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ハチャメチャ姉妹は杜の都へGO!

作者: チャンドラ

「時は巡り~また夏が来て~あの日と同じ~七夕祭り~ですの~」

 新幹線の窓を眺めながらとある歌を口ずさんでいましたの。

「お姉ちゃん! 楽しみだね! 仙台!」

「そうですの! 色々と行ってみたいところがありますの!」

 肌寒くなってきた12月の中旬、私と妹は仙台へ旅行に行くことに決めましたの。


 おっと、それよりも自己紹介がまだでしたわね!


 私の名前は関取風夏せきとりふうか

 今の身なりは黒を基調としたゴスロリ衣装を着てますけども、こう見えて立派に都内でOLとして働いてますのよ。

 ええ。


 私の隣に座っているのは、妹の関取風冬せきとりかぜふゆですの。

 雪のように白い肌で顔立ちは私に似て、とても美人。将来有望ですわ。

 ただ、胸が小さいのと頭が少々よろしくないのが玉に瑕ですの。


 すると、新幹線から軽快な音楽とともにアナウンスが流れましたの。

「次は、仙台です。お忘れ物のないよう御仕度ください。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました」


「そろそろ着きますの! 風冬、行きますの!」

「うん、そうだね! お姉ちゃん!」

 新幹線が止まり、ドアから出て改札をくぐり、仙台駅の西口を出ると突き刺さるような冷たい風が頬に感じましたの。

 雪こそ降っていないですけど、やっぱり東京よりも寒いですの。

 仙台駅前にはたくさんの人が歩いていましたの。

「結構人多いね。お姉ちゃん」

「ですわね。東北地方ってものすごい田舎のイメージがあったけど、結構栄えてますの。さすがは東北地方最大の都市と言われることだけのことはありますの」

「それよりもお姉ちゃん。どこに行く?」

 風冬が行き先について訊いてきましたの。

「まずは、『ハピナ名掛丁商店街』に行きますの!」

「うん、分かった!」

 

