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第80話 ※番外編※ラムザさんの語る事

王立学院は広大な敷地の中に4つの学校があった。俺達の通っていた貴族の男子が通う本校、神官になるものが通う神学校、貴族の女子が通うレンカ校に騎士や護衛官になりたい貴族の女子が通うジュマロ校。中庭は一緒だが、それぞれ校舎が違う。

そんな王立学院に居た頃の俺達下級生の憧れは陛下達だった。


まずはレンブラント殿。

メルフィ殿と正式に婚約した頃からは女子からの人気はイマイチだったが、文官を目指す貴族の男子は彼に憧れている者が多かった。冷たく見えるが下級生の面倒見が悪い訳でもない。当時は寮長もされていたしな。皆からの信頼は篤かった。


それからジュド―様。

神学校に通っていたため俺は直接知る機会が少なかったが、下級生への面倒見も良く神学校の生徒からも慕われていたと聞く。それに他校の生徒が良く知る程、彼は女子に人気があった。

甘いマスクに優しい笑顔。高位貴族で末は神殿での出世も見込める神官様だ。人気が無いはずがない。


反対にやっかまれていたのはウェリン殿。

飛び級して陛下やレンブラント殿と同じクラスだったしな………。大抵の男子は彼を羨ましく思い、最初の頃は意地悪されている事もしばしばだった。

俺はそんな事には頓着しない性質だったので見かけると助ける事もあったが。

まぁ、そんなやっかみも次第に薄れていったけれども。それは当人の人柄のなせるせいだろう。

最終的には多くの下級生に慕われていた。


そして、男女ともに憧れている者が多かったのが陛下だ。

恰好良いのだ。何をなさっても。まぁ、顔もそうだが………。

文武に秀で、特に剣の腕は先生方が舌を巻くほどだった。幼いころから精神鍛錬のために剣を習わされていたと言うがそれだけが理由じゃないと俺は思う。天性の才と言うやつだな。

武官を目指す下級生の男子は皆こぞって陛下に憧れた。

いつか陛下のもとでお役に立ちたいと。

女子も呪いがあるから陛下と結ばれる事はないと言うのに、その「結ばれる事が無い」という悲恋の感じが良いらしく憧れているものが多かった。

時々見せるどこか子供っぽい悪戯心も陛下の魅力として認識されていたように思う。


女子で人気が高かったのはエルザとミーシャ殿だ。

と言っても、エルザは女子からの人気の方が高かったが。「お姉さま素敵!」という感じで。

男子は正直、自分より強いエルザを苦手としているようだったな。

美人なのに勿体無い事だが。

エルザ自身も自分より強い男がいいと公言していたし、それで諦めた男子は多かったようだ。

エルザのような跳ねっ返りを御すのは中々難しいと俺は思う。度量の広い人物か、逆に尻に布かれるタイプがいいんじゃないか? あぁ、でもそれだとエルザより強いと言う条件に当てはまらないか。


男女共に人気が高かったのはミーシャ殿だ。

俺も憧れていた内の1人だが。

だが、ミーシャ殿自身は、自分が男子に人気があった事を知らないと思う。

ジュド―様が牽制してたからな。

優しく、お淑やかなミーシャ殿と付き合いたいと思う男子は大勢いた。

当時の俺は見ているだけでいい憧れの気持ちで見守っていたが。告白しようとした男子の多くは、ジュド―様の「泣かせたら………わかるよね?」という笑顔付きの言葉に萎縮してしまうのだという話を聞いた。笑顔なのに目が笑ってないのが怖いらしい。


