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第55話 イリアナさんは北の塔へ

左の頬は腫れあがり熱と痛みを伝えてくる。手当をしてくれたお医者さんによると、痕は残らないし、骨折もしてないと聞き一安心。何かの薬草を塗られ、湿布みたいなものを張られ冷晶石の入った氷嚢を顔に巻かれました。一昔前のおたふくかぜになった人みたい。

エヴァンジェリンちゃんはミーシャさんとリン先生に連れられて無事お家へ帰宅。

イリアナさんは北の塔へ一時幽閉。今は誰も会えない状態らしい。これから、ディーさんと重臣のおじさんたちの会議があってそこで裁定が下るまでこのままの状態。私達を攫った男達は投獄。今後、背後関係を洗いだし密輸の件、他に人身売買がなかったのか等を調べるそうだ。

私は暫く部屋に軟禁状態………何でかと言うと、この事件が機密扱いだからです!!!外国の要人も関わっているらしいこの事件。しかも首謀者はこの国の身分の高い貴族の娘だし、扱いは非常にデリケート。この事件を知っている人には緘口令が布かれている。そこで秘密にしたいのだけど、顔を腫らした私がうろちょろしたら、ねぇ??妃殿下のアレはなんだ!!!って事になるじゃない???と言う訳で、腫れが引いて少なくともお化粧とかでごまかせるようになるまで外出不可になりました。

イリアナさんに文句の一つも言いに行きたかったんだけどな………。

今は夜。就寝前の時間だと言うのに慌てたラムザさんがやって来た。


「一人、逃しただと?」


ガルルと声が聞こえそうな程に苛立ったディーさんの声。ラムザさんが申し訳なさそうに頭を下げる。


「申し訳ありません。ミオン様のお話と男達の話を聞くと、ゼツと呼ばれる男が頭目だったようでして………我等が踏み込んだ時には丁度出ていたようです」


「特徴を聞きだして広域手配。諸外国には事情を伏せて引き渡し要請を入れろ。多少強引になるだろうがはっきりとした事情は明かせない、で押し通せ」


こめかみを押さえるディーさん呻くように声を出す。


「了解致しました」


失礼しますと言い置いてラムザさんが部屋を後にする。

あの怖い人逃げてるんだ………なんて悪運の強い。頭目と言う事はやっぱりリーダーって事で今回の件にも詳しいはずだから放置できない。


「スマンなミオン。その阿呆もちゃんと捕らえるから」


その言葉にコクンと頷く。イリアナさんの薬の所為でまだ、声が出ないんだよね………。一応、薬を調べて解毒剤作ってくれてるらしいんだけど………。数日で効果が消えるって言ってたし、大丈夫だと思うんだけどディーさんは納得いかなかったらしい。イリアナさんから入手した薬を薬師の人達の所に持って行って成分分析かけてるみたい。後遺症が心配なんだって。この事件があってから過保護さに磨きがかかった気がする。嬉しいような困ったような………。

今だって二人手を繋いで寝てる。私が気付かないうちにディーさんに抱きついて寝てた事はあってもディーさんが手を繋ぎたがったのは初めてだ。そうしてないと心配なんだって。

気持ちを自覚したらもっとドキドキするものかと思っていたけど私の心臓は時々きゅうってなる程度。こんな穏やかな気持ちになる恋心もあるんだ………。おかげで一緒のベットでもなんとか普通の態度で居られるから良かったけど………。横になってみればこちらを見ているディーさんと目が合って。

ディーさんは優しく私の髪を梳いてくれる。


「もっと早くに助け出せていれば、こんな怪我をさせずに済んだのにな………」


凄く申し訳なさそうに言われれば、フルフルと首を振って枕元に置いたペンと紙をとって今の気持ちを書く。


『助けに来てくれてとても嬉しかったよ?ディーさんがもっと遅かったらエヴェンジェリンちゃんがどうなっていたかわからないし………あの時来てくれて本当に良かった』


それでもディーさんの顔は自分を責めてるみたいで………。そっと左頬に触れる手が苦しそうだった。


『少ししたら腫れもひくってお医者さん………侍医のおじさんも言ってたし大丈夫だよ。薬が効いてるからもう痛くないよ???痕だって残らないってディーさんも一緒に聞いてたでしょ??』