 ハピナ名掛丁商店街――JR仙台駅からいちばん近いアーケード街であり、たくさんの飲食店などが立ち並んでいますの。

 商店街の中に入ると、たくさんの人が商店街の通りを歩いておりましたの。


「あ! 見て見て! お姉ちゃん! ゲームセンターがあるよ!」

 風冬はクレーンゲームを始めとするたくさんのゲーム機が置かれているお店を指差しましたの。


 そのゲームセンターは『ゲームエプリ』というお店ですの。

「ですわね! ちょっと、入って見ますの!」

 ゲームエプリで三十分ほど湾岸ミッドナイト、クレーンゲームに興じ、お店を後にしましたの。

 さらにその後、ドンキホーテや雑感店などを物色しましたの。


「風冬、そろそろお腹も空いたし、お昼にしますの!」

 時刻は昼の十二時前。昼食にはちょうど良い時間帯ですの。

「どこ食べに行く? お姉ちゃん。マックとか天一とかあるけど」

「せっかく仙台に来たからには牛タンにしますの!」


 ハピナ名掛丁商店街から一度、仙台駅へと戻りましたの。

 向かうお店は仙台駅の三階にあるお店、『牛たん炭焼 利久 仙台駅店』ですの。

「いらっしゃいませ。二名様でしょうか?」

 制服を着た店員が出迎えてくれましたの。

「ええ」

「では、こちらのお席へどうぞ」


 案内されたのは二名のテーブル席でしたの。私と風冬はメニューを見ましたの。

「うわー! どれもおいしそうだね! お姉ちゃん!」

「ですの! どれにするかものすごく迷いますの!」


 悩んだ末、私は牛タン定食、風冬は牛タン握りを注文しましたの。


「お待たせいたしました」

 注文してから暫くすると、頼んだメニューが運ばれてきましたの。

「うわぁ! 美味しそうだね! いただきます!」

「いただきますの!」

 まずはお新香を青唐辛子とともに一口。

 ピリリとした辛みが舌から感じましたの。お新香の酸味とあわさって旨味が口に中に広がりましたの。

 そして、いよいよ牛タンを食べますの。


 牛タン一切れを口へ。

 『サクッ!』とした歯ごたえのジューシーな牛たんの肉中がたくさん出てきましたの。

 すかさず白米をかきこむととっても、

「美味しいですの!」

 自然とそんな感想がこぼれましたの。


「お姉ちゃん。それ美味しい?」

「もちろんですの!」

 すると、風冬はサラサラとした絹のような美しい髪をいじりながら物欲しそうな顔をしてこう言いましたの。

「一口食べたいな」

 私は牛タンを一切れ、箸で摘みましたの。


「はい、風冬。あーんですの!」

 箸に摘まれている牛タンを風冬の桜色の唇へ近づけましたの。

「ちょっと、お姉ちゃん。は、恥ずかしから自分で食べるよ……」

 照れ臭そうにそう答える風冬。そんな表情もとっても可愛らしいですの。ええ。


「あーんで、食べなきゃあげませんの」

 少し意地悪く言うと、風冬が困ったような表情を見せましたの。

「分かったよ。もう、お姉ちゃんは意地悪だなあ……」

 観念した様子で牛タンを食べる風冬ですの。頬を朱に染めながらもぐもぐと食べる様子はとても良いですの……。


「風冬、私にも風冬の牛タン握り、一口食べさせて欲しいですの」

「え? しょうがないな。いいよ、とって」

 自分で寿司を食べるように促した風冬ですの。ふふ、風冬も思ったよりSっ気がありますの。


「私にもあーんして欲しいですの」

「や、やだよ。恥ずかしいもん!」

 プイと頬を膨らませながらそっぽを向く風冬ですの。私には分かりますの。こうするときは本当はもっと強請って欲しいと思っていますの。

「そんなこと言わないで……お願いですの」

「しょ、しょうがないな。えへへ……」

 少し口元を緩めながら箸で牛タン握りを摘み、私の口元へ近づけてきましたの。


「ありがとう。それじゃ、いただきますの」

 パクッと一口、牛タン握りを食べましたの。

「どう、お姉ちゃん」

「とっても美味しいですの」

「だよね!」

 風冬は私が齧った牛タン握りの残りを全て口に入れましたの。

「これって、間接キス……ですわね」

 私がそう伝えるとりんごのように顔を真っ赤にさせながら風冬はもぐもぐとそれを食べきり、

「やめてよ。お姉ちゃん……」

 そう蚊の泣くような声で答えましたの。


「ありがとうございました」

 会計を済ました私たちはお店を後にしましたの。


「美味しかったね! お姉ちゃん」

「そうですわね」

「次はどこに行く?」

「次は仙台城に行きますの!」


 仙台駅二階へと降り、西口方面からバス乗り場へと向かいますの。

 目的のバス乗り場である仙台駅西口バスプール16番乗り場にて待っているとレトロチックな雰囲気をしたバスがやってきましたの。

 そのお洒落なバスは仙台を代表する観光スポット、『瑞鳳殿』や『メディアテーク』を循環してくれる運賃260円のルート型バス、『るーぷる仙台』ですの。

 バスは橋を渡り、急な坂道を登り始めましたの。

「次は仙台城跡、仙台城跡。お降りのお客様はご用意ください」


 バスから降り、赤い大きな鳥居を潜り、階段を登りましたの。

 やがてひらけたところに出ると、たくさんの観光客が手すりの前でそこから一望できる仙台市街を眺めてましたの。


 私たちも奥へと進み、手すりの前で仙台市街を眺めることにしましたの。

 たくさんのビルが立ち並んでいて、東京と遜色がないと言って良いほどの立派な都市の眺めですの。

 けれど、綺麗な水が流れている広瀬川を始めたとした豊かな自然も目に映りましたの。


 これが『杜の都』と言われる所以ですの。


「良い眺めだね。それと良いところだよね。仙台」

「そうですわね」


 東京より空気が澄んでてて、ご飯もとても美味しいですの。

 全国各地からこの街に人が集まる理由が納得行きますの。


「見て見て! お姉ちゃん! 伊達政宗の像だ!」

 風冬は私の肩を叩き、後ろを指差しましたの。

「おお、これが伊達政宗ですの……」

 甲冑を着た伊達政宗が馬に乗っている姿の像が目に映りましたの。

 観光客がパシャパシャとスマホや三脚で撮影していましたの。


 伊達政宗――隻眼というハンデをものともせずに東北を統一した名将ですの。

 豊臣政権下から江戸幕府成立後に至るまで、隙あらば天下を手に入れんと幾度と無く画策しており、もうすこし早く生まれていれば天下は伊達のものだったのではないかという意見もたくさんあるんですの。

 


「お姉ちゃん、私たちも写真撮ろうよ!」

「そうですわね」


 私たちは伊達政宗像の前へ移動し、一緒にスマホで写真を撮りましたの。

 これは後でインスタで投稿ですの!

 もちろん、風冬の顔はモザイクしますの。変な虫が寄り付いたら厄介ですの!

