第63話 女神と約束してから2週間
ディーさんがリン先生に発破をかけると言ってくれたものの、実際言ったのかどうかは良く分からないままに数日が過ぎました。
リン先生に特に変化がないんだよねー。まだ発破がかけられてないのか、かけても変わらなかったのか良くわかんない。
明日はティレンカ女神と約束してから2週間になるので、今日、泉に出発です。今度こそ渡すものを渡さねば。ディークラウド王子の手紙でしょ?セイウスさんの櫛と耳飾りでしょ??しっかり荷物の中に入れました。泉に行くメンバーは、この前と同じ。更に会議の決定で大臣達の代表でレンブラントさん。本来なら、主だった大臣さん全員でティレンカ女神をお出迎えしたい所なんだけど、お年寄りもいるし、現状では無理、って事になったのでレンブラントさんが代表者に。後、同じような理由で神殿代表ジュド―さん。そして、ミーシャさんが是非行かせて貰いたいっていって押し切った。ティレンカ女神なら残りたいって言えば残らせてくれそうなんだけど、兄妹神がどう思っているか良く分からないでしょ?ちゃんと結論が出されるまで不安みたい。
と言う感じで色んな人に見送られて泉に出発です!!!
「下草刈ってくれたんだね」
短くなっている雑草にそうポソリと呟けば、
「この前調査に行きがてら、枝打ちと下草を刈るのはやりましたから少しは歩きやすくなっていると思うのですが………」
というリン先生の声。有難うございます。なんとなくだけど道が出来てる………。奥に行けば木の根でできた自然のサバイバルゾーンがあったはずだけど、そこも簡易的な階段をつくったらしいので行って帰るだけなら往復2日で行けるとの事。あそこでかなりの時間とられたものなぁ………。まぁ、今回もどうなるかわからないので往復3日で考えといた方がよさそうだ。
ミーシャさんにはこのお泊り行軍を利用してリン先生と何か進展してくれればいいなぁと密かに思う。なので、せめてミーシャさんとリン先生を近くに配置してみましたv出来るだけ自然にそうなるように仕向けたつもり。
ミーシャさんは必ず私の傍だから、リン先生に近くに来て貰えるようにこの草なんですか?とか沢山質問しただけなんだけど。一応、作戦は上手くいき、今はミーシャさんとリン先生が楽しそうに話している。よし。良くやった私。
この前と違い随分明るい行軍だと思う。前の時は皆何処か緊張してたしね。ほのぼのとした空気の中、前よりもっと早い時間でティレンカ女神の泉の傍についた。まだ、日も沈みきってない状態。
前と同じ所にテントを立てて、今日の夕飯はミーシャさんが担当。
リン先生の指示で拾ったコカの実やシュルの実を入れて、更に牛乳を粉末状にしたものと粉チーズを加えた兵糧米のリゾットとサラダにもなる雑草チタの葉と干し肉のサラダでした。
リゾット、美味しー!!!とってもコクがあってクリーミー。サラダもシャキシャキしてて美味しかった。
ご飯の時の席は残念ながらミーシャさんの隣にラムザさんが来ちゃったので、リン先生はミーシャさんの丁度目の前、エルザさんとレンブラントさんに挟まれた位置に。はぁ、残念と思いつつリン先生を観察していたら………ミーシャさんの方を切なそうに見ているのを発見!!!私の隣では、ミーシャさんがラムザさんの猛攻撃を受けてる最中。どうやら、ラムザさんもミーシャさん狙いのようだ。
私にとってはミーシャさん、ラムザさんのアタックに戸惑って困っているようにしか見えないんだけど………。リン先生には違う風に見えるのかな?まぁ、これだけでリン先生がミーシャさんを好きかもっていうのは言いきれないケド。私は可能性ありと見た。
さて決定的瞬間と言うのはいきなり訪れるのが好きみたい。リン先生がリゾットをおかわりしようとした時に、ミーシャさんがやりますと立ちあがり、お椀にリゾットを入れて手渡した時だった。お約束とばかりに二人の手が重なる………。時が止まった。ボケっと見つめ合う二人。暫くして「すみません!!!」と叫び二人同時に手を離す。お椀が落ちなかったのが奇跡だ。
ラムザさんがショックで固まってるのが見える。エルザさんとレンブラントさんは「成る程」と言って頷く。ジュド―さんは目を見開いてから、嬉しそうに微笑んだ。当の二人だけがそれどころじゃなくテンパってて周りの状況を理解してなかった。
私はちらりとディーさんを見上げる。
「やはり、先が長そうだな………」
その呟きに密かに頷く私。手が触れた位で飛び上がるなんて………二人とも何処の中学生ですか???
