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再興世界 ー冒険譚(サーガ)を残すは古代人ー  作者: 是竹一燐
純粋種再誕編
3/3

第二話 身の安全

 あれからしばらくして、俺はフィーネさんの家に着いた。

 道中は見慣れないものだらけで、街にはどこのRPGだよと言いたくなるほどの、美しい古風な建物が並んでいた。

 俺がオロオロしていると、フィーネさんがお茶を入れて持ってきた。

「それほど良いものではないけど、お口に合います?」

「わざわざどうも、いただきます」

 そうしてだされたお茶を飲みながらも、俺は頭の中がぐちゃぐちゃで、状況整理にかつてないほどに脳を酷使していた。

 さっき言われた俺がこの時代の人間じゃなくて、ここが未来だということは理解している。けれどなぜこんなにも科学文明が後退しているんだ? 本当に未来ならもっと文明が進んでいるはずだ。

 やっぱりからかわれてるのか? しかしそれではあの隕石について説明がつかない。

 もしかしてあの隕石で文明が滅んだのか? なら俺が生きているはずがない・・・・・・

 そんなふうに全力で考えていると、フィーネさんが俺に爆弾を投下した。

「ああ、それと今日はもう遅いし、泊まってもらうから。今は何よりもあなたがおかれた状況を理解することが先決だから」

 俺は飲んでいたお茶を吹き出しかける。こんな美人さんと一つ屋根の下!? まじですか。

 せっかく考えていたことが一瞬で真っ白になった。

 フィーネさんはそんな俺を見てくすりと笑い、そしてすぐに表情を引き締めた。

 あらためて美人な人だなあと見とれていると、フィーネさんは俺のおかれた状況を語りだした。

 正直信じられないような話ばかりでうまく飲み込めないが、要約するとこういうことらしい。



 ここはどこ?―→星霊歴(せいれいれき)1203年の遺跡都市グフタスという場所。


 星霊歴って?―→かつて星厄(カタストローフェ)によって世界が滅び、その後再度文明が興った際に作られた(こよみ)


 星厄って?―→数多(あまた)の星々が地球に降りそそぎ、生物の大半が死滅した厄災(やくさい)


 俺はなんで生きてるの?―→わからない。


 俺はどのくらい眠ってた?―→おそらく5千年以上。


 日本はないの?―→いまいる大地の地下に遺跡として眠っている。


 フィーネさんは何者?―→フリーの遺跡研究者で、今はグフタスを拠点にして、日本の遺跡を調べている。


 グフタスって?―→遺跡研究の拠点都市で遺跡研究者にとっての聖地。


 どうして日本語が通じるの?―→星厄当初は日本人が最も生き延びていて、それが共通言語として広まったらしい。



 どうやら本当にここは未来のようだ。ドッキリだとしたらここまでやる必要はない。理屈はわからんが俺は5000年以上も眠り続けていたらしい。

 俺がある程度理解したところで、フィーネさんが引き締まった表情で言った。

「どう? 自分の置かれた立場が分かった? あなたは滅びる前の世界を知る唯一の人間、しかも、なんでか知らないけど星厄を生き延びてる。だから、下手にあなたの事が知れ渡ると、あなたを狙うやつらがあらわれるわ。もし捕まったら、最悪、一生檻の中よ」

 そんなことは言われずともわかっている。俺も立場が違えば、そんな希少な生物がいたら捕まえるに決まっている。間違いなく金になるから。

 じゃあフィーネさんはどうして――

「ふふっ、どうして私があなたを手柄としなかったか気になってるようね。いいよ、教えてあげる。 それはね、あなたを実験材料(モルモット)にするのが忍びなかったから。同じ人間なのに物として扱われるのはおかしいと思ったからよ」

 ああ、俺は幸運だ。俺を見つけてくれたのがフィーネさんで本当によかった。捕まえるつもりなら最初から逃げないように捕獲するだろうし、フィーネさんは本当に俺のことを考えてくれている。

