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第52話 聞かされた言葉

正直、何が起こったのか理解するのに時間がかかった。ミオンがいなくなり、イリアナが犯人と思われ何が起こったのか確かめるためにイリアナの家に向かった。そこでイリアナに聞かされた言葉は俺が全く予想もしなかったもので………。


「わかってますわ!!お兄様は私の事なんて何とも思ってないって!!!でもよりによって何故あの女ですの!!!」


「落ち着け!!イリアナ!!!」


困って周りを見れば何とも言えないような顔をしたレンブラント達と目があって。イリアナの気持ちに気付いてなかったのは俺だけだと言う事に今更ながらに気付く。しかし、俺にとってイリアナは従兄妹であり妹のような存在でしかない。呪いの所為もあって、俺は今まで女性をそう言う対象で見て来た事が無かったからだ。いずれ、異世界から召喚した娘と結婚する………それが当たり前だったからな。


「呪いが解けたと、あの女とミーシャお姉さまが話しているのを聞いて私がどれ程嬉しかったか!!!これでお兄様は自由になれて………私にも最後のチャンスが来たって思いましたわ!!でも………お兄様はあの女を傍から離そうとしなかった………何故ですの?!」


あの女はどうして妃殿下のままでいますの?!どうしてお兄様は他の女性を傍に寄せようとしませんの!!!どうして!!!


「どうして私ではだめですの!!!」


その心からの叫びに………俺は。


「………俺が愛しているのはミオンだけだからだ」


そう言う事しかできなくて。


そう言った瞬間、イリアナが人形のように凍りつく。いや、イリアナだけじゃないな………ミーシャ以外、レンブラントもリンも目を見開いて俺を見た。ヴァルレア公だけが真っ青な状態でそれどころではなさそうだが。………それはそうだろう。妃という地位を与えはしたが、ミオンと俺は種族が違う。レンブラントは最初からこの召喚に疑問を唱えていたし、リンは疑問を唱えこそしなかったものの短期間で俺がミオンを愛するような事態になるとは思わなかっただろうしな。


「うふ。ふふふふふふ!!!アレを愛してるとおっしゃるの?!種族も違いますのに!!!あんな醜い姿の生き物を!!!!」


イリアナの壊れたような叫びに、レンブラント達は何も言わない。普段のイリアナを知っている者にとっては狂ったようにしか見えなかったかもしれない。


「ミオンは可愛らしい。確かに俺達とは違う種族だが、俺はミオンの心を一番愛している。ミオンの強さもミオンの弱さも愛しいと思うのだからしょうがない」


「酷い方………ならその愛しい人を失って苦しめばいいんですわ!!!」


「イリアナ!!落ち着きなさい!!!あなたのしようとしている事は許される事ではないのよ???今ならまだ間に合うわ!!!ミオン様をどこにやったの………」


ミーシャが訴えかけるように言うがイリアナは頑なに首を振るだけだ。その様子に耐えきれなかったのかついにヴェルレア公が倒れる。公をレンブラントとリンが部屋の隅に横たえた。


「分かっておられるのですかイリアナ嬢。これは陛下に対する反逆ととられてもおかしくない行為なのですよ?下手をすればお家が取り潰しにされても文句は言えません」


厳しい顔をしたレンブラントがそう脅す様に言ってもイリアナは頑なだった。俺がそんな事を出来ないと分かっていたからかもしれない。


「イリアナ。ミオンはどこだ?お前に手荒な事はしたくない。だが、ミオンに何かあれば俺はお前といえど許す気は無い」


その言葉にビクリと肩を震わせるイリアナ。しかし口を開こうとはしなかった。


「イリアナ………あなたの後を着いて行ったはずのエヴェンジェリンも帰って来ていないの………」


「………エヴェンジェリン??」


そう言って顔をあげたイリアナにミーシャがエヴァの日記を見せる。みるみる顔色が変わるイリアナにどうやらエヴァが自分の後ををつけていた事に全く気付いてなかったのだと理解する。


