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第81話 ※番外編※ジュドーさん&エルザさんの語る事

幼いころの私は、病弱でした。原因が分かったのは4才の時ですね。どうやら神夢を見て、神々の気にあてられて高熱を出していたようです。理由が分かって両親は安心したようでしたが、私が将来神官になると言う事が決まった瞬間でもありました。

神官になりたいものは沢山います。ですが、神官になりたいと思わなくても神夢を見れるものは神殿の配下に置かれるのです。まぁ、私の場合、特に将来なりたいものがあった訳でもないので構わなかったですけれど。


原因がはっきりしたため、私は神夢と自分を切り離す術を知り高熱にうなされる事も無くなりました。

元気になると、それまで熱を出すからと遊ばせて貰えなかった分を取り戻すように、陛下と泥だらけになりながら遊んだり、悪戯の片棒を担いだりしてましたね。


私はなんとなくですけど、人の気持ちが読めるんです。

強い気持ちであれば、肩のあたりに映像として見える場合もあります。これを知っているのは陛下とミーシャだけですけど。しかもこの2人と、ミオン様の気持ちは何故か見えないんですよね。

だから、男の子達が自分の感情を理解できなくてミーシャの気を惹く為に悪戯しようと思ってるのとかが見えるんですよねー。好きな子に意地悪するというアレです。

だから、ミーシャが女の子と家で遊ぶ以外の時は連れて歩きました。

私と陛下が一緒に居るのにチョッカイ出そうと言う馬鹿はいませんからね。


学院に通っていた頃もそれは変わりませんでしたよ。ミーシャに興味がある男の子に釘を刺しに行ったり。何故か大体それで諦めるんですよね………そんな根性無しは妹の恋人として認めませんが。

ミーシャも大人になったし、流石にそこまで露骨に護ったりしませんが気持ちの上では今も変わりません。ミーシャには幸せになってもらいたいんです。


だから今回の事はちょっと困りました。

昔の私だったらリン殿を認めないと言ったかもしれません。ミーシャを泣かしたんですからね。

でもまだ2人が好き合ってるようなのは分かりました。だから、ここは我慢して見守る事に決めたんです。


余計な口出しは大きなお世話な気がして。現に私も叔母たちの攻撃に辟易していますし。

昨日も、お茶に呼び出されて行ったら見知らぬ女性が3人いて見合いの席だと言うのが分かりました。

どの女性もお綺麗でしたけれど、心の中は………。

私に対する執着。家柄にや身分に対する執着。女性同士牽制し合う醜い争い。

何も食べてないのに胸焼けしました。

私は早々に仕事を理由に逃げましたよ。無理です。あんな空間。誰が居たいと思うものですか。


そんな事を考えて歩いていたら、エルザ殿と会いました。

エルザ殿は、ミーシャとも仲が良く、昔から知っているのですが、私に全く興味を示さないので気安く付き合える数少ない女性の1人です。

どうやら目的も同じようなので私は声をかける事にしました。




私が騎士になりたいと思ったのはまだ幼いころ、兄達とごっこ遊びで騎士をやった頃からだったと思う。男勝りな私は負けん気が強く、兄に負けるのが悔しくてしょうがなかった。

