悠久の眠りへ
俺の名前は池神翠、将来の夢は学者、好きなものはMMORPG、ごく普通の18歳だ。最近は家族との折り合いが悪くなって喧嘩をしがちだ。
最近は親の束縛がひどくなって友達付き合いにまで口を出されるし、加えて夢までバカにされている。
「そんな職業で飯が食えるか、いい加減夢を見るのはやめろ。医者になれ、医者に」
と言われて、挙句の果てに言うことを聞かないなら勘当だとまで言い出しやがった。
昔から現実主義者だったけれどここまでだったとは。
やがて受験が来るけれど俺はどうしたらいいのか、本当に困った。
ああ、家を飛び出してはみたものの、どこにも行く当てがない。
10月の半ばを過ぎた夜風は思った以上に冷たい。
「どうしようかな」
夜空を見上げた・・・・・・
きれいだなぁ。
このままいっそこのまま世界が滅びればいいのに、そんなことを考えてみる。
「あれ?――あんな星座あったっけ?」
ふと違和感を覚えた。見覚えのない星座が空に浮かんでいたのだ。
何だろうとスマホで調べるが、10月のこの時期にあんな位置にこんなにも明るい星はないとわかった。
もしかして新しい星座を発見したのかも、そう笑って、やっぱり勘違いだろうともう一度空を見上げた。
ん? ある。見間違いなんかじゃない! けど、ちょっと待てよ・・・・・・
確かにその星はそこにあった。けれど、さっきよりも大きく、一段と明るくなっていた――
それだけではない。翠が知ることはなかったが、このとき、世界各地で同じ現象が確認されていたのだ。
「まじかよ、すげーなおい・・・・・・ってちょっと待て、こっちに来てねぇかあれ」
その星は大きくなっていたのではなかった。ただ単にこちらに向かってきていただけなのだった。
え!? 隕石? 流星? どっちでもいいわそんなもん、こっちくんな。落ちてくんな。
俺は懸命に願ったが、それは叶わなかった。空はどんどん赤くなり、まるで太陽が落ちてきているかのようだった。
風が熱を帯び肌は焼けるようだ。
世界滅亡なんて冗談だったのに、本当になるなんて、まだやりたいこと一つもできてないのに。
そう思いながら俺はたった一つ、心から願った――
もし人生をやり直せるなら、今度こそしがらみに捕らわれることなく、好きなことを好きなようにしてみたいな。
星が目前に迫り、木々や建物が吹き飛ばされる中、翠は荒れ狂う熱風の中意識を手放した。
A long time passes
「ん、ふぁ~あ、あれ? ここどこだ?」