第60話 パニックとは何ぞや?
パニックとは何ぞや?はい。今の私の状態です。ディーさんが爆弾発言を投下して今度は私が凍りついた。―――妃って何ぞや??はい。王様のお嫁さんです。
ちょっとまって落ち着いてディーさん!!!イヤ、ディーさんは至極落ち着いてる………落ち着くのは私か―――っ!!!「あの、ディーさん??熱あるの???」「俺が相手では不足だろうか………」不足なんてとんでもない!!!好きですが!!!これはあれか???同情的な何かか???それともディーさんが結婚しても良いって思う位私の事好きって事?!イヤイヤイヤイヤ。油断は禁物だ。ディーさんだもの。何か別の理由かもしれないよ?!!!落ち着け私。落ち着け―――!!!落ち着くんだ。
そもそもだって無理がある。私はディーさんの子供を産めないのに………!!!
「駄目だ。駄目だよディーさん。ディーさんは王様でしょ?!誰かこの国の人と結婚しないと………」
そう言えば、一気に暗くなるディーさん。
「俺が………嫌いという事だろうか………」
「なんでそうなるの!!!嫌いじゃないよ!!!むしろ好きですが!!!」
ぎゃー!!!勢いに任せて言ってしまった………。穴があったら入りたい………でもその言葉にディーさんの目が輝いた。
「それなら、何の問題がある………。愛しているミオン。俺の妃になってくれ………」
ぎにゃー!!!い………今、今なんて?!ていうか問題は大ありなんですが!!!
「私種族が違うもの!!!ディーさんの子供産めないんだよ?!」
「おそらく無理だろうな………だが構わない………本来なら許されるべきではないだろう。現職の王は常に次代を残すのも仕事のうちだ………だが、俺はミオン以外愛せない………次の王は近しい血の者から神々が選ぶだろう。それ位してもらっても罰は当たらんはずだ。………俺はミオンがいい」
ミオンがいい………ミオンが………聞き間違いじゃないよね?!!もう自分がどう言う顔したらいいのか分からないよぅ………嬉しいけど………嬉しいけど………どうしたらいいの!!!助けてミーシャさん!!!あ、でもミーシャさんとイリアナさんはこの事、知ってたって事?!ひー!!!だったらせめて教えといてくれればまだ覚悟が………!!!駄目だ………心臓が壊れる。ずるずると座り込んでしまった私を抱えるようにしてディーさんが言う。
「駄目か?」
耳元で囁かれる言葉は甘く低く響く。こんな魔力に抗いきれる自信ない。
「反対されるかもしれないよ???呪いっていう言い訳はもうないんだもの………街の人達だって受け入れてくれるか分かんないし………」
「ミオンが今まで誰も解く事が出来なかったこの国の呪いを解いてくれたんだ………反対されようとも譲る気はない。少なくとも親しい者たちは祝福してくれるだろう」
そもそも、お前は城の者に妃殿下として受け入れられているではないか、とディーさん。でもそれは神々の後押しがあるって前提があったからだよ?
「民の反応は正直………俺にも分からん………だが、お前の人となりを知れば嫌われる事は無いと思うぞ???」
「ディーさん楽観的過ぎだよ………」
「行動で示せばいい。お前が王妃に相応しいのだと。ミオンにはその力があると思う」
行動で示す………反対されたとしても………負けない強さ………私がディーさんを好きならばそれは乗り越えなきゃいけない壁だ。傍にいる事ができるんなら………ディーさんが他の誰かをお嫁さんにする所を見ないで済むなら………それはやってみる価値がある事じゃないの???深音。
「本当に私でいいの………?」
「俺はミオンがいいんだ」
その言葉にディーさんに抱きつく。
「私もディーさんがいいよ」
だって恥ずかし過ぎてこの言葉を顔を見て言えなかったから。囁くようにそう言えばディーさんがぎゅっと抱きしめる腕に力が籠った。暖かくて安心できる私の居場所………。やっと見つけた私の家族。暫く二人で抱きしめ合ってその幸せを噛み締める。
「イリアナさんとミーシャさんに感謝しないとね」
「イリアナとミーシャに………?」
そう問われて、私は何で「ここに残りたい」って言う事になったかの経緯を話した。
「二人からしてみたら………私達って相当馬鹿みたいだっただろうね………」
「………そうだな………お互い勘違いしたまま危うくミオンを異世界に帰してしまう所だった………しかし、イリアナはどういう心境の変化だ???」
「うーん………色々考えてイリアナさんも気付いた事があったんじゃないかなぁ。あの時エヴァンジェリンちゃんを守ろうとした事で私への印象も変わったみたい………そうじゃなかったら私の事、異世界に蹴り帰してたって言われたけど」
苦笑して言えばディーさんも笑う。
「随分仲良くなったんだな」
「どうだろうね………最後に言われたんだ。違う出会いかたをしてたらって。私もちょっとそう思った………苦手とか、嫌いとか思わないで、ちゃんとぶつかり合って話してたらもっと違う結末になったのかなって………」
「そうだな………俺も、もっと早くに気付いていればと思った。イリアナが思い詰める前に………俺にとってアイツが許せない事をした事実は消えないんだが………親しい妹のような存在であった事に変わりは無い………。俺としても少し複雑なんだ………」
そうだよね………ディーさんへの恋心が発端だったし………。ディーさんが責任を感じるのも分かる。
でも、ディーさんの所為じゃないと私は思う。
「でも、イリアナさん最後は凄くスッキリした顔してたよ。きっともう大丈夫だよ」
「そうか………そうだといいな………」
うん。イリアナさんは大丈夫。今度はちゃんと自分と向き合えるハズだもの。この経験が彼女を成長させてくれたと、そう思う。
「私が、あなたと陛下にできる唯一の罪滅ぼしなんですから………」あの時のイリアナさんの言葉がよみがえる。ちゃんと受け取ったよイリアナさん。有難うね………。勇気がいったんじゃないかなぁ………ディーさんの事まだ好きだったと思うのに、私に発破をかけるのは………。それでも、それを罪滅ぼしとして言ってくれた。いつか………いつか、会える時が来ればお礼が言いたい。
「ミオン………」
そう囁かれてディーさんを見れば目の前にディーさんの顔があって。
額に、瞼に、頬に口付けを落とされる。バクバクとした心臓でコレの意味はなんだったかしらと場違いな事を考えているうちにそのまま唇にキスされた。初めて誓約を結んだ時とは違う長いキス。これの意味は考えるまでもない。幸福に身を任せ私はディーさんを抱きしめた。
ディーさん言いきってくれました。ほっ………。
書いていて気付いたら話の流れが変わっちゃう事もあるので、言いきってくれて本当に良かった(汗)深音もちゃんと言えたし………。
問題はまだありますが二人なら乗り越えて解決していけると思います。