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よろず屋ステラにおまかせ!  作者: 零千
壱話
2/2

平凡にして非凡

私たちの住む世界、人間界のお隣には、ファンタジーでお馴染みの魔界が当然のように存在しています。

けれど数多あるゲームやアニメでありがちな、レッツゴー世界征服とかは今の時点では起きていません。



昔はそうではなかったらしいのですけれど、人間界の偉い人と、向こうの偉い人ーーーつまり、魔王様とが協定を結んだことから、私たちの交流は始まったそうです。



私たち人類と魔族と呼ばれる人たちが敵対していたのは、もう今となっては大昔の話。

今現在、人類と魔族は手を取り合って暮らしています。

向こうから出稼ぎや観光に来る人も多く、またその逆も然り。今や魔界と人間界はご近所感覚で訪れる事ができます。



ですが、ここで大問題がひとつ。

魔族は、普通の人間の目には見えないのです。

いえ、見えることは見えるのです。



人間の姿に「化けた」状態で。



大昔に交わされた協定の中には、魔族は人間の姿に化けて暮らすこと、と記されています。

これは、人間側の偉い人が提示した条件らしいです。なんでも、人間を怖がらせないように、とのことですが、本当の事はわかりません。



それに人間に化けるなど、いくつもの魔法を扱える魔族にとっては造作もないことです。



そりゃあ数多の種族がいる魔族ですから、化ける人間の姿もまちまちです。基本的に見分けはつきません。ええ、つかない……はず、なんですが……。



どういう訳か私には、それが見えてしまうのです。それこそ、物心つく前からです。

どれだけ精巧に化けようと、どれだけ手を尽くそうと、私には見えるのです。視えてしまうのです。



魔族の皆さんが嫌いな訳ではありませんけれど、突然目の前に現れたり、横に並ばれると結構来るものがあります。常時お化け屋敷にいるような感覚です。



いや、だって、ちょっと想像してみてくださいよ。

エリートサラリーマンしてるリザードマンとかセーラー服着てプリクラ撮ってるゴブリンとか奥さまの井戸端会議に混じってるフリルのエプロン付けた餓者髑髏(がしゃどくろ)とか。



怖い云々よりシュールすぎるでしょう。餓者髑髏の時は本気で二度見しましたけど。こんなものが常時見えるんですよ?テレビ越しだろうと写真越しだろうと見えるんですよ?見えなくなりたいと何度思ったことでしょう。



今をときめくトップアイドルが実はスケルトンだったとか知りたくなかった。隣の席の佐藤さん実はスライムだとか知りたくなかった。

いや、本当にシュールすぎて怖いです。普通の人間なら見えないですが、私にはこのカオスがバッチリ視えます。24時間365日年中無休で見えるとかそれなんて罰ゲーム。



魔族が見えるせいで、周りから白い目で見られることも多々あります。昔はそのせいで友達もおらず、周りから孤立していました。



だから私は、この目のことをずっと秘密にしてきました。妹も、もういない、両親も知らないことです。私が、私だけが知る秘密です。

きっと両親は、気付いていたのかもしれません。でも、拒絶はしなかった。私や妹を、たくさんの愛情で包んでくれた。

荒んでしまわなかったのは、両親のお陰かもしれません。

だからこそ、家族には迷惑をかけたくなくて、ずっと黙っていたのです。



そして、私がこの目の事を秘密にする最大の理由。



それは、ちょっと、いや、かなりヤバイ系の人たちに目を付けられることがあるからです。どれくらいヤバイかと言うと、そりゃあもうヤーさん並みにヤバイです。やばやばです。

しかもそれは、人間と魔族の両方から、と来たもんです。やれやれです。


見えることがバレたら目をつけられる理由。

言ってしまえばそれは、人身売買の片棒を担がせる為。


魔族は鑑賞用として人気が高く。

人間は食料用として人気が高い。


だから一部の魔族は人間を拐う。

だから一部の人間は魔族を拐う。


何て言ったって、そりゃあもう、目玉が飛び出るくらい高い値段で売れるから。

拐うだけで高額料金貰えてウッハウハ。一生遊んで暮らせるお金が手に入るのです。


だから、平和条約からなん十年も経った今でも、魔族や人間の行方不明率は高いとか何とか……。



平和に見えるその影で、そんな黒い噂があるのです。

火の無いところに煙は立ちません。だから、少なからず、そういう現実があるのでしょう。

悪習という言うやつかもしれません。

黒歴史と言うやつかもしれません。



人間と魔族は、分かり合えないのだということなのでしょうか。ため息を溢したくなるような、嫌な事実です。



さてさて。なぜ私がこんなくっっっっっそ長い前口上を入れたのかと言いますと。それこそ話が長くはなるのですがあえていいましょう。



目の前にはチンピラ風のファッションをしなすった、ゴブリンと、スライム。

はい。ファンタジー界ではお約束な魔族さんです。それが今、私の目の前にいるのです。

見てます。ものすごくこっち見てます。



単刀直入に申し上げます。

誰か助けてくださいお願いします。

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