まぁでも、両想いっていうのが分かっただけでも私は良かったと思うけど。あんまり心配しないで見てられるからね!!!
食事後、エルザさんとミーシャさんの3人でお椀を洗う。最初は和やかに雑談してたんだけど………。
「ミーシャ殿はウェリン殿がお好きなんですね」
エルザさんが悪戯っぽそうにミーシャさんに言うと………瞬間ミーシャさんが真っ赤になった。
「な………何故です?!」
「ごめん、ミーシャさん………さっきのは流石にバレバレだったよ」
「そんな!!!ウェリン様にもですか………?」
泣きそうな顔で言われてしまったのでエルザさんと一緒にフォローを入れる。
「リン先生は自分の事でイッパイイッパイというか………兎に角気付いてないから!!!」
「うん………残念と言うべきか………全く気付いてないから大丈夫ですよ」
その言葉に安心したのか思わず顔を覆うミーシャさん。
「私は二人はお似合いだと思うよ?」
いきなりの言葉に3人びっくりして飛び上がる。慌てて振り返ればニコニコとしたジュド―さんが後ろに立っていた。
「お兄様!!!」
「驚かせてしまったかな?でも私も驚いたしね………。リン殿が相手なら 私としては不足はないけどなぁ」
「からかわないで下さい!!!」
真っ赤になったミーシャさんがジュド―さんを軽く睨みつける。
「からかってなんてないよ?エルザ殿もミオン様もそう思いませんか?」
ジュド―さんが本当に嬉しそうだったので、エルザさん共々思わず頷いてしまった。
「………これは私が勝手にウェリン様をお慕いしているだけなんです………お願いですからそんなに騒がないでください………ウェリン様に迷惑ですわ」
「「「………」」」
両思いだと思うけどなぁ………とはここにいた全員の心の声だったと思う。
まぁ、でも当人に代わって教える権利は私達にはないしね………。
黙った事を了解と取ったのか、ミーシャさんは「もうこの話はお終いです!!」と言いながらお椀を布巾で拭き始める。私達もそれに倣った。
洗い物が終わってテントに戻れば既にディーさんがいて。ポンポンと膝の上を叩いてここに来いと呼ばれる。しょうがないので座ってあげた。
「リン先生の好きな人、完全に分かったよ」
「あれで分からない方がおかしいだろう」
苦笑しながら言うディーさん。確かにあれで気付かなかったら余程鈍い人だと思う。
「………ラムザはかなり凹んでいたが………」
「そうだね………瞬間固まってたもん」
まぁ、しょうがない。両想いの人達が優先と言う事で。
ラムザさんには可哀想だけど………私は断然ミーシャさんの味方なのだ!!!
「後はどちらでもいいから告白すればいいんだけどね………」
「相当時間がかかると思った方がいいぞ?リンに言ってみたが、自分じゃ見合わないの一点張りだったからな」
あいつは意外と頑固なんだ、とディーさん。ありゃりゃ、困ったな………。理想はリン先生に告白して貰うのが良かったんだけど………。
ディーさんにこめかみにちゅっとされて顔を見上げる。
「何とかならないかな」
「余計なちょっかいを出して、こじれても困る。そっとしておけ」
むーっとしたらその唇にちゅってされた。でもさ。ミーシャさんには早く幸せになって貰いたいんだけどなぁ………。ディーさんの腕に包まれながら、私は大きく溜息を吐いた。
リン先生とミーシャさんも時間がかかりそう………。