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転生龍シリーズ

龍は番を探して放浪する

作者: くろい

前作の「転生龍は卵の中で微睡む」を読まないとわからないと思います。

番君視点でお伝えします。




ふと、何故ここにいるんだろう。

そう思ったことはないだろうか。


いつものように、いつもの場所でのんびりまったりと日向ぼっこしていた時だった。

何故だろう、どこかに行かなければならいそんな気持ちになったのは。

いつもだったら、この場から離れることなんてしない。

ここは安全で、心地よく自分の一番のお気に入りの住まい。

両親があまりにも気に入ったので僕にくれた場所。

大陸より離れた小さな小島。


世界中ぐるっと一回りしたことがあったけど、ここ以上の場所なんて見つけることができなかったぐらい気に入ってる場所。

生まれた場所だからって、刷り込みってわけではない。

僕たちの種族はそれぞれお気に入りの場所を本能で探し出す。

いつか、番と共に暮らすために。


僕の両親はそういう場所をいくつも持っていて、今回僕を産んだ時はここが一番のお気に入り場所だった。

特に雄はそういう本能が強いって父が教えてくれた。

そしてもう一つ大事なことを教えてくれたのも父だった。


本能からの訴えは絶対だと。

惹かれるまま、素直になることが一番だと。

だから僕は今日旅立つことに決めた。本能に従って、この気持ちに間違いはないはずなのだから。




なんて考えてた若い時期もありました。


結局何年も何百年も大陸の隅から隅まで本能のまま旅立つことになるなんて、あの頃の僕には想像ができなかった。

最近、出会う龍たちも僕のことを哀れんだ顔してみてくれるようになった気がする。

そう、僕の種族は龍だ。

雄が雌を探すのは本能だし、世界中にただひとりの番がいるのも間違いないはずなんだ。


わずかに感じる気配。

それをたどって行けばすぐに肩透かし。

見つからない、どこにいるのかもわからず、わずかな気配をさまよう日々。

これだって思った時もあった。

だけど、見つけたと思ったら何故か小さな妖精が震えている。

どうしてそんな気配をまとっているかと思えば、妖精の持つ小さな首飾りから、わずかな気配を感じた。

ただ、その気配は僕が求めているような気配ではなく、違う龍のもつ気配。

それも他の雌の龍の気配にだとわかると落胆する日々。


それが度々あるものだから、逆に妖精たちを疑った。

もしかすると妖精こそが自分の番なのだろうかと。

僕の身体とは比べ物にならないぐらい小さなその姿に、愕然とした。

同じ龍の番を持たない同族も確かに存在していて、寿命が短い人族がその相手の場合すぐに見つけないと二度と会えなくなるという恐ろしい話まで様々な龍に聞いた。

あのように小さな妖精のどれかが番だった場合、人族ではないので寿命の方はあまり変わらない。

ただ、番うことができなくても側にいることができるかもしれない。


そう思うと、今度はその気配のする妖精を探してみることにする。

気配そのものをまとっているわけではなく、僕の探す気配をどこからか付けてくる妖精たち。

どこかにあるという妖精界に僕の探す番はいるのかもしれない。

だからこそ、一つの試みを始めた。


気配がある近くに僕の鱗を一つ落とす。

さりげなく、そっと。

そしてその後どうなるか観察すると、面白いことに妖精たちが集まりだす。

ただ、彼らは僕の鱗に触れようとはしない。

丁寧にどこかに運ぶようだと、その気配を追う。

すると、しばらくすると何かに鱗の気配を遮断された。


身体から離れたとはいえ、自分の意志で落とした鱗の気配を見失うということはありえない。

なのに、なんとなくここにあるような気がすると感性でわかる程度に、場所を特定できなくなった。

それならばと、本能に従って見つけた妖精の側に何度も何度も鱗を落とす。

そして、鱗は必ず妖精が持ち帰るを繰り返した。

ならば同じ場所に持ち帰るのかと思ってみたが、結局は違う場所から気配を感じる鱗。


ここまで来ると、妖精がどういう理由があるにしろ僕の鱗を集めていることがわかる。

集めている時に僕に場所を特定されないために他の龍が落とした鱗やたぶんだが、龍の卵を使って気配を誤魔化していることもわかった。

それに加えて何かしらの魔法も使われているはずだ。

よほど僕の番は自分を見つけて欲しくないらしい。


それとも妖精たちから気配を感じるということは、彼らの母である妖精女王が僕の番なのだろうか。

単独で子を産むと言われる女王が僕の番だった場合、種族の違いを気にしてとかならありえるのかもしれない。

その線も考えてみよう。


そしたら無事僕の鱗が女王の元にたどり着く方法を考えて、一つの案を思いつく。

妖精たちが思わず手にもてるぐらいの小さな鱗ならば、彼女の元に届くかもしれない。

ならばと、想いの限りを込めて鱗に魔力を注ぎ込む。

魔力を使った鱗の加工は、名案だと思ったのだけどなかなかうまくはいかなかった。


こういう細かい技術は龍である僕にはあまり向かない。

そこまで考えて、なら技術を磨けばいいということに思つく。

確か人族で錬金術と呼ばれる者たちが存在しているはずだ。

たくさん世界を見て回って、もしかして探している番が人族であるかもしれないと視野に入れて、さまざまなことを学んだ。

