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第76話 ※番外編※レンブラントさんの語る事

私が陛下と初めて会ったのは貴族の子弟が通う王立学院でした。

今思えば、恐れ多い話しですが当時は学院の方針で名前で呼ばせていただいていました。

ジュド―殿やミーシャ殿には及ばないですがそれなりに長い付き合いになるはずですね。

学院ではそれなりに馬鹿な事をしたし、年相応の少年だったように思われます。

私には幼馴染で許嫁のメルフィがいます。しかし、婚約に至るまでは正直順調とは言えなかった………。それを救ってくれたのも陛下です。

メルフィの家の家格は高くありません。

なら何故私と許嫁になったかと言えば、祖父が決めたからでしてね。

祖父と言う人は昔、メルフィの祖母と恋仲であったのですが周囲に反対されて引き離されたのです。

ですから本当は父と、メルフィの母を結婚させたかったらしいのですがその頃は私の祖母の反対にあい断念したと………。

なので祖母が亡くなってから産まれた私とメルフィに白羽の矢が立ったのでした。

上位貴族の本家の長男が下位貴族の娘と許嫁とされるのに誰も反対しなかったのは祖父が全ての実権を握っていたためです。恥ずかしい話、逆らえば遺産が入って来なくなると皆が祖父の言う事を聞いていましたね。それは私の父母も同様です。

私は幼いころからメルフィと結婚するのだと教えられて育ち、メルフィもまた同様に育ちました。

幼い恋心ではありましたが、2人でいればとても幸せな頃だったように思います。

それが変化したのは祖父が亡くなった15才の春………。

煩く言う祖父が亡くなった事で、両親も親戚も欲を出しはじめたのです。

陛下とご学友である私の将来は当時からかなり有望視されていましたからね。

祖父が亡くなった事を聞いて色気を出した多くの上位貴族が、私と自分の娘を結婚させようとあの手この手で両親や親戚に働きかけはじめた事で歯車が狂い始めました。

結果、私とメルフィの許嫁と言う関係は1度白紙に戻される事に。それでも私はメルフィを手放す気などありませんでした。メルフィには貴族の子女から嫌がらせもあったようですが………それでも彼女は私についてきてくれたし、私も他の誰かと婚約する事を拒否し続けましたしね。

ある時、業を煮やした父が圧力をかけてメルフィを狸爺の後妻にしようとする事件が起こりました。

その時、私の相談を日頃から聞いてくれていた陛下が、前王陛下に窮状を仰ってくれたのです。

本来なら、陛下が臣下のましてやその子供の結婚問題等に関わったりしません。

しかし、なんの奇跡か前王陛下は手を差し伸べて下さりメルフィを前妃殿下の従兄妹にあたられるディレン伯の養女にするという離れ業を使って周囲を黙らせて下さいました。

その日から私の目標は前王陛下と陛下に仕えるに相応しい人間になる事に決まったと言えましょう。

父とはその日以来和解していません。あちらがどう思おうと一生許す気もありませんが。


陛下がいよいよ花嫁を異界から召喚されると言う日はとても晴れた日でした。

妃殿下を迎え入れる準備で数日前から城は慌ただしい様子。

メルフィも楽しみにしているようです。

しかし、期待の気持ちとは裏腹に、陛下の花嫁として召喚されたのは異種族の少女でした。

陛下の混乱ぶりはもちろん、他の者たちも内心混乱していたに違いないでしょう。

平静を保っているように見えるジュド―殿ですら表に出ない動揺を押し隠しているようでした。

正直に言いましょう。私は最初ミオン様を認める事は出来ませんでした。

公平に見る努力はしていましたが、異種族の少女では陛下の御子は望めまいと思ったからです。

仮にできたとしても、両親のどちらかだけに似れば良いですが混ざればどんな容姿になるか考えもつかないでしょう?それは怖ろしい事のように思えました。

古参の古狸………同僚の大臣の中には、あからさまにミオン様を馬鹿にするものもおり、更にはミオン様に対しての不信も多かったのもこの頃です。

私は、神々が間違えてミオン様を選んだのではないかと思っていましたし事実、そのような事を陛下に言ったように思います。

そんな私の認識を完全に変えたのはメルフィの言葉でした。


「私、『ミオン様を見守る会』に入ったのよ?」


「何です?それは??」


「だから『ミオン様を見守る会』よ!発起人はジラルダ様なのだけれど、実質はミーシャ様とヨランダ様が中心ね。他にも厨房の料理人さん達は全員入っているし、エルザ様や他にも大臣の奥方達も多数入ってらっしゃるのよ?」


