日替わりでケモ耳・ケモ尻尾が生えてくるようになりましたがなにか?
「グレアム様。なにか私にいうことはないですか?」
建国時から代々続くマクスウェル公爵家の嫡男、アレクシス・マクスウェルは猛吹雪の中にいるかのように冷たい空気を纏い、社交界で氷の銀薔薇と謳われるに相応しい絶対零度の眼差しで目の前の簀巻きにされた人物を見下ろしていた。
ほんの2日程前珍しく体調を崩したアレクシスは、自身が仕えているこの国の第二王子、グレアム・ウォルコットからよく効く、王宮医師から出されたものだと言われたことで怪しむことなく渡された薬を飲んでしまう。
グレアムが言う通り体調不良にはよく効く薬なのだが、王宮医師ではなくおかしな薬ばかり作っている知り合いからもらった薬であり、特殊な副作用が出ると言われていたが、生まれ持ったイタズラ心を発揮し、その副作用のことを言わずにアレクシスに飲ませたのだ。
「ぶはははっ!くっ・・・よく似合っているぞ、そのうさぎ耳とうさぎ尻尾!」
簀巻きにされている人物、第二王子のグレアム・ウォルコットはアレクシスの頭から生えている薄ピンク色のうさぎ耳と尻尾をみて爆笑すると、ゴォッと辺りの冷たい空気がより一層下がり、グレアムの警護をしていた騎士達が顔面を青ざめさせる。
(((((ちょ!このバカ王子ー!!頼むからこれ以上アレクシス様の機嫌を逆撫でるなー!!!!)))))
騎士達の心の中は団結しており、ガタガタと身体を震わせながら、つっこむ。
「ほぉ?それが最後の言葉になりますがよろしいのですか?」
滅多に笑わないアレクシスがニコリと満面の笑みを浮かべながら、そばにいた騎士の腰から剣を抜く。
「ちょ!まてまてまて!!!
俺が悪かったからその剣を捨てろ!!!」
さすがに慌てたグレアムはズリズリとアレクシスから遠ざりながら叫ぶ。
「何をおっしゃられているのですか?この2日で私が感じた屈辱を晴らすために潔く死んでください。
あぁ、ご安心ください。証拠を残すことなくきちんと処理致しますので。」
コツン…コツン…と靴を鳴らしながらグレアムに近づく。
建国以来の秀才と名高いアレクシスなら有言実行でやってのけそうで怖い。
「安心できるか!第一、騎士達が見ている時点でお前が犯人だとバレバレだろう!!」
死神の如く近づいてくるアレクシスに顔を引き攣らせながら逃げるが、すぐに追いつかれてしまい、足で押しつぶされる。
「えぇ、確かにグレアム様の言う通りですねぇ?
でも・・・・・・みんなまとめてしまえばなんてことないと思いますが?」
暗にグレアムと同じ道を辿らせると言われた騎士達。
全力で御免被りたいと口々にアレクシスに真剣に謝るようにグレアムに進言する。
うさぎ耳や尻尾の可愛らしさなど何処へいったのか。
怒りの大魔神の化したアレクシスは手に持った剣を刺しやすいようにもちかえ、振りかぶった。
「ちょっ、まて、落ち着け!!!
あの薬をくれた薬師があと5日したら副作用の効力は消えると言っていた!!」
無表情で剣を振り下ろすアレクシスを見ながら大声をあげると、途中で軌道を変えガスっと鈍い音がしてグレアムの顔の横に剣が刺さる。
冷や汗を垂らしながらホッと息をつき安堵し、本当なのかと訝しげな眼差しを向けるアレクシスに真剣な表情で頷く。
「はぁ…。本当に5日で効力は切れるのですね?」
スっとグレアムに乗せていた足をどかしながら尋ねる。
幼い頃から一緒にいるため、なんやかんや言いながらもグレアムに甘いのだ。
「本当だ。1週間限定で生えてくるだけであとは何ら問題はないと言っていた。副作用も無くなるらしい。」
「もしその話が嘘だったら今度こそ本気で葬りますよ?
はぁ…。もういい大人なんですからイタズラも程々にしてください。」
ジロリと睨めつけられながら小言を言われ、グレアムは苦笑する。
その後、話の通り5日後には生えてこなくなったが、グレアムと同じく面白いものが好きな国王がその薬を気に入ったため、《1週間限定!日替わりケモ耳ケモ尻尾付けちゃおう!》という名目で貴族達の間で大流行したらしい。
書きたくなって書いてみたけど、私に短編物を書く才能が備わってなかった…_| ̄|○ il||li
どんなケモ耳・ケモ尻尾が生えてきたのかは皆様のご想像におまかせ致します(笑)
※ゆるふわ系乙男召喚士、異世界に舞い降りるというタイトルで連載もかいています!良ければ覗いて見てください!