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第46話 心は決まらない

呪いが解けた日から3日が経った。心は決まらない。フラフラと彷徨い続ける。リン先生は女神の泉の調査でいない。勉強は当分無理そうだ。まぁ、帰ってしまうのなら必要無くなる訳なんだけど。ヨランダさんが時々、ディーさんへのプレゼントの進み具合を教えに来てくれたり、ミーシャさんとお城の中を見て回りながら一日を過ごす。そんな中、エヴァンジェリンちゃんがイリアナさんに内緒でこっそり遊びに来てくれた。イリアナさん、街に買い物に出かけて今いないんだって。今はお花畑を散策中。


「イリアナお姉さまのご機嫌が最近良いんですの。お兄様の事、諦めがついたのかしら」


嬉しそうに語るエヴェンジェリンちゃん。イリアナさん最近ずっとイライラしていたのが急に明るくなったんだって。ディーさんの事、諦めがついたって言うのはどうだろう?あれだけ好き好きしてたんだし、いきなり諦められるはずもない。別に何かいい事があったんじゃないかなぁ………。何にしても、イライラしてるよりは楽しい方がいいよね?


「私も見かけましたが、表情が違いましたもの。本当、何かいい事があったのでしょうね」


そう言ったのはミーシャさん。こちらもとても嬉しそうだ。


「良かったね。エヴァンジェリンちゃん」


皆の顔に自然と笑顔がこぼれ出る。私はエヴェンジェリンちゃんに花の冠の作り方を教えてあげながら、少しほっとした気持ちになった。エヴァンジェリンちゃんの為にも、イリアナさんの明るい気持ちがずっと続けばいいなぁ………。


「できた!!!はいこれ、エヴェンジェリンちゃんに」


私の花の冠はエヴェンジェリンちゃんにあげる。エヴェンジェリンちゃんのはイリアナさんにあげるんだって。


「ありがとうですわ!ミオンお姉さま!!」


エヴァンジェリンちゃん、花の冠を気に入ってくれたみたい。やっぱり可愛い子が花の冠をすると似合うなぁ。エヴァンジェリンちゃんは、私やディーさんが森へ行った時の事を何も聞かない。何事もなかったかのように普通に接してくれる。それにとても癒される気持ちがした。

花冠を作ると言う目的を達成したので、お花を摘んで帰る事に。レンカの花も忘れず入れる。おやつの準備にミーシャさんは先に。お城に戻ってエヴァンジェリンちゃんと別れようとした時だった。


「………エヴァンジェリン………」


堅い声が聞こえて振り向けば、あちゃあ………、街に行っていたはずのイリアナさんの姿。


「………お、お姉さま………お早いお帰りで………」


「ええ………あなたにもお土産を買ってきていてよ?」


ニコリと笑うイリアナさん。あれ?機嫌そんなに悪くない??


「ケド、前に言ったでしょう?妃殿下、のお邪魔をしてはいけませんって」


こちらにツカツカとやって来るとエヴァンジェリンちゃんの手を引っ張る。エヴェンジェリンちゃんの作った花の冠がボタリと地面に落ちた。


「あっ………」


拾おうとする、エヴェンジェリンちゃんを視線で止めてイリアナさんが言う。


「なんですの。そのみすぼらしい花は。拾うんじゃありませんエヴァンジェリン。これも………」


そうしてイリアナさん、エヴェンジェリンちゃんの頭に乗っかっていた花冠も外して投げ捨てる。

流石にこれには頭にきた。私の物はともかく、エヴェンジェリンちゃんが一生懸命作った花冠はイリアナさんにあげるんだって嬉しそうに作ったものだ。それを………おそらくは私が作り方を教えたとわかっててやってるんだ。


「ちょっと!!!」


「ほらエヴァンジェリン。新しい髪飾りよ。レディーたるものやっぱり一流の物をつけなくては駄目。わかるでしょ?」


私の言葉は完全に無視して、そう言ってエヴァンジェリンちゃんの耳に小さなティアラの形をした髪飾りをつける。


「っ………!!!」


思いっきり文句を言ってやろうと思った私を止めたのはエヴェンジェリンちゃん。私の方を見て小さく首を振る。


「有難うございますお姉さま。嬉しいですわ」


その顔は今にも泣きだしそうだったけど、そう言ってイリアナさんに笑いかける。その言葉に満足したのか上機嫌のイリアナさんが私の方を向いた。


「妃殿下はお兄様に誕生日に贈る品を作らせているとか。無名の作家なのですってね………せめてキンバリーやラナスイールであれば見栄えもききますのに。ちなみにお私は兄様にはエンドールの特注品を差し上げる予定ですわ。今から考え直した方がいいんじゃなくて?」


上から目線で馬鹿にしたようにそう言う。エヴァンジェリンちゃんの前なのにお構いなしだ。


「私は、お金を出せば買える物より自分の気持ちに合った物を贈りたいから変える気はないよ」


少し言い方がキツクなったのはまだ怒っているから。その言葉にフンッと鼻で笑うとイリアナさんは扇をだして厭味ったらしく扇ぎ出した。エヴァンジェリンちゃんを掴んでいた手を外す。


「妃殿下は見る目がありませんのね」


「そうかもね。でもディーさんは分かってくれると思うよ」


その言葉にイリアナさんの顔色が変わった。いかにも不愉快だと言う顔になって私に近寄り耳元で囁く。


「ジター風情が抜け抜けと。あなたみたいなモノ妃殿下でもなんでもありません。お心優しいお兄様がまだ、あなたをその位に置いてあげているだけででょう?思いあがるのも大概になさいませ」


その言葉に、思わず目を剥く。まだ、呪いが解けた事は城内の一部の人しか知らないはず。でもこの口調は………?まるで、私とディーさんの婚姻の制約が無くなったのを知っているみたいだ。


「イリアナさん………あなた………?」


何を知ってるの?と聞こうとして見れば、イリアナさんは先程エヴァンジェリンちゃんが落とした花冠を踏みつける所だった。エヴァンジェリンちゃんの顔が哀しそうに歪む。そのままエヴァンジェリンちゃんの手を取ると振り向いて嬉しそうに笑った。


「ごきげんよう!ミオンサマ?」


そう、思わせぶりに言うとエヴェンジェリンちゃんを連れてサッサと行ってしまう………。後には踏みにじられた花冠が残るだけだ。私は溜息を吐きながら二つの花冠を拾うと、イリアナさんの言った言葉の意味を考えながら部屋へと向かった………。一抹の不安を抱きながら。



エヴァンジェリンちゃんの作った花冠おもいはイリアナさんに届かず………。

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