両親は、女の子らしくしようと思ったらしく、最初は私を女子が作法や一般教養を学べるレンカ校に押し込んだ。そこでは息がつまるような毎日だった。

私らしさを否定され削り取られて行くような気持ちがしたから。

制服も動きづらかったしな。スカートなんて着たのは制服が初めてだ。

そんな私を理解して、助言をくれたのはミーシャだ。

私達は仲良くなり、騎士になりたいと言う意志を貫く為、ジュマロ校に転校した際も友人として応援してくれた。


いずれ陛下の隣に立つ妃殿下に御仕えするのが私の夢だった。

正直、転校した頃はその夢が白鳥騎士団団長という形で叶うとは思わなかったけれど。

元々素質があったのか好きな気持ちが高じて芽が出たのかは分からないが、その頃には兄弟の誰よりも強くなっていた。

兄や弟には「これは嫁の貰い手がないな」と良くからかわれたものだ。

構うものか。私だって強い男でなければ興味もない。


私の理想は自分より強い男だ。そうなるとこの国には陛下かラムザしかいなくなるのだけれど。

陛下にはミオン様がおられるし、ラムザはなぁ………。お互いに全く男友達のような感覚だしな。

筋肉達磨なのも気に食わないし。

両親は何度か見合いをさせようとしていたけれど、今はもう匙を投げたようだ。

私は多分、結婚しないで過ごすのだろう。

少し寂しいような気もしたがそもそも好きな男がいないからな。

それに殿方の方でも自分より強い女なんて興味が持てないだろう。


まぁ、今は私の事よりミーシャだな。ウェリン殿と何かあったらしく最近2人ともぎこちない。

ミーシャに至ってはウェリン殿を避けてさえいるようだ。

おおよその事は噂になっているんだが、噂が全て真実ではないからな。

どうしたものか………。しかし、ミーシャが言いたがらないので今は静観するしかない状況だ。

そんな事を考えていたらミーシャの兄上、ジュド―様に声をかけられた。

どうやら、目的地は一緒らしい。


「エルザ殿もミオン様の所ですか?」


「えぇ。奇遇ですねジュド―様」


お互い持った花束を見つめてそう話す。

ミオン様は眠ってらっしゃっているのだが、私達親しいものは陛下に許可を貰い時々こうやって花を持ってお部屋に伺うのが日課のようなものだ。


「その………ミーシャは大丈夫ですか?」


私は気になっていた事を聞いた。


「あまり大丈夫じゃ無いようですが、こう言う事は時間が解決してくれるのを待つしかないと思いますね………リン殿はミーシャを泣かせたので少々減点ですが」


では噂はほとんど真実なのだ。


「………減点ですか」


「減点ですよ? まぁミーシャが彼を好きな限り挽回の余地はありますけど」


苦笑して仰るジュド―様。


「意外ですね。もう少しお怒りになるかと思ってました。昔みたいに」


昔、ミーシャを泣かせた男子をジュド―様が殴りに行った事件があったよな、と思い出す。


「私も大人になったんですよ。病弱な母にまるで遺言のようにミーシャを頼むと言われて育ったもので………今まで過保護に守って来たのですけどね。生きてる以上、絶対に泣かせないとか無理なんですよ。逆に泣く事が必要な時もありますしね………そう言えば、ラムザ殿は大丈夫ですか?」


ミーシャの話からいきなりラムザが出てきて正直驚いた。


「ラムザですか?そう言えばあいつも落ち込んでいたな………」


「彼は少し間が悪いタイミングで余計な事をリン殿に言ってしまったらしくて」


話によると、たまたま陛下の執務室に寄った時、盛大に落ち込んだラムザと苦い顔をした陛下とレンブラント殿がいたらしい。「いいから謝れ。兎に角謝れ。謝り倒すんだラムザ」と陛下に言われていたようだ。その後、ウェリン殿の自宅に謝りに行ったらしいが………。


「成る程。ミーシャの事で落ち込んでるだけじゃ無かったんですね。あいつらしいと言うか………仕事上ではしっかりしていて優秀だし頭も悪い訳じゃないんですけどね………それ以外が鈍いと言うか………間が悪いと言うか………」


困った顔でそう言えばジュド―様も納得したようで。


「確かに、ありますねぇ。彼の事が好きだと言う令嬢がいましてね。頑張ってアプローチしていたんですけど何と言うか本人全く気付かなくて………諦めて別の方と結婚しましたよ」


思いだしながらジュド―様が話し、私は呆れた溜息を吐いた。


「勿体無い。まぁ、ミーシャの事が好きだったからかもしれませんが………」


「いや、自分の気持ちに気がついたのは、あの森の中でミーシャとリン殿が想い合ってるのに気付いた時ですよ」


やけに確信を持ってそう話される。


「………本当に鈍いなアイツは………」


何だか可哀想になってきたぞ。


「そう言えば、陛下が心配なさっていましたよ? エルザ殿は誰とも結婚しない気かって」


「私ですか?!」


「自分より強い男性が希望なんですよね。そう聞きました」


成る程、そう言う事か。私より強い男は限られているしな。


「それは中々難しいと思うのですが」


「皆に良く言われます。自分でもそう思うんですけどね」


苦笑しながら言うと綺麗な顔で微笑まれた。


「だったら武術に特化して強い男と思わなければいいのじゃないですか?」


「と、いうと………」


「例えば心が強い人とか。それならどうでしょう?」


ジュド―様にそう言われて確かに、と思う。強いと言うのは身体的にというだけじゃなくてもいいかもしれない。


「折角美人なんだから、勿体無いですよ」


さらりと言われて思わず赤面する。


「それはどうかと思いますが………私だけが好きになっても相手が強い女は嫌だと言うかもしれませんよ」


そう言うと一瞬キョトンとした顔をなされてから頷かれた。


「あぁ、それなら貴女が「強い男が」と言わなくなれば平気だと思いますよ。学院時代エルザ殿は人気がありましたからね。ただ、その話を聞いて諦めた男子が多かったんですよ」


そんな話、初めて聞いたが………。なんだか恥ずかしくなってきたので話を変える事にする。


「………私の事は置いておいて、ジュド―様こそどうなんですか?女性は貴方を放っておかないと思うんですが」


「中々、私自身を見てくれる方がいなくて。あからさまに身分狙いの方達ばかりなんですよ………正直疲れました」


そうなのか………それは流石に疲れるかもな………。

そう話すジュド―様の顔は目が死んでいる。相当辟易しているようだ。


「エルザ殿のように私の事を普通に見てくれるような方ならいいんですけどね」


社交辞令でも、その笑顔で言われると少しドキリとした。

無駄に美形なのだ。この方は。探せば身分狙いじゃない女性も沢山いそうなのにな。

結局は当人にその気がまだ無いと言う事だろう。

正直、私などよりこの方が結婚しない事の方が勿体無いと思われた。

ジュド―さん笑顔の裏はこんな性格です。女性が苦手な理由はこんな感じでした。

エルザさんは理想の男性像に修正をいれた模様。これで婚期が近づくのか?

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