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第50話 嘘なんか吐くもんじゃない

持ってきた懐中時計を見れば、お昼近い。そろそろミーシャさんが帰って来るはず。早く、異常に気付いてくれればいいけど。やっぱり嘘なんか吐くもんじゃない。私は目覚めないエヴァンジェリンちゃんに膝枕をしながら溜息を吐いた。あの後確認してみたけど唯一ある扉は鍵がかかっていてもちろん開かないし、石壁のこの部屋は他に隠し通路があったとしても目印でもなければ探しようがなさそうだった。それに家具も何もないこの部屋は何年も使われていないようだ。私を大公、って人の所に運ぶ訳だしきっといつか外に出るはず。その時が、唯一逃げるチャンスになると思われた。そう考えた所でエヴァンジェリンちゃんが声をあげる。


「―――っミオンお姉さま!!!」


覗き込んだ私の顔スレスレでエヴァンジェリンちゃんが勢い良く起き上がった!!!


―――っあっぶな!!!


お姉さん心臓バクバクですよ。いきなり飛び起きるとは思わなかった。混乱中のエヴェンジェリンちゃんの肩をトントン叩いてこっちを向かす。


「~~~っご無事だったんですね………!!!」


これまた勢い良く抱きつかれて泣きだされてしまいヨシヨシと背中を撫でてあげる。


「ごめっ、なさ、い………イリ、イリアナお姉、さまがっ」


あぁ、そうか全部見てたんだものね………。私は顔をあげたエヴェンジェリンちゃんの涙をハンカチで拭いてあげながら頭を撫でてあげる。声がでないからね………。出来るだけにっこり笑って大丈夫、と伝える事しかできない。

それから、エヴェンジェリンちゃんが話してくれた事によると………最近のイリアナさんが何処に消えているのか気になったエヴァンジェリンちゃん。イリアナさんがいつもいなくなる部屋にこっそり隠れて見ていると、イリアナさんはラシャをかぶり隠し部屋から外に。ちょくちょく出てたみたい。

街にある裏町と呼ばれるいかがわしい『魔法の薬』とかを売っている所に出入りしていた模様。おそらくそこで今回の男達とコンタクトを取ったんだろう………。流石に中まで入れなかったエヴェンジェリンちゃんにはイリアナさんの目的までは分からず、暫く様子を見る事にしたらしい。

出来れば穏便に事を収めたかったていうのが一番大きいのかな。これ以上、変な醜聞をまき散らせば、イリアナさんの将来に影響する。例えばお嫁に行けなくなるとかね。今日はイリアナさん、特にウキウキして様子がおかしかったのでエヴァンジェリンちゃん後をつけて来たらしい。何とか隠れて難を逃れ、事の次第をディーさん達に伝えるつもりだったけれど、見つかってしまって今に至ると。


「こんな事になるなら………お父様やお兄様にお話しておくべきでした」


確かにそうかもしれないけれど、それを伝えてたら今度は軟禁じゃなくて監禁状態になっていたかもしれないし、妹としてはそれは言いにくかったと思うのよ。私は、床の埃にタドタドしく気にしないでと書く事しかできなかった。

イリアナさんが何でこんなに思い詰めたのかは分からないけど………それはエヴェンジェリンちゃんの所為じゃないし。なんでこんな事になっちゃったかなぁ………。正直言って、私が消えると言う異常事態を隠し通せるものじゃない。イリアナさんの作戦は杜撰すぎる。きっとすぐにバレるだろう。でもそこに気付かない位、イリアナさんの思考は狭まってるってことなんだろうけど。


「お兄様達は気付いて下さるかしら?」


その言葉に力強く頷く。大丈夫だよ。きっと。ディーさん達は気付いてくれる。


「―――イリアナお姉さまは………ミオンお姉さまにはキツイ事ばかり言ってましたけど、本当は誰にでも優しいんです。でもお兄様の事、好きで好きで………弱かったんですのね。現実を見る事ができなかったんですわ」


その言葉を、私は黙って聞いていた。イリアナさんの事は、正直苦手だったから弱い人って考えた事なかったし………むしろ強そうっていうか………。でも、親しい人から見たらそうなのかもしれないって思った。周りが見えなくなるほど誰かを好きになった事がないからわからないけどね。

それからエヴェンジェリンちゃんと今後の事を話し合う。私は主に筆談だったけど。一応、ディーさん達が気付いて助けに来てくれる事前提で無茶はしない事、身分はバレないようにする事………面倒な事に巻き込まれる事を嫌った男達に口封じのため殺されかねないから………チャンスがあるとすればここから移送される時と言う事を話し合った。後は騒がず、大人しくしている事。その方が相手も油断してくれるかもしれないしね。

その後、男の一人が昼ごはんを持ってくる。パンと水。そしてエヴァンジェリンちゃんにも手枷と足枷を嵌めて出て行った。正直、このご飯は食べる気にならなかった。睡眠薬の類が入っていたらと思うと手が出なかったからだ。私はエヴァンジェリンちゃんと二人、空腹に耐えながら部屋の隅に寄り掛かった。ゴツゴツした床はとても座りにくい。せめて椅子とかベットとかあればまだましなのに。この埃っぽい小部屋に押し込められていると無性に空が恋しかった。

エヴァンジェリンちゃんと二人、監禁中。ミーシャさん早く帰って来て!

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