 

 再びるーぷる仙台に乗り、仙台駅に向かいましたの。


「お姉ちゃん、次はどこに行くの?」

「『海の杜水族館』に行こうと思いますの」


 仙台駅に到着後、JR仙石線を利用し、中野栄駅へと向かいますの。

 駅到着後、シャトルバスを利用しそのまま海の杜水族館へ。


「うわぁ……大きい水族館だね。お姉ちゃん」

「ですの!」


 入場券を二枚購入し、早速中へ。

 水族館の中の照明はやや薄暗い明るさに調整されており、水槽にはサメやエイ、他にも魚がたくさん悠々自適に泳いでいましたの。


「うわぁ! サメだ。大きいなぁ」

 風冬は水槽の中にいる大きなサメを指差しましたの。

 すると、大量の小魚が群れを作り、泳いでいるのが見えましたの。

「いいですの。魚は……」

 普通の海に住む魚はいざ知らず、水族館の魚は気ままに泳いでいるだけで餌を貰える。


 衣住食……いや、住食が保障されていますの。


 他にもチンアナゴやクラゲ、エビといった色んな水槽を歩き眺めた後、イルカのショーを見ることになりましたの。


「みなさん! 次はスピンジャンプをお見せ致します!」

 トレーナーが啖呵を切ると笛を鳴らし、高らかに魚を水中に投げましたの。

 すると、イルカが水面から飛び出て、3回ほど体を回転させながら見事魚をキャッチしましたの。


「おお! すごいね! お姉ちゃん!」

「ですの!」


「次は大技、『ロケットジャンプ』を披露いたします!」

 トレーナーは笛を鳴らすと、ゆっくりと水中に潜りましたの。

 観客は固唾を呑んでトレーナーに注目しましたの。

 緊張の一瞬。


 ゆっくりとトレーナーの身体が水面から出て来ましたの。

 トレーナーの足を二匹のイルカが持ち上げるようにジャンプ。

 それと同時にトレーナーの身体もロケットのように高らかに跳ね上がり、水中にダイブしましたの。


 見事な大技を決めた二匹のイルカと一人にトレーナーに対して、たくさんの拍手が送られましたの。

 風冬も『パチパチパチ』と拍手をしましたの。

 私もつられて小さく拍手ですの。

 見事なコンビネーション。まるでサ○シと○カチュウのような絆で結ばれてますの。


「はぁ~。面白かったね。お姉ちゃん」

「ですわね。それじゃそろそろ行きますの」

 イルカショーをたっぷりと堪能した後、私たちは海の杜水族館を後にしましたの。


 シャトルバスへと乗り込み、再び中野栄駅へ、さらにそこから仙台駅へと戻りましたの。


「お姉ちゃん。まだ明るいけど、『光のページェント』見に行く?」

「いや、少し時間を潰しますの。ちょっと『イービーンズ』に寄りたいんですの」

「分かった!」


 イービーンズ――仙台駅西口から歩いて3分のところに位置し、ファッションやホビーの店舗が多くありますの。

 イービーンズの中にはアニメイトやゲーマーズ、らしんばんもありますの。


「これこれ! これが欲しかったんですの!」

 ゲーマーズにて私は思わず、叫んで欲しい商品を手にしましたの。 

「お姉ちゃん。何買おうの?」

 風冬は後ろから私の持っている商品を覗き込もうとしましたの。

「ひ、秘密ですの!」

 慌てて私はその商品を手で隠しましたの。タイトルは伏せておきますけど、私の持っている商品は妹萌えのゲーム。

 ヒロインである妹の様子が風冬にそっくりですの。

「え~、ケチー」

 唇を尖らせ、不満そうな顔をしましたの。ああ、可愛いですの……。

「それじゃ買ってきますの!」

 思わず抱きしめたいという気持ちを必死に押さえ込み、レジへと向かいましたの。


 イービーンズを出て、他にもパルコやロフトを見ていたらすっかり暗くなりましたの。


「それじゃ、そろそろ行きますの、『光のページェント』」

「うん!」


 光のページェント――正式名称、SENDAI光のページェントは、定禅寺通と青葉通のケヤキ並木に数十万に上る数のLEDを取り付けて点灯するイルミネーションイベントですの。

 地下鉄を使い、仙台駅から勾当台公園駅へ。

 駅から出ると幻想的な光景が広がっていましたの。


「うわぁ……」

「すごいですの……」

 スーモツリーと呼ばれるスーモくんの形をしたツリーがさまざな色の電飾が施され、華麗に光り輝いていましたの。


 さらにその奥には想像をはるかに大きさのケヤキの木が立ち並び、その一本、一本にこれでもかというほどのLEDが取り付けられており、眩い宝石のようにキラキラと輝いていましたの。


 定禅寺通にはたくさんの人が歩いていて、写真を取っている人もたくさんいました。


「私たちも行こうっか。お姉ちゃん」

「ですわね」

 私は小さくて白い風冬の手を掴みましたの。

「お、お姉ちゃん?」

 少し驚いたように表情をしながら、風冬の黒い双眸が私を覗き込みましたの。

「はぐれないように……手を繋ぎますの」

「う、うん……分かった」


 そうして私たちは手を繋ぎながら定禅寺通を歩きましたの。

 数多の光がもたらすファンタジックな世界へ風冬と共に。


 それにしても、仙台はとってもいいところですの。

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