胸焼けする夏。浴衣美女殺人事件。『前編』
彼女の手には薔薇の花束。
「実は私。とある人物につけ回されているの。どうしたらよろしいので?」
わぁ、綺麗な花束。ねーヒロアキ。どうやって飾る?事務所の窓口にしようか?」
俺にそんなこと聞かれても困る。何故なら、俺は今、イベントのバイト中、汗だくでウサギの着ぐるみをとったところだ。
自分の車のバッテリーを確かめようと、屈んだところだ。良し、上がって無いようだ。
俺、少しニヒルな表情で。
ボンネットに挟まったまま。
「その花、押し花にする?お風呂に浮かべる?」
ここはとある探偵事務所の駐車場。
俺の名はヒロアキ、話せば長くなるが探偵事務所を開いている。今日は夏祭りの予行練習の為。小さいお子様に喜んで貰おうと、一稼ぎしているところだ。
相方のモナコは少し拗ねて、依頼人の話を聞いている。ふざけている俺に向かって不機嫌な様子で。
「…もう!!知らない!!一生挟まっていろ!!」
舞台はとある商店街。一人の男が女性の後をついている。もうすぐ夏祭りだ。この女は参加するのだろうか?
黙って見ていると小銭を落としたようだ。
そして、自宅に入って行った。
「私の車でどこかおかしい点はありましたか…?」
「いや。特に何も」
依頼人である彼女も覗きこむ。
「有り難う。助かったわ。丁度、双子の妹と一緒に旅行に行く予定があったの…まあ、先日、自動車事故で無くなったのですけどね」