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第3話 ヘイカってどちらのヘイカでしょう

―――がっでむ。


私が神様に心の中で悪態を吐いていると他にも何人かいた虎さん’Sのうち黒っぽい虎さんがやってきた。


「陛下、ミオン様もきっと急の事でお疲れでしょう。そろそろ城にお戻りになりお休みになった方が」


ヘイカ? どちらのヘイカでらっしゃいますかディーさん? 

つーかそもそもヘイカってなんだっけ??


「あぁ、そうだな。ジュド―。………?どうしたミオン?」


ディーさんがまたしても固まった私に心配そうに顔の前で手を振る。


「ヘイカ?」


「? あぁ」


「それってぞくに言う国王なんちゃらじゃないわよね?」


「なんちゃら、と言うのがなんだか良くわからんが。確かに俺は大虎族ルーヴェンシアの国の王だな」


「………でたよっ!!! 王子とか王様とフラグ立つって召喚ものじゃ王道だけどもさ!! しかも、もふもふしてる王様の伴侶なんてどう考えても荷が重すぎるしっ」


いきなり頭抱えた私をヘイカがドウドウといって宥める。私は馬じゃないぞう。


―――何て言うか………パトラッシュボクはもう疲れたよ。


考えるのもメンドイが私はいきなり召喚されて来てみればこの国の国王陛下、虎:分類獣人の花嫁、無茶だ;しかも本人の意思を無視して強行決定………らしい。

夢なら覚めろ。

いや、夢じゃないのは分かってるケド。どーすんだよ。きっと元の世界で大学生失踪、とか色々ある事ない事言われるんだろうな………。はぁ。

取りあえず、黒虎さんの言った事に乗っかる事にする。だってここ寒いんだもん。お腹だって律儀に減ってるんだもん。あぁ、でもご飯で生肉とかでてきたらどうしよう。


「っくしゅ」


小さくくしゃみをしたらディーさん、絶対陛下と呼ぶもんか、がマントをかけてくれました。

さすが紳士だね! でもいいのかな? マント引きずってドロンドロンになっちゃうよ?


            

             ※         ※         ※



移動して馬車に乗りました。

心細そうにしたのがバレたらしく、馬に乗ろうとしてたディーさんも急遽馬車に。

だってさ、皆酷いんだよ。さすがに召喚現場にいた人たちはしれっとしてたんだけど、ディーさんが花嫁を連れて出てくる事は周知の事実だったらしく、お外に出たら随従の人たちが『わーっ陛下おめでとうございまーすっ』て感じだったのに、私が出たら『しーん』て。漫画じゃあるまいしって思ったけど! みんなの頭の上に『しーん』って見えたよ!! マジで!!! すんごいイタタマレナカッタ。

気持ちはわかるよ? 気持ちはさ。でも私の気持ちも考えて!!


「ディーさん………やっぱ無理だよ。結婚やめようよぉ………。皆のあの顔見たじゃん。国民全部にあの顔されんの耐えられないよぅ。そもそも私好きな人と結婚したいし!!」


「問題ない。神々がお決めになった事だ。皆そのうち慣れる。………後はミオンが俺を好きになればいい」


問題ありありじゃん。ヒトの感情ってそんな割り切れるもんばっかじゃないでしょう。

幾ら神様のご命令だとはいえ、もし私が敬愛されてる王様の部下でみょうちきりんな嫁を連れて来られたら嫌だもん。『陛下っご乱心っ☆』てなっちゃうよ? それともこの世界では神様の言いつけは護らないとバチがあたるとかあるのかな? 

幼い時に両親亡くして天涯孤独の身としてはあんまり神様とか信じてないんだけど。

ん? 『ミオンが俺を好きになれば』って?


