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タロット絵師の物語帳  作者: 九JACK
タロット絵師の繕い処
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タロット絵師のお洒落問題

 朝食を食べ終えると、サルジェはいつも通りてきぱきと片付けを始めたのですが、ハクアがいそいそと部屋に戻って、行ったり来たりをし始めたので、ツェフェリは何事かと思ってハクアの後を追いました。

 普段泰然としているハクアがぱたぱた動き回っているというのは新鮮でもありました。

「ハクアさま、どうなさったんですか?」

「ああ、ツェフェリか、ちょうどいい」

 腕を取られて、引かれていきます。さすがは狩人といったところでしょうか。力が強く、抗えません。まあ、抗う必要性を感じないのでそのままついていきます。

 辿り着いた部屋を見て驚きます。

「こ、ここは、ハクアさまの私室ではありませんか!?」

「私とてこの屋敷で生活しているのだ。私室の一つや二つ持っていて不思議ではなかろう」

 そういうことではないのですが。なかなか権力のある街の地主の私室です。こないだ来たばかりの居候が入るのは畏れ多いことでしょう。

 ですが、そんなことは一切気にした風もなく、ハクアはツェフェリを部屋の中へ導きます。中は豪奢なカーペットが敷いてあります。豪華なカーペットというと、真っ赤なカーペットが真っ先に思い浮かびますが、ハクアのイメージに合わせてか、赤紫のカーペットです。そこに黄色で何やら複雑な刺繍が細やかに施されております。

 ぐるりと部屋を見渡すと、薄緑で幾何学模様が連ねられた壁紙が貼られており、お洒落で趣味の良い部屋となっています。置かれている家具はベッドとドレッサー、クローゼットです。どれもシンプルな色に統一されており、落ち着いた雰囲気を醸し出していました。

 ハクアはその中のクローゼットに真っ先に向かいました。それで、ツェフェリを脇のドレッサーの前に立たせると、クローゼットをばっと開けます。

 中には明るい色の服からシックな色の服まで、色とりどりの服が揃えられております。ハクアはいくつか品定めして、二、三着取り出しました。

 一つ目は青と緑系統の色でまとめられたものです。

「うーん、髪色が緑寄りだから新鮮味がないか」

 との一言。二着目を手に取ります。今度は赤と紫系統の服に茶色系統のスカートです。今ハクアが着ているものに似通っていますね。

「私好みではあるがちと派手すぎるか」

 最後に黄色、オレンジ系統の服とジーンズです。

「……君はオレンジが似合うな」

「え、えと」

「サルジェも呼んで意見を聞くか」

 ちんぷんかんぷんなツェフェリを置き去りに、ハクアはサルジェを呼びに行ってしまいます。数分、そこで立ち往生していました。

 やがて、ハクアがサルジェを連れてやってきて、先程選んだ三組のセットを見せます。意見を伺っているようです。

 ツェフェリと服を交互に見て、少し考えた後、サルジェはオレンジのセットを選びました。

「よし、ではこれを着ていくといい」

「ええ!?」

「古着ではあるが、私のものだ。見劣りはせん」

 不満はないが、そんな上等なものをもらっていいのでしょうか。

 まあ、いいも悪いも、ツェフェリには今何も返せるものもありませんし、私服もありませんから、こうするより他ないのでしょう。いくらツェフェリの一人称が[ボク]とはいえ、サルジェの服では可哀想ですからね。

「じゃあ、早速着替えて。買い物は一緒に行くから」

「わ、わかった……」

 サルジェに促され、ハクアの古着だというセーターとジーンズを持っていきます。

「ハクアさまってすごいんだね」

「ん?」

 一緒にハクアの部屋を出たサルジェが疑問符を浮かべます。

「あんなにたくさん服を持っててお洒落で……綺麗だし」

「え、ツェフェリも綺麗だよ?」

「いや、ハクアさまとは比べ物にならな……ってサルジェ?」

 随分さらりと口から言葉が出てきましたが、ものすごいことを言ってしまったことに気づいたサルジェは固まってしまいました。後から行くから、とツェフェリを先に行かせたサルジェはその後、頭を抱えて呻きます。

 ツェフェリは自分の部屋に戻り、渡された服に着替えます。

「うん、確かにこっちの方がぱりっとしてて見栄えするかも!」

 部屋に置かれていた姿見の前に立って、くるり、と一回りします。すると、扉の外で何かが崩れる音が。

「なんだ、サルジェか」

「なんだとはなんだ、なんだとは……いやそんなことより着替えるときはちゃんと扉閉めて。半開きは駄目だよ」

「え?」

 それを聞いたタロットたち、主に[悪魔(デビル)]が「見ぃーたぁーなぁー!?」とガチギレしたのはまた別なお話です。

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