿が見えたらすぐ斬る事。もし羽ばたく音が止まったら、体のどこかに止まられていないかを見て、張り付かれていたら自身の体ごと壁や床に叩きつけて、速やかに潰して殺す事。
ばっさばっさ。
「ダーク・ネビュラ」
漆黒に輝く巨大なタコ型の炎を纏い、その燃え盛る触手を振り回す塵芥。何というカオス。
暗い洞窟を闇色の炎が照らす。明るいんだか暗いんだかよく分からない視界だ。よく見えはするんだけど、色がねえ。明度だけが高く、彩度が死んでる。
モノクロ二色調の視界の中、ジャイアント・バットの群れは黒炎に成す術もなく、塵になっていった。
「魅斗さんエグいにゃー!強ーい!それ何の魔法なのにゃ?」
「魅斗、それわしも気になるわァ。お前それ、何しとるん?」
「ただの火の魔法なんだが……見てくれが異端なのは最近自覚しつつあるな」
ばっさばっさ。ばっさばっさ。
ひゅん!どろり……
ジャイアント・バットは黒炎に溶けた。
ばっさばっさ。ばっさばっさ。
ばっさばっさ。ばっさばっさ。
ひゅん!どろり……
ひゅん!どろり……
ジャイアント・バット達は黒炎に溶けた。
「触手のレンジが短い。まだまだ改善の余地があるぜ」
「ゴルボスにゃん、こいつぁ、大者になるにゃー。是非今後もよろしくしたいにゃー?」
「ミリーナ。それはそうだが、頭にジャイアントバットついてるぞ。少し止まれ……おうりゃァァ!」
バウンッ!ドシィィィ!
ゴルボスの斧による斬撃がジャイアント・バットを捉え、そのまま壁まで駆け抜ける!
パァン!
ジャイアント・バットは砕け散った。
「ミリーナお前、油断大敵やぞ。ここは悪名高き〈戻らずの洞窟〉なんやから」
「ひにゃーー」へろへろ、ぺたん。
びっくりしたにゃ、と言って崩れ落ちるミリーナ。
「ミリーナ、ゴルボス大丈夫か?」
「おう、大丈夫じゃ。今ミリーナの頭にでっかいのが止まってたけどな」
「チョーーびっくりしたにゃ。血い吸われちゃう所だったにゃ」
「そうか。なあ二人とも、見てくれ。もしかしてアレが〈メーダ〉じゃねーか?」