「え”?! ディーさん私の事もう好きなの?!」


「いや、さすがにまだなぁ………だが、そのうち好きになる」


いやいやいやいや。宣言されても。ヒトの感情ってそんなに割り切れるもんでも、以下略。

つーか、俺は好きになる! お前もなれ!! と言われて恋愛感情育つなら苦労しないわ!!!

そもそも、私を最初に見た時なんか文句言ってたじゃん。

絶対『コレが俺の嫁か?』って感じだったもん。宥められててさ。


「無理だよ!! そんな簡単に好きになるわけないじゃん!!! そもそも種族が違いすぎマス-」


断言したら、ちょっと哀しそうな顔されました。

うわっズルっ。そんな顔されたらネコスキーとしてはナデナデしたく………あぁいかん。正気にかえれ私。相手は猫じゃない。虎だ。


「まぁ、取りあえず帰れんのだし徐々に慣れていけばいいと思うぞ」


そーだよな。取りあえず帰れんのだった。

この世界で暮す事が決定なら慣れてくのは必要だ。結婚しない方向に持ってくとしても一人で生きられるスキルは手に入れたい。あぁ、友達できるかなぁ………。

つーか、嫁かず後家決定か。さよなら私の青春☆グッバイ私の日常☆


「んーじゃ、取りあえずこの世界の事は勉強したいなぁ。生き抜くスキルを手に入れないとね」


「ミオンは随分冷静だな。以前来た異世界の者は泣き喚いて大変だったと聞く」


「え? 前任者いるの?? 人間で?」


「ニンゲン? それがお前の種族の名か? いや、我等と同じだったらしいが。そもそも100年位前の話だしな。―――普通、女とはそう言った時泣くものだと思っていた」


押し通すき満々だったからその辺考えてないのかと思ってたよ。

一応、拒否されたりとか、泣き喚かれたりとかするのも視野にはいってたのね。


「だって泣き喚いたって現状変わらないじゃない。体力使うだけだしー。それに私のモットーは柔軟な思考ですから。臨機応変に対応しないとね?」


「そうか。助かる。まぁ、別に我等を助けるためにそういう考え方をしている訳ではないだろうが。泣かれるのは苦手でな」


ふむ。覚えておこう。何かあったら絶対泣いてやる。


「召喚て割と頻繁に行われてるの?」


「いや? 他国の事は知らんが、ミオンで5人目だな」


「前任者が4人かぁ………その人たちって何で呼ばれたの? んでどうなったの??」


「皆、国王の妻になったな。普通に天寿を全うしたぞ。中には国王亡き後、王子が成人するまで摂政として政権を握った者もいる。気になるならお前の教育係に教えるように言っておく」


みなさん王妃デスカ? うわあこれは聞くんじゃなかった。

てか王妃探しのためだけに召喚してるのかこの国は。

しかも天寿を全うって事は皆帰れなかったんだね………。


「うーん、じゃ、オネガイシマス」


何にしても知識は必要ですからな。しっかりこの国の事勉強しましょう。


「ところで、ミオンは元いた世界で何をしてたのだ?」


「うーん? 学生だよ?」


「学生、と言う事はそれなりに財力のある家の子女だったという事か?」


「いやいやとんでもない。私、天涯孤独だしねー。奨学金貰ってバイト………仕事しながらの生活だよ。そもそも、私がいた世界、勉強はしようと思えば出来る制度が整ってるからね」


「そうなのか。悪い事を聞いた。………しかしお前の世界は進んでいるのだな」


「うーん。科学っていうのが進んでるけど。かわりに神様とかの力で召喚とかはないからなぁ」


「カガクというものはなんだ? ミオンの世界はどんな所だったのだ??」


「いわゆる鉄の馬車が馬なしで走ったり、鉄の鳥が空を飛ぶのが科学だよ」


ってベタベタな説明したら目を輝かせて話に喰いつかれました。

だーかーらー車の構造や飛行機の原理なんてわかんないって!! ディーさん喰いつき過ぎ。

苦労は絶えませんが深音前向きに行動中です。

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