「フィーネさん、俺のことは(すい)ってよんでくれて構いません。あなたに会えて本当によかったです、ありがとう」

「当然ね、私じゃなかったらどうなってたか。感謝なさい、スイ」

 フィーネさんの顔は少し赤くなっていた。それが照れ隠しなのは俺にさえ一目瞭然であったが、それを指摘するのは野暮だろう。


 それから食事をとり、少し自己紹介をして、俺はフィーネさんから客室に案内された。

「そりゃあそうだよな。さすがに同じ部屋なわけないか」

 淡い期待を抱いていたがそれはあっさりと粉砕された。それにしても――

「世界が滅びればいいのになんて考えたけど、まさか本当に滅びるとは」

 独り言を言いながら、俺はベッドにもぐりこむ。

 まぁ、考えていてもしょうがない。フィーネさんという良き協力者がいるのだ、今後どのように生活するのか考えなくてはな。明日からどう行動しようか。そんなことを考えながら、疲れていたのか、あっさりと眠りに落ちた。




 一夜明けて、目が覚めた俺はリビングに向かった。すると、フィーネさんはもう起きており、朝食を作ってくれていた。

「おはよう、朝早いのね。もう少し時間かかるから、待っててくれる?」

 そう言うとフィーネさんは料理を再開した。献立はパンと牛乳と・・・・・・あれは卵焼きだろうか、うん、そのようだ。卵焼きはどの時代も共通のようだ、昨晩はシチューだったし、食事は割と変化していないらしい。食べることが大好きな俺にとっては、それは非常にうれしいことだ。

 そうこうしているうちに出来上がり、朝食をとることになった。


 朝食をほとんど食べ終わったとき、フィーネさんに訪ねる。

「フィーネさん、俺はこれからどうしたらいいんでしょう? いつまでもここにやっかいになるわけにもいきませんし」

 すると、待っていましたと言わんばかりにフィーネさんが立ち上がった。

「昨晩考えたんだけど、私にいい伝手があるの。私を雇ってくれてる人が結構偉い人でね、ちょっと変な人だけど、その人ならスイの身元を保証できるでしょうし、悪い人じゃないから。片づけたらお願いしに行くことにするよ。」

 フィーネさんはにやりと笑い、最後の一切れのパンを口にして、片づけを始めた。

 う~む、フィーネさんの知り合いならヤバイ人じゃなさそうだけど、大丈夫だろうか。なんか含みのある言い方だったんだが・・・・・・まあ、身元を保証してくれるのはありがたいし、ここは信じるとしよう。





「じゃあ、行ってくるよ」

 そう言ってフィーネさんが家を出てから、俺は女性の家に一人きりでいることを急に意識してしまい、悶々とした1時間をすごした。

 それから間もなくして、戸が開く音が聞こえた。フィーネさんが帰ってきたのだろう、どうなったかな? うまくいっただろうか? そう思い玄関に行くと、そこにはフィーネさんではなく、豪華な装飾が施された鎧の騎士が立っていた。

「スイ様ですね、(あるじ)より至急屋敷に連れてくるよう仰せつかっております。馬車を用意しましたので急ぎお乗りください」

 え? 馬車? 俺が乗るの? てか何この人。

「スイ~、早く乗って~。私が頼みに行った人の使いで、怪しい人じゃないから~」

 馬車から身を乗り出してフィーネさんが叫ぶ。

 え? こんな派手に行動していいの? 辺りの人たちこっち見てるけど。俺のことばれたらやばいんじゃなかったですっけ? 

「スイ様、ご安心ください。わが主が貴方(あなた)の身柄を保証することはすでに決まっています。そうなった以上、スイ様にはたとえ一国の王でも手出しはできません。これから馬車で主の(もと)へ向かうのは、ただスイ様と話をしたいという主の願い故です」

 と騎士が告げた――まじですか、たった1時間でそんなことができるのか。そんなすごい人に雇われてたなんて、フィーネさんってもしかしてすっごい有名人? そういや“隻腕のフィーネ”って二つ名持ってたよね、家も周りと比べておっきいし――

 よし、身の安全が保障されたのなら、人の目を気にする必要はないな。そう思って俺は馬車に乗った。

 そうして馬車に乗り込んだ俺は、フィーネさんと共にその雇い主とやらに会いに行くことになった。

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