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第56話 新たに分かった事

あれから周囲は慌ただしく時が過ぎて行き………。新たに分かった事は、賊の男達が獅子族ディレンドラの人達で、大公と呼ばれた人は継承権は無いもののディレンドラの王家の血を引き宰相も務めた事もある大人物である事が発覚。現職の大臣と言うか、もう御年なので御意見番みたいな事をしている人らしい。

ディーさんは即、水鏡ティオレと呼ばれる石の映話装置でディレンドラの王様と緊急会談。あちらにとっては寝耳に水。かなり慌ててたらしい。しかし、大公が私設の珍しい物を集めるための部下を手元に置いているのはディレンドラでは有名な話だったらしいのですぐに調べるとのこと。

結果はもちろん真っ黒だった。この大公さん。人物は良く、素晴らしい人なんだけど、『珍しいモノ』の事になるとちょっと倫理観がすっ飛ぶと言う事が今回発覚。これでよく今まで問題が起きなかったなぁと思ったら、好人物過ぎて誰も疑わなかったらしいのね。後は人に見せる趣味じゃなくて自分で満足するための趣味だったらしく禁制品の密輸とかに関わっている事をディレンドラでは把握してなかったらしい。人身売買的な事は私の件が初めてだったらしいけど………珍しければ何でもよくて、犯罪になろうとも気にしないっていう考え方はちょっとどうだろう。

本来なら、領地の没収とか身分の剥奪とかされて幽閉される事になるんだけど………ここで問題になるのは、イリアナさんの家も、大公の家も政治上のパワーバランスを考えると無くなっては困る家の一つになるのだと言う事。そしてもう一つ問題なのはディーさんもディレンドラの王様も身内の恥を公表したくはないって意見になった事。イリアナさんは降嫁した王家の娘の子だし、大公だって王家の血をひいている。王家と近しい関係である事に変わりはない。本来ならこんな浅墓な事軽々できる身分じゃないんだよね。

両王家と、それぞれの国の大臣達とで話し合って出された結論が………イリアナさんは北の方にある修道院に生涯幽閉。大公はご老体なのでディレンドラにある田舎の別宅に幽閉。もちろん今まで集めてたものは犯罪に関係あるものは没収。他の物は自ら返上したそうな。

家自体には異例のお咎め無し。咎めちゃったら何かあったの一目瞭然になっちゃうしね。

大公の部下は拘束。こちらの事件に関係あるものは後日移送されてこちらに来る。

今現状で捕まっている人達は、誘拐、密輸等の罪で現行法に照らし合わせて処罰するとの事。

妃殿下の誘拐という一大事、本来なら街中引き回されて死刑になるらしいんだけど、私の寝ざめが悪いのと公にできない事情の為に政治犯や反政府組織などの表に出せない人達の入る湖の上の監獄、ゴートシュルツという所に収監される可能性が一番高いそう。

正直生温い!!!という意見もあったそうなんだけど、まだ国内外に私が正式に王妃という発表もされてないのでそこで決着が着きました。

この件に関してディレンドラの王様から謝罪の手紙が届いた。国交上の問題もあるので後日、正式な使者が来るそう………。こちらの側から手引きがあったとは言え、立場上仮にも一国の王妃を攫って怪我させちゃったからからね………秘密裏ではあるけれど賠償問題とかにも発展しそうなこの問題。もちろん外交にも響いてくるのであちらとしては早期解決したいらしい。


「痛みはありませんか?ミオン様」


ミーシャさんに頬の薬をかえて貰いながら私は頷いた。


「うん平気だよミーシャさん。腫れもだいぶ引いてきたしね」


あぁ、声が出るって素晴らしい。結局声はディーさんが薬師の皆さんに作らせてくれた薬で治りました。調べた所、結構強力な薬だったらしくて、下手すれば一週間は声が出せなくなってたらしい。後遺症がのこるような成分は幸い入ってなかったらしいけど………。うぅ。調べて貰って良かった………一週間声が出ないとかアリエナイ。

イリアナさんの処罰が決まったので一応北の塔への出入りは家族のみ許されている。そんな中、エヴァンジェリンちゃんがあの事件以来久しぶりに訪ねてくれた。


「ご加減いかがですか?ミオンお姉さま??」


「エヴァンジェリンちゃん!!!大分いいよ。エヴェンジェリンちゃんはもう大丈夫??」


「はい。あの時は有難うございました………ミオンお姉さまが庇って下さらなかったら私………どうなっていたか………」


この事件があってエヴァンジェリンちゃんは少し大人びた顔をするようになった。苦しみを堪えるようにそう言うと感謝のこもった眼差しで見られて私としてはちょっと恥ずかしい。その場でしなきゃいけない事をしただけなんだけど………。


