第74話 あっとい言う間に終わりました
宴は何だかんだであっとい言う間に終わりました。
でも最後の方でねぇ、ローテンポの曲になった時ディーさんと少し踊ったの!
リズム音痴じゃないとは思うけど、如何せんステップ覚える時間が無かった。だから諦めてたんだよねえ………。ディーさんと踊るの。だからとっても嬉しかった。
この曲はステップとか関係なく、寄り添いながら身体を揺らす、チークダンス見たいな感じ?頬は寄せませんが。曲が雰囲気があるせいかカップルっぽい人達が踊る率が高かった。それもそのはず、結婚済み未婚関係なくパートナーがいる人専用の曲だったらしい。
ディーさんが私と踊りたくて曲をねじ込んでくれたみたいだけど。「これなら大丈夫だろう?」とディーさんに聞かれて私は嬉しさを隠さずに頷いた。もー!!ディーさんたら!!!
次の日は昼まで爆睡。午後は帰国ラッシュ。2、3日街に滞在して観光して帰る人もいるみたいだけど多くの人はお仕事あるしね。挨拶されて早々に帰ってゆきました。大変だなぁ。
今はそんな慌ただしさがひと段落したお茶の時間。
「昨日はどうだった?ミーシャさん??」
もう~!!!気になって気になってしょうがなかった事を聞く。だってミーシャさん昨日の事全然話してくれないんだもの。
「………ミオン様は知っておられたのですか………?その………エスコート役がウェリン様だって………」
「あー………ゴメンナサイ知ってマシタ」
痛い所を突かれて謝りつつ上目づかいでミーシャさんを見る。
「教えて下されば良かったのに!酷いですミオン様!!」
泣きそうな顔して怒られました。
真っ赤になったミーシャさんが言う事には心の準備もないままにリン先生がエスコート役と知ったミーシャさん。頭真っ白になって暫く動けず、動いたら動いてでドレスの裾を踏んで転びそうになってリン先生に助けて貰ったものの、その密着具合に耐えきれず何を口に出したか覚えてないと………。
かわいい。
見たかったなぁ、そんなミーシャさん。
「俺がミオンにミーシャには秘密だと言ったんだ。そう責めてやるな」
「なら酷いのは陛下ですわ!!」
ちょっとむくれながらそう言うミーシャさんが可愛い。
「楽しくなかったのか?」
ディーさんは眉をちょっと上げてそう一言。
「………楽しかったですけど………心の準備が欲しかったですわ」
溜息を吐きつつミーシャさん。
それから、リン先生がエスコート役としてどんなに紳士で素敵だったかと言う事をミーシャさんはモジモジしながら話してくれた。一緒に踊る事が出来て夢のようだったと。どうやら想いはより深くなったらしい。ケド。
「私は嬉しかったのですけど………陛下のご命令でしょう?ウェリン様にとっては………ご迷惑だったんじゃないかと思いまして………」
しょんぼりとそんな事を言うミーシャさん。
「「いや、それはないと思う」」
思わずディーさんと言葉がかぶりました。リン先生も嬉しかったと思うんだけど。ガチガチに緊張してましたが。だって長年思い続けてきた女性と恋人のように一緒に居られるんだよ?嬉しくない男がいるものか。まぁ、見てるこっちが恥ずかしくなる位お互い緊張してましたが。
―――早く緊張が取れればいいんだけど。
「………そうでしょうか………?」
「はぁ。一昔前なら国王権限で結婚させてる所なんだがな」
溜息を吐くディーさん。このやり取りにちょっとお疲れです。
「政治的に私の家とウェリン様の家が姻戚関係になる事に意味があるのは分かりますけど………」
少し拗ねたように言うミーシャさんに更に大きな溜息を吐いたディーさんが言葉を続けた。
「違う。似合いだから言っている。政治的な意味など付加価値に過ぎん」
似合いと言う言葉に反応してミーシャさんがより赤くなった。
「私もお似合いだと思うよ?くっついちゃえばいいのに」
「ミオン様っ?!お気持ちは嬉しいですけど………ウェリン様には想う方がいるらしいって言う噂を聞いたんです………私なんかじゃ………」
今にも泣きそうな顔をして俯くミーシャさんを見る。
―――それはミーシャさんの事だよ!!!