「まさか………あの子が私の後を?!………今屋敷にいないのですか?!」


あぁどうしようとうろたえるイリアナに、リンが更に言葉をかける。


「エヴァンジェリン嬢が後をつけていた事、知らなかったのですね。………エヴァンジェリン嬢がこの件に巻き込まれた可能性もあります。ミオン様だけでなくエヴァンジェリン嬢も危ないかもしれません貴女が何をして今ミオン様がどのような状況にあるか教えてはくれませんか」


「………私は………」


「イリアナ嬢、幼い妹を巻き込むのはあなたの本意ではないはず………それとも妹を身捨てますか?」


厳しい言葉でレンブラントが言えば動揺したイリアナがヘナヘナとその場に蹲る。


「あぁ………私………どうしましょう………あの場にいたの?エヴェンジェリン………??」


「イリアナ。頼む。話してくれ」


「私、私は………あぁ、なんてこと!!!」


「イリアナ………」


ミーシャが蹲るイリアナを抱きしめる。


「イリアナ、きっとまだ間に合うわ。お願い………あなたの為にもエヴェンジェリンの為にも話して?」


「ミーシャお姉さま………」


そこからイリアナが話した事によれば、裏町の当たると評判の占い師に相談していたイリアナ………最初は占い師に良い運が巡ってきそうと言われていたものの、この数日になってから運に陰りが見え始め遂には元凶を遠くにやらねば一生幸せになれぬと言われたらしい。占い師には護符と、守護石を売られたらしいが、イリアナはそれだけでは安心できずミオンを何処か遠くにやる事を決意。裏町の情報屋を頼りに外国とつくにのさる人物が珍しい『生き物』を集めていると聞きつけて接触すると城内に珍しい生き物が飼われていると言いミオンを二束三文で売り払う契約を結んだという。

これにはその場にいた全員が上を見上げた。なんという浅墓な事をと思ったに違いない。そこから幼い頃皆で遊んだ城壁の隠し通路を他国の者に教えた段になるとレンブラントが苦虫を噛み潰したような顔になった。ヴァルレア公が失神していて助かった。これを聞いたら泡を吹いて絶命しかねない。よりにもよって他国の者に国の重要機密を暴露したようなものだからな。しかし、イリアナはそこまで気付いていないようだった。この娘はこんなに愚かだったろうか………。それともそんな事も考えつけない位に思い詰めていたのか………?

ミオンを取り戻した後の重臣たちとの会議が大荒れになりそうだ。それと外交上の問題もある。何処の国の者かは分からないが、我が国で人身売買などもっての他だ。

ミオンへの扱いに怒りを抑えて聞きながら………その後のイリアナの説明で、賊は夜になるまで城壁の内部にある隠し部屋に潜んでいる事が分かった。

無傷でとはいかないかもしれんが全員捉えて今後我が国でこう言った事が起こらぬようにしなければならん。

まだ姿を現さないエヴァもミオンと一緒にいるものと仮定して動く事になった。たまたま帰って来ていないだけならいいのだが………。二人を人質にされると面倒だ。一気に片をつけなくてはなるまい。ミオンとエヴァが無事だといいが………傷の一つでもつけてみろ………産まれた事を後悔させてやる。


「陛下、裏町に派遣したエルザ達の騎士団を戻しますか?」


レンブラントが真剣な表情で言う。


「いや、いい。あの場所を放置しすぎた。少し手を入れる………ラムザの騎士団を出す。………俺も行く。止めるなよ?」


「本来陛下が行かれるべきではないと思いますが、止めれるとは思ってません」


溜息交じりでそう言われ、俺は頷きながら言葉を続ける。


「良い判断だ。レンブラントは残ってここの後始末を頼む。リンは一緒に来てくれ。隠し通路の全容覚えてるよな?出入り口全てを固める。イリアナは重臣会議で結論が出るまで拘束。………暫く頭を冷やして、己が何をしたのか考えろ」


その言葉にイリアナが不安げな、心許ない表情をする。久しぶりに、年相応の………16の少女の顔になった。


「陛下!私も同行させて下さい!!」


そう言ったのはミーシャ。ミオンとエヴァの事が心配なのだろう。その顔は必至だ。


「………ラムザとリンの傍を離れるな」


俺はそう言うとミオンを取り戻すべく、城に向かった………。

深音&エヴェンジェリン救出作戦始動です。

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