その中にそういう技術があるはずだった。


早速、知識を学ぶために人族に紛れ込む。

思った技術を手に入れるために、数年の時を要すのは数百年彷徨うよりも近道になるはずだ。

人型に己の身体を変化させる。

もともと龍族は擬人化することが可能だ。

でなければ、他の種族と番えることは不可能からだ。

本来は二十歳そこそこの外見に変化するところを、二歳ほど姿になる。

そして、何も知らないフリをして孤児院と呼ばれる前で待った。


夜明けと共に孤児院の中から人が出てくる。

驚いたシスターと呼ばれる女が僕を抱き上げた。

名前やら両親について聞かれたが、僕な何も知らないと答える。

『ここに待っていてね』と言われたから待っていると説明だけはしておく。

子供らしくない態度が出るかもしれないので、できる限り話さないように心がける。

すると孤児院の者たちは、何か原因があってそういう子供だと勘違いをするのは過去に何度もこの手を使ったので間違いない。


まぁ問題があるとすれば、僕は人の顔があまり区別できないことぐらいだ。

だってそうだろう。同じ種類の動物がいて、それを一つずつ区別するのは根気のいる作業だ。

番なら別なのだろうが、人族にそれほど興味はない。


ここである程度幼児期を過ごし、魔法の才能を発揮すれば王立学園というところに行けるはずだ。

魔力のない人族が多い中、魔法が使える者を貴重と考えるところは多い。

どんな身分だろうが、魔法が使えればそこで学ぶことができる。

僕が今回欲しい技術は、錬金術だとはっきりしていてこの国は一番それが学ぶには最適なのだ。


そして僕は何年かを使って錬金術を手に入れる。

実験を重ねて自分の鱗のミニアム化に成功し、追跡の魔法と触れたものの感情が伝わる魔法をわからないように小さな鱗に組み込んだ。

もちろん、怯えさせないように僕の心が伝わるように魔力をつぎ込むことも忘れない。


いつものようにいつもの妖精の気配を探し、そっと小さな僕の想いを落とす。

その鱗に妖精たちは驚いたようだった。

いつも以上に警戒をし、いつも以上に悩んだ様子だったけど、持ち帰らないという選択はないようだった。


これまでにないぐらいの結界が妖精たちの周囲に張り巡らされた。

今回の人族で隠匿の技術を磨けたのもよかった。

何故なら結界を張ることに夢中な小さな妖精に、わからないように追跡の魔法をかけられたのも大きな成果だったからだ。

妖精たちが運んだ場所は、近くに自分の他の鱗の気配があった場所。

隠す場所がなくなったのか、それとも急いだのかはわからない。


いつものように鱗の気配を消す作業が始まったのを追跡魔法を付けた妖精の様子から見て伺えた。

そしてその中の一匹が今回の鱗の側にやってくる。

この妖精こそ、もっとも彼女の気配をもっているそう直感できるほど心惹かれるものをもっていた。

いつもの僕の鱗だったら繋がることすらできない結界の中、その妖精は小さな鱗をうっとりとして見つめていた。

ここであることに気づいたんだ。

その小さな腕が鱗に触れようとしていることに。

何度も手を伸ばして、やはり手を引っ込めて。

困ったように、そわそわしながら、触れようか触れないようにしようか迷っている様子だった。


その妖精は何時間迷ったのだろう。

ずっと飽きずに何度も何度もチャレンジし、手を引っ込める。

触ってくれれば、何かわかるのにそのチャンスを僕はじっと待った。

もう待つことには慣れている、君がその手を伸ばすことを諦めないように祈ることしかできない自分が一番もどかしく感じようとも。


そしてついにその時が訪れる。

妖精は覚悟を決めたように、さらに結界を強めた。

もう僕には鱗にかけた魔法がほんの僅かしか伝わってこない。

だけど、触れてくれると思っただけで何故か全身が震えた。


小さな手がそっとそっと、僕の鱗に触れようとして、もう一度引っ込めて、覚悟を決めたように伸ばされた。


その瞬間をなんて言ったらいいのだろう。

誰か言葉にできるなら教えて欲しい。

それほどの歓喜が胸にあふれた。

番に触れるということはこういうことなのだろう。


同じようにその一瞬で、ここにいない彼女の歓喜が伝わってくる。



---見つけた!


そう僕は確信した。

その後、いくら魔法で気配ごと封印しようが、いくらすべての気配を眠らせようが関係ない。



見つけてしまった。

たった一人の僕の番。





どんな君でも会いに行くよ。さぁ鬼ごっこは終わりだ。







おかしいなぁ結構俺様予定で、ヤンデレ予定だったんですが、私の実力じゃこれまでです。

ちなみに学園に通ってた場合婚約破棄とかに、巻き込まれてたとかあったら楽しそうだなぁって思ったりなかったり。

短い話でしたが、読んでくれてありがとうございました!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] この二人の龍の出会った話が読みたいです(^-^) 引きこもりをどう攻略するのか気になります。
[一言] で、行ってみたら、まだ生まれてなかったー。ってなるのかしら?
[一言] 「僕」君ほんと苦労人。ヒッキー繋いでどうぞ。
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