「そうだな………だが女子供に暴力を働くのは許せないし、ミオンの顔はやはり痛そうに見えるし、俺は自分が情けない」


その言葉にペシペシとディーさんの額を叩く。


『起こっちゃった事は戻らないってディーさん知ってるでしょ???傷が残るわけでもなし、そんなに落ち込まないの!!!情けなくなんてないでしょ!!!ちゃんと私を助けてくれたのに!!!私が落ち込んでないのにディーさんが落ち込むのがそもそも間違ってマス!!!』


「間違ってるのか???」


書きなぐったその言葉にディーさんが苦笑しながらそう言った。


『そうだよ!!!いいの!!!間違ってるの!!!ディーさんは情けなくなんてないんだから』


「………そうか………」


苦笑するディーさんに鼻息荒く頷く私。そうだよ、ディーさんは全然情けなくなんてない。守るって約束をきちんと果たしてくれた。今思えば、冷静さを失わずにいられた事の一つはその約束があったからっていうのも大きいはず。不思議と、ディーさんが助に来てくれるのは疑わなかったしなぁ………。


「おかしなもので、俺は今回の事でミオンを失う事は無いと思っていた。きっと間に合うと。しかし、頬を腫らしたお前を見た瞬間は肝が冷えた。失う可能性を考えなかった己を責めた。あの場に居た奴等全員殺してやろうかと思った………思わずカッとしてお前の目の前で惨い事をしてしまった………そんな俺は怖いか???」


少し目を逸らしてディーさんが聞く。あの時私かなり青ざめて震えてたしね。


『あの時はちょっと………ううん、やっぱり怖かったよ。血とか見慣れてないし………あんなに怒ったディーさん初めて見たし。でも、それより後ろから男が来てディーさんが死んじゃうかもって思った時の方が怖かった………心臓止まるかと思ったよ』


目の前の怪我人よりも、ディーさんが死ぬかもって方が断然怖かった。


「………そうか………どちらにしても怖がらせて悪かった」


『普通、王様は騎士と一緒に登場するでしょうに。一人で突っ走っちゃ駄目だよ???』


「そうか………その直前までは一緒だったんだがな………つい置いて来てしまった」


『こんな事もうないと思うけど、ディーさんのかわりなんて居ないんだから少し考えて行動してね』


「う………わかった。気をつける」


どうも、ディーさん集中してると外の事見えない感じだから心配だ。まぁ、レンブラントさんもいるし大丈夫だと思うけど………。ディーさん曰く、やっぱりその事でレンブラントさんにこってり怒られたらしいから二度とはないと思いたい。王サマが先頭切っちゃまずいよね………。


「騒ぎの元の一つになった裏町の方も今回を機に少し掃除する事にした。あぁいった場所が街の者には必要だし、貴族の者でも息抜きになるから必要ではあるが、犯罪の温床になっている部分は一掃する。こんな事が二度と起こらないようにな」


今まで裏町で把握されていた犯罪の中に今回の密輸とか人身売買は含まれてなかったらしいのであの男達が今まで巧妙に動いていたのだと言う事が察せられた。と言うのも、地区の担当監理官に賄賂を渡していた疑いも出て来たそう。この汚職を含め他にも握り潰されていた犯罪が無かったか調べる事になったらしい。今回色々、尻尾を出した事で一網打尽にしてしまいたいみたい。

私はコクリと頷くとディーさんの手を強く握った。こんな犯罪、早く無くなって欲しいもの。

女神ティレンカとの約束からなんだかんだで一週間たった。残りは後一週間。忙しくなってしまうディーさんとはどれくらいの時間が残されているんだろう………そんな事を考えながら眠りについた。

無事解放されたものの、犯罪の根は深かった模様。

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