正直驚きました。いつの間にそんな会が出来上がってメルフィが入る事にしたのかと。


「ミオン様って凄いと思うの!見ず知らずの異世界に1人いらして………この世界に馴染もうと一生懸命努力なさっているわ!!私にはとてもできない。きっと困って泣いてしまってばかりで勉強しようなんて考えられないと思うの。ミオン様の事酷く言う方もいるけど、私はそうは思わない。ミオン様には幸せになって頂きたいわ」


メルフィのこの言葉に私は気付かされました。今までただ公平に見よう見ようとするだけで私は理解しようとしていなかった。ミオン様がどんな重責をいきなり与えられてここにいるのか………私は陛下の心配をするだけでミオン様がどれ程頑張ってらっしゃるかを見ていなかったのです。

それから私のミオン様に対する認識が少し変わりました。ただ公平で中立であろうとするのではなく、妃殿下としての振る舞い………例えばどんな時でも笑顔を絶やさぬようにしている所などを見るにつけ、私いつしかミオン様を形だけではない妃殿下として受け入れていたのです。


「今日は、お茶会だったな?」


陛下の言葉に私は頷きました。


「はい。メルフィが楽しみにしていましたよ?随分前からミオン様に傾倒していましたからね」


「そうなのか?」


いつの間に?という陛下に笑顔で答える。


「ええ。『ミオン様を見守る会』の会員だそうです」


「なんだそれは?」


「そういう会があるんだそうですね。今はかなりの大所帯らしいですよ?陛下の呪いを解いてのロマンスで会員になりたい女性が急増中で困っているらしいですが。あくまでミオン様を慕う者の集いなのに今、会員になりたがっている女性はミオン様の本来の素晴らしさを理解してないと怒っていました」


「そ、そうなのか………」


困惑する陛下に苦笑する。私も聞いた時は戸惑ったものですから。

今日の執務はもう終了し陛下はミオン様を迎えにいらっしゃると言うので私もお供する事にしました。私もメルフィに会いたいので。

途中、庭師に花を分けて貰い花束をつくります。


「相変わらずマメだなレンブラント」


「メルフィは花が好きなんですよ陛下。メルフィの家の庭、綺麗でしょう?あれは彼女が世話しているんです」


花の世話をするメルフィの姿を思い浮かべて思わず顔が緩みます。


「お前、メルフィ殿の話になると表情が豊かになるなぁ」


「愛してますので」


言った俺が馬鹿だったと言われましたが、愛しているものを愛していると言って何が悪いんでしょうね?そんな事を話しながらメルフィの家へ。


「あっ、ディーさん!お仕事終わったの??」


可愛らしくか駆けてくるのはミオン様です。どうやらお茶会も丁度終わった所らしいですね。

ミオン様の尻尾は半ば位まで伸びたようですが、それをドレスと同じ生地で作った袋状のもので隠しています。陛下に聞いた所、まだ人に見せれる状態じゃないとミオン様がおっしゃっているとか。

お茶会の参加者はミオンさまとミーシャ殿、エルザ殿とメルフィというささやかなものです。

メルフィがとても嬉しそうなのでお茶会は成功だったのでしょう。


「メルフィさん、今日はお誘いありがとう。とても楽しかったよ。また誘ってね?」


「はい。是非いらして下さいませね。私も今日はとても楽しかったですわ」


どうやら、仲良くなれたようですね。私としても嬉しい話です。

挨拶と共に陛下やミオン様が帰って行かれ庭園には私とメルフィだけが残ります。


「メルフィ」


そう言って花束を差し出せば綻ぶ愛しい女性ひとの顔。


「ありがとうレンブラント」


今日も可愛い花束ね!そう喜んでくれる顔が見れるのは嬉しいですね。


「お茶会は楽しかったようですね?」


「ええ!私、ますますミオン様の事が好きになってしまったわ!!」


「それは少し妬けるな」


引き寄せてそう囁けば、馬鹿ね………と一言。でもその耳が赤くなっている事を私は知っています。そんな所も可愛らしい私のメルフィ。私はそっと口付を落とすと、メルフィを抱きしめました。

おずおずとメルフィの手が私の背中にまわります。

私達の結婚式は陛下とミオン様の結婚式が終わってからと決めてありました。ミオン様には早く変化して頂いてとっとと陛下と結婚式を挙げて頂きたいものです。私達の幸せのためにもね。


76話です。.5でも、ただの番外編でもなく………。

内容はレンブラントさんの回想が主ですが、読んで頂ければ分かる通り、お話が微妙に進んでいます。この調子で少しずつ進んでいく予定なので一応、話数は通常どうり刻まれていくと言う事で………。

書く予定の人物を書きだしたらかなり多くなってしまったので調整が必要そうですが………。回想の中だったり何処かしらにちょこちょこ深音とディーさんは出てきます。

気になるあの2人も進展するかも………?

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