「昨日、イリアナお姉さまに会ってきました。ミオンお姉さまの代わりにちゃんと怒っておきましたから………お姉さまも色々考えたみたいで………黙って聞いていてくれました」


かなり痩せてしまったと言うイリアナさん。その目はあの時の狂気は無かったと言う。


「本当はお父様がご挨拶に伺うべきなんでしょうけど………あの時倒れてしまったままで………外国で勉強なさっている一番上のお兄様が戻って来る事になりましたの。お父様は御病気と言う事にして、おそらくはそのままお兄様が後を継ぐでしょう………ですから、今は私がヴァルレア家の代表としてミオンお姉さまに正式に謝罪致します。本当に申し訳ありませんでした………」


そう言って頭を下げるエヴァンジェリンちゃん。この小さい肩に今ヴァルレアという大きい責任が乗っかっているのか………。そう思うとかなり切ない。ミーシャさんも痛ましい顔をしてエヴァンジェリンちゃんをみつめる。


「エヴァンジェリンちゃん………」


私はそう言って小さく震える身体を抱きしめてあげながらエヴァンジェリンちゃんの責任感に頭が下がる思いだった。イリアナさんとヴァルレア公に爪の垢でも飲ましてあげたい………。


「今回の件は、法的にも決着がついた事。正式な謝罪を受け入れます」


被害にあったのはエヴァンジェリンちゃんもだけど、私はエヴァンジェリンちゃんが家を背負ってしてくれた謝罪を蔑ろにする気はなかった。


「顔をあげて、エヴァンジェリンちゃん………。大丈夫だから………お兄ちゃんが帰って来るまで、大変だと思うけど何か出来る事があったらいつでも言ってね???一人で抱え込まないって約束して」


「ミオンお姉さま………有難うございます」


少し泣きそうにエヴァンジェリンちゃんの顔が歪む。それでも持ち前の気丈さで笑顔を浮かべるエヴァンジェリンちゃんは本当に凄いと思った。

夜になって、ディーさんが帰って来ると、今日あった事を話し合うのが最近の日課。


「そうか………シーヴェスが帰って来るのか………そちらの方がヴァルレア家も安泰だな………公はどうしても気が弱過ぎる………今回の件でも寝込んだままだしな。公は倒れ、イリアナも表に出ない………噂好きの貴族達がそろそろ理由を憶測し始める頃だ。幼いエヴァンジェリンが矢面に立たされるよりシーヴェスの方が上手く立ち回るだろう」


そうか………そんな事もあるんだ………。そう考えるとエヴァンジェリンちゃんのお兄ちゃん、シーヴェスさんが早く帰って来れればいいなって思う。


「………今日、イリアナから奏上があってな………」


言いにくそうに言うディーさん。


「出来れば二人きりでミオンに会いたいと………」


苦虫を噛み潰した顔で言われればこの件に反対なのは明白で。でも一体どうしたんだろう………よりにもよってイリアナさんが私に会いたいなんて。


「正直俺は賛成しかねる」


まぁ、そうだよね………流石に私も二人っきりはご免被る。


「うーん………私は会ってもいいけど………言いたかった事もあるしさ。でも二人っきりは嫌かな」


その言葉にディーさんはやっぱり、あまりいい顔をしなかった。


「………会うのか?」


「二人っきりじゃなければね」


難しい顔をして唸るディーさんよっぽどイリアナさんと会わせたくないらしい。


「………俺が一緒に………」


「却下。ディーさんには聞かれたくない事もあると思うよ?二人っきりって言った位だし」


「じゃあ護衛を………」


「イリアナさんが武器持ってる訳じゃないでしょ?話しにくいじゃん」


「あの………私が一緒に行きましょうか?口は挟まないと誓います」


このやり取りにそう言ってくれたのはミーシャさん。ディーさんと二人顔を見合わせる。


「陛下が心配なら護衛は扉の外に置けば宜しいかと。外まで話声は聞こえませんけど何かあれば扉をノックすれば護衛に伝わります」


「そう………だな。それならまだいいか………」


そういうディーさんに私も頷く。


「後はイリアナさんがそれを了承してくれればね」


それにしても、一体イリアナさんから何の話があると言うのだろう………。恨みごとだったらどうしよう、と一瞬思ったけどそんな事の為にわざわざディーさんにお願いしないだろうと思いなおす。出来れば冷静に話し合えればいいけど………私も言っちゃいたい事あるしなぁ………エヴァンジェリンちゃんの事とかさ。修道院に行っちゃう前にどれだけイリアナさんの事を思っていたのかって事を理解してもらいたい。自分のしたことの結果と責任も気付いて欲しいから。

落とし所を色々考えたのですが、諸事情を踏まえて事件の幕引きはこうなりました。どちらにしても血が流れる事態は深音が止めに入りそうなので。今の私にはこれが精一杯です。

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