そんな俺がミーシャ殿への気持ちが憧れじゃ無く恋だったのだと気付いたのは、ミーシャ殿がウェリン殿の事が好きだと分かった瞬間だった。

自覚と同時に失恋とは………なんて間抜けなのだ、俺。

そんな感じで最近溜息を吐く事が多く、妹のシャスタに「気持ち悪いです。お兄様」と言われ更に凹む。


「一体全体なんですの? お兄様。溜息ばかり吐いて。失恋でもなさいました? ………図星ですか」


我が妹は容赦という言葉を知らないらしい。グリグリと傷口を抉ってくる。


「失恋位なんですの。女々しいですわね。大きな図体をして」


お前だって、ウェリン殿に好きな女性がいると言った時、大泣きしただろうが。

「酷いっお兄様っ!!」と言って俺を殴り部屋に籠った次の日にはもう復活していたが。

女は逞しいなぁ。


「こんな所でウジウジしてないで下さい。サッサと出仕して、お仕事に専念すればいいんです」


要約すると仕事に専念して失恋の事は忘れろと言う事だ。

一応気遣ってはくれるらしい。


「そうだな………行って来る」


妹に追い出される形で城に向かった。城につけばいつもと変わらぬ日常がある。

今日は陛下が王立学院を視察されるのでそれに護衛としてついて行った。

城の執務室に戻って、レンブラント殿が立ち去ると、陛下が真剣な顔をなさって俺を見る。


「ラムザ………理由は分かるがその溜息何とかならんか?」


陛下に苦情を言われる。理由は分かるのか………。


「済みません陛下………はぁ………」


「済まんが、こればかりは俺には何もできんからな………お前が気持ちを切り替えるのを待つしかないと分かってはいるんだが………段々回数が増えてるぞ?大丈夫か」


「俺………自分が情けなくてですね………ミーシャ殿とウェリン殿が両想いだと気付いた時に自分の気持ちを自覚したんです」


盛大に溜息を吐くと、陛下が呆れた顔をなさった。


「お前、自覚してなかったのか」


「自覚してなかったんです。憧れているだけだと思ってました」


悩んだ顔の陛下が言葉を続ける。


「いっそ、ミーシャに想いを告げてきたらどうだ?」


「ミーシャ殿が困ると分かっているのにですか?無理です」


「………だが、気持ちが未消化のままだから未練になるのじゃないか………」


「分かってますよ。分かってはいるんですけどね………」


想いを告げれば楽になると言うものでもない。

責任感の強いミーシャ殿の事だ。断った俺に対して申し訳なく思うはず。関係が気まずくなるのはご免だった。そう陛下に告げると、納得された。


「確かにミーシャなら要らん所に気を使いそうだな………なら他の方法を探せ。このままでは仕事に支障が出そうだ」


待っていてやりたいのは山々だが、と陛下。

確かに。俺が溜息吐くたびに学院長がオドオドしてたしな。


「分かりました。早急になんとか………します」


「あぁ。頼んだぞ」


そのまま陛下の部屋を辞した。

気分転換に裏庭に行くとなんとそこにウェリン殿が………。

なんだろう、ウェリン殿もどこか元気がないようだ。


「奇遇ですね」


何処か疲れたように声をかけられた。


「いや全く。奇遇ですな」


暫く沈黙が続く。

その時、ひらめいた。ウェリン殿にこの気持ちをぶつけよう、と。


「ウェリン殿………男としてお願いがございます」


「………なんでしょう?」


訝しげに聞いてくるウェリン殿に力強く訴える。


「ミーシャ殿を………ミーシャ殿を幸せにして下さい」


肩をがっしり掴んでそう懇願した。


「何をいってるんです?!」


私がそんな事できる訳がないでしょう、と言うウェリン殿。


「貴方でなければ駄目なんです!」


ガクガクとウェリン殿を揺さぶりながら言う俺に戸惑ったウェリン殿の声がかぶさる。


「いきなりどうしたんですラムザ殿」


戸惑うウェリン殿に俺は言葉を続けた。


「今は分からなくてもいいんです。でも、約束して下さい。ミーシャ殿を泣かせないと」


そう言った所でウェリン殿の顔がこわばりました。


「………済みません。私にはそんな資格ないんです………」


そう言って俺の事を振り切るとウェリン殿は怒ったように立ち去って行く………。

確かに不躾だったとは思うんだが、いったいどうしたんだウェリン殿は?

そんな疑問が解けたのは後日で、俺は最悪なタイミングでウェリン殿にこの話をしたんだと知りました。はぁ。俺ってやっぱり馬鹿ですかね。






突っ走ってやらかしてしまったラムザさん。

気持ちがふっきれるのはもうしばらくかかりそう。


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