第61話 重臣会議
恥ずかしながら想いを伝えあった翌日、ディーさんは、事の次第を重臣会議にかけた。
名目上、妃殿下の私。だけど来た当初とは状況が変わっている。呪いが解けた事、婚姻の制約がティレンカ女神によって解除されてる事、私が帰る事も出来る事、子供が望めないだろう事を包み隠さず話したそう。当初、ディーさんは会議が大荒れに荒れる事も覚悟したらしい。私にはあぁ言ったものの正直なところは私達の我儘を通す話な訳だしね。
特に子供が望めないだろうって分かってるから………次の王は直系でなくなってしまう訳だし………。
会議に出席したのはディーさんを含めて14名………私の知っている人達だと宰相のレンブラントさん、近衛侍従長ラムザさん、文化技術省からリン先生、教皇代理………神官長ジュド―さん、が出席者。
最初に賛成してくれたのはレンブラントさんとリン先生。次いでジュド―さんとラムザさんが賛成してくれた。残りの人達は………賛成5名、賛成できないけど反対はしないが4名だった。
やっぱり、子供が望めないって事は一番問題になったらしい。ディーさんは多く語らなかったけどその話が出た瞬間、場が騒然となったみたいだから。でもディーさんとごく身近な人達以外で正直こんなに賛成して貰えるとは思ってもみなかった………。賛成してくれた人の中には、私がこちらに来た当初、嫌味を言ったおじさんも入ってたりして………。本当に有難いと思う。
「陛下もミオン様も愛されてますね」そう言ってくれたのはミーシャさんだ。
次は、ティレンカ女神に残る事を決めたって話さないと。
それから正式に妃殿下としてのお披露目はディーさんの誕生日。お城の前庭を解放してディーさんが国民に挨拶する時、一緒に顔出してにっこり笑って手を振るだけだからとは言え、それ用のドレスも新調しなきゃならないし、所作の先生がついて勉強しなきゃいけなくなった。
主にミーシャさんが先生なんだけど………。
他国からの使者も出席するので特に晩餐会が怖ろしい。勝負は10日後。
結婚式は北の国がもう雪に閉ざされている事も考え、雪解けが終わる新緑の季節にする事に。
あれよあれよと決まっていって正直夢じゃないかと不安になる。けど、それ以上に忙しくて更に周囲は慌ただしかった。
「ミオン様、背中が曲がっています。そう背筋を伸ばして………もう少し胸を張って下さい」
今は立ち方の所作の勉強中。
目線はなるべく遠くに、顎はあまり出さず心持引いてまっすぐ上方から糸でつられている感覚で上に引き上げる。肩をいからせない………地面と平行になるように心掛ける。お腹は軽く引き上げ、背筋を緊張させ引きあげる。膝の両側を軽くつけ、踵も内側を軽くつける
つま先は2~3㎝程開き、ディーさんと向き合うまでいかないけれど心持、身体を内側に向ける。
手の振り方は指先をそろえて、ゆっくり、大振りでも小振りでも駄目。肘はあげず胸元で振るというもの。一個一個は簡単そうなんだけど、これらを一気にやるのは………。疲れる上に意外とできない。
ここをやればあそこを忘れ、あそこをやればまた別の所を忘れる、と。
正直、これよりテーブルマナーの方がまし。元の世界とあまり変わらないって事がわかったから。
立つだけで、全身運動なんて思いもしなかった………。他にも歩き方とか微笑み方とかetc………。
頭がパンク寸前です。所詮付け焼刃なんだけど、それでもちゃんとしたいから頑張ってます。
後は少しでもディーさんに相応しいと見て欲しいなっていう下心もありますが。
「少し休憩しますか?ミオン様」
「ミーシャさん!!!するする休憩」
「あまり根を詰めると、覚えられるものも覚えられなくなりますからね」
そう言って紅茶を入れてくれるミーシャさん。あぁ、全身からバキバキ音がしそう。
「頭で覚えるより身体が覚えてくれればいいんだけど………」
「そうですねぇ………身体が覚えてくれれば楽なんですけど。意識しないで出来るようになりますからね」
まだまだ、その域には達せそうもないですな。
優しいミーシャさんが私の肩や腕をマッサージしてくれる。グリグリと押される感触が気持ちいい。
「随分こってますね………ミオン様」
「普段した事ない姿勢だしね………こんなことなら来た時から所作の授業して貰うんだった!!!」
「急展開でしたものね」
クスクス笑うミーシャさん。結局帰りたくない発言を発端に告白され、告白した訳だけどその時にはこんなトントン拍子に話が進む事になるなんて思ってなかったもの。
「ですが本当に良かったです。ミオン様がこちらに残られる上に、陛下と結婚して下さるなんて………その事を教えて頂いた日は興奮して眠れませんでしたわ!」
嬉しそうに言うミーシャさん。そんなに喜んで貰えると少し照れる。おかげでミーシャさんのお仕置きは受けずに済んだ。いまだにミーシャさんがどんなお仕置きを考えていたのかは不明だけれど。
そう言えば、最近ミーシャさんとリン先生が仲いいんだよね………。当人たちはディーさんの誕生日の打ち合わせって言ってるんだけど………。ミーシャさんなんとなくご機嫌だし、もしかしてリン先生の事好きなのかしら?でも確かリン先生好きな人いるんだよね?それがミーシャさんだったらいいなぁ………。
「私もドキドキしてあんまり寝れなかったよ………ねぇ、ミーシャさん………ミーシャさんは好きな人に告白しないの??」
言った瞬間、ミーシャさんの顔がボフンと真っ赤になった。あ、これは確実にいるな。好きな人。
しれっとカマをかけて続きを言ってみる。
「リン先生って素敵な人だよね?」
「ミミミミ、ミオンサマ?!どうして分かったんです?!!」
「あれ??私別にリン先生の事を好きでしょなんて言ってないよ???リン先生って素敵だよねって言っただけだもん」
意地悪そうにそう言えばシマッタと言う顔のミーシャさん。かーわいーv
「酷いです!!!ミオン様!!!」
「ふっふっふっ。やっぱりかー。なんとなくそうかなぁって思ったんだけど確信がなくて………ゴメンネ?」
自分のは照れくさいけど、他人の恋バナは好物です。
「ねえねえ、いつから好きだったの?」
「そ、それは………」
「告白しろとは言わないから教えて?」
そう促せば恥ずかしそうにミーシャさん、前から気にはなっていたものの完全に男性として意識し始めたのは私がいなくなっちゃった時。リン先生が頼れる所を発揮してミーシャさんの事を守ってくれたそう。そこに惹かれたんだって。やるなリン先生。ミーシャさんみたいな素敵な女性に好かれるなんて、果報者!!!あぁ、二人がくっつかないかなぁ………お似合いだと思うんだけど………。リン先生が誰の事好きか分かればいいんだけどねぇ。ワクワク。ミーシャさんにも幸せになって貰いたいし。ドキドキ。
リン先生は好きな人教えてくれなさそうだしな………ディーさん聞いたら教えてくれるかしら???
脳内であーだこーだと考えているうちに休憩は終わり、所作の授業が再開です。
少しからかいすぎたかな………その日の授業の後半は少し辛口でした(泣)
新たに恋の予感。ミーシャさんの恋の行方は………。
リン先生の気持ちが気になる人は小話を読み返して下さいv
どこかの小話でディーさんがぽろっと暴露してます。