そう叫ばなかった私を褒めて欲しい。誰だよ。そんな噂ミーシャさんに言ったの………。余計な事を。
蹴り飛ばしてやりたい。
気持ちは同じだったらしい。ディーさんも大きな溜息を吐いた。コレはリン先生の方を攻めるしかないか?何とかリン先生にその気になって貰って告白してもらうしか道は無い気がする。
私はディーさんにアイコンタクト。しっかり頷くディーさん。同意見のようだ。私も今度リン先生に発破かけに行こうかしら………?
「あー、取りあえず噂でしょ?気にしなくてもいいんじゃないかな?」
取りあえずフォローを入れとく。本当に泣いちゃいそうだし。
「そうですけど………はぁ………」
駄目だ。落ち込んじゃったみたいだ。ホント言ってしまいたい。両想いなんだから大丈夫だよって。
ディーさんはそんなミーシャさんを見て話題を変える事にしたみたい。
「そう言えば、ジュド―には誰かいないのか?」
どうやらジュド―さんを生贄にする気のようだ。
「お兄様ですか?そう言う事は陛下の方がお詳しいのじゃありません??」
「昔の話だ。神官になってからはあまりしないな。なんだ、じゃあ誰もいないのか??高位の神官なんだから引く手あまただろうに」
神官様ってモテるんだそう。高位貴族じゃなくても高位神官になれる可能性はあるし、暮らしも安定しているかららしい。ましてジュド―さんは高位貴族の家の高位神官だ。こんな好条件放っておかれるはずが無い。
「お話は出てますけど………叔母上達が煩くて辟易してます。想う方がいるからなのか、想う方がいなくてなのかは分かりませんけど」
「アイツは家柄や身分で評価される事が嫌いだしな。群がってくる女性はそういう風に見ている事の方が多いから辟易するのも分かるんだが………次期当主がそれで大丈夫なのか?」
「大丈夫ではないから叔母上達が騒いで余計に悪循環なんですわ。誰か良い方がいればいいのですけど」
そうかジュド―さん次期当主なんだ。お家によって色々あるんだね。
「私的にはエルザさんを押したいなぁ」
そうポツリと呟く。
「エルザ?!」
「エルザですか?!!」
なんか盲点って感じに叫ばれました。
「………エルザか………無しじゃないな。家格もつりあっているし。しかしどうしてエルザなんだ?」
「昨日2人が話してるのを見てアリかなって」
思い出しながらそう言えば、難しそうな顔をしたミーシャさん。
「けれど、正直難しいと思いますわ。エルザの理想の男性は自分より強い殿方なので………」
「そりゃあまた難しい事を………この国だとラムザ位しかいないんじゃないか?」
呆れ顔でディーさんが言えば間髪いれずにミーシャさん。
「筋肉達磨はあまり好きではないそうです。あ、ラムザ様の事ではないですけど」
はい!ラムザさん却下ー!あの人筋肉ムキムキだからな………エルザさんの好みじゃないようだ。
「………一生結婚しない気か?」
疲れ果てたディーさんがそう呟いた。エルザさんより強い人が他にいないんならそうなりますな。でも。
「大丈夫じゃない?理想の人と好きになる人は違うって言うし」
何だろう。そう言ったらディーさんのご機嫌が微妙な感じ。
「………ミオンの理想はどうだったんだ?」
なんか言いにくそうに聞かれた。
「え?………私??特にはなかったけど。常識外れの我儘な人じゃなければ?」
私の答えはどうも微妙だったらしい。え?理想の話でしょ??現実の話じゃなくて。ディーさんもしかして拗ねてる?もう。しょうがないなあ。
「確かに特に無かったけど。強いて言えば好きになった人が私の理想の人だよ」
ちょっと照れくさく思いながらそう言ったらディーさんにガッシリ抱きしめられた。
ミーシャさんが陛下ったらしょうがありませんね?って感じで苦笑してる。
本当。しょうがないんだから。でもそんな所も大好きです。
いつかそんな機会があったらくっついて欲しいジュド―さんとエルザさん。
リン先生とミーシャさんの道程はまだまだかかりそう。




