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第35話 一人でお散歩

あの後、図書館の絵をくまなく調べた所、窪みがあるのはあの絵だけだけだと分かった。となると俄然、夢の中の少年の言葉の信憑性が増してくる気がする。しかしあれから、女神の夢も、あの少年の夢も全く見ない。向かっている方向があっているから見ないのか、単純に私の感知能力的な問題なのかは分からないけど平穏な日常が戻りつつある。私は暇な時間を見つけては少しずつ歩いて体力を回復させていた。今日は、一人でお散歩。ディーさんはお仕事だし、ミーシャさんはお使いに出ているからだ。

体力もだいぶ回復してきたので、リン先生の授業もそろそろ再開かと思われた秋の終わり、私は庭で出来れば遭遇したくない人と向き合っていた。


「こんにちわ………イリアナさん」


「ご機嫌麗しく………妃殿下」


その声は氷のように冷たい………前に視線を感じた時にも思ったけど、彼女は取り繕う事を辞めたようだった。それとも、今は私一人だから取り繕う必要が無いって事なのかな?妃殿下の部分に憎しみが込められていたのは気の所為じゃないハズ。挨拶はしたので早々に立ち去ろうとしたら、意外、イリアナさんが話しかけて来た。


「お加減が悪かったのですってね。お見舞い申し上げますわ」


「………お陰さまで大分いいですけど………アリガトウゴザイマス」


お礼がカチコチになったのは、イリアナさんの眼力が増したからだ。


「陛下がお仕事がお忙しい中ついてらっしゃったとか。とても心配されてましたのね」


言葉の端々に鋭利なトゲがミエマスヨ?


「そのようですね。ヘイカにはご迷惑をかけてしまって………」


ヘイカと呼んだのは己の身の危険を感じたから!!!ディーさんなんて呼んだら睨み殺されそうな雰囲気なんだもの………。


「そうですわね。妃殿下にはもっと自覚を持って頂かないと。王の妻たる者、体調管理もできないのでは困りますわ」


あぁ………それを言いたかったのね?妃殿下失格って。

そしてイリアナさんは目を細めて私の首元を見る。そして憎々しげに一言。


「妃殿下には、アイスブルーのお色が似合いませんのね。元々肌のお色がお悪いから余計に………無様ですわ」


その言葉にカチンときたものの、頑張って抑える。私のお気に入りになんて事を!!!あっちは喧嘩を売ってるわけじゃない。嫌味を言いたいだけ。言いたいだけ………。言いたいだけ!!くっそー、エヴァンジェリンちゃんのお姉さんじゃなかったらやり込めてやりたい。


「そうですか?でも気に入ってますから」


100万ドルの笑顔発動。これでもかって位に「あなたの言う事を一々気にしてられませんの」との思いを込めて微笑む。


「首飾りも可哀想に。(つける首がこれじゃあ)折角良い品ですのにねぇ?」


言葉と言葉の間に幻聴が聞こえたよ?つーまーりー、プレゼントしてくれたディーさんのセンスは素晴らしい。品物ももちろん素晴らしい。素晴らしくないのはチョーカーをつけてる私って言いたいのね?

おかしい、ディーさんの事諦めるどころか私への憎しみ度が上がってる気がする。話している間に広げた扇で口元は分からないケド眉間の皺がドンドン深くなっているんだもの。お姉さん、綺麗なお顔がダイナシデスヨ?


「ミオン?………それにイリアナか?」


突然現れた救い主はディーさんで。どうやら午前のお仕事が終わって帰る途中だったらしい。仕事の束を小脇に抱えている―――ホッとしたのもつかの間、イリアナさんの変わり身に驚愕。


「陛下!!!お兄様………お久しぶりですわ」


さっきの眉間の皺は何処へやら。恋する乙女が御降臨です。なんか私は一気に疲れたよ?


「二人は知り合いだったのか。何を話していたんだ?」


「妃殿下のお加減を窺ってたのです。体調をお崩しになられたと聞いて心配で」


言う言う。さっきまでの会話はそんなのじゃなかった。


「そうそう、心配してくれたみたい………。あはは」


もはや、乾いた笑いしかデナイ。


「ミオン大丈夫か?疲れてるようだが………」


「ちょっと頑張って歩いたからかなぁ?」


「あまり無理はしないでくださいませね?病み上がりのお身体なんですもの………」


心配そうに言うイリアナさん。役者だ。目は正直だけど。真正面から見なきゃ気付かないだろうしなぁ。イリアナさんの言葉に力強く頷くディーさん。


「そうだぞミオン。無理はするな」


ディーさんがそう言って私の肩に手を置く。イタイ、イタイ、イタイヨ。イリアナさんの視線が刺さってる。


「その様子では一人で帰らせるのも心配だな、ミオン一緒に帰るぞ?じゃあな、イリアナ」


心配症のディーさんがそう言えば、イリアナさんの殺気が増す。今なら目からビームとか出そうだ。


「え、ええご機嫌よう。お兄様、妃殿下」


お譲さん。畳んだ扇子がミシミシいってマスヨ?ディーさんこれで良く気付かないなぁ………イリアナさんの気持ちもまっっったく気付いてないんだろうなぁ………。そんな事を思いながら、ディーさんと二人その場を後にした。その後、イリアナさんが地面に扇子を叩きつけたのが視界の端に映りましたよ。そのまま、扇子を踏みつける勢い。本当ディーさんこれで良く気付かないよなー。そう思ってじーっと見つめれば、不審げなディーさんと目が合って。


「どうしたミオン。俺の顔に何かついているか?」


「んーん。目と鼻と耳と口がついてるだけだよー?」


私はそう言うと大きく溜息を吐いた。ああ言ったやり取りって慣れない。せめて回りくどくなくズバッと言ってくれればまだましなんだけど。身体が本調子じゃないせいか異様に疲れた。


「そ、そうか?」


私の投げやりな様子に、ディーさん戸惑い中ですな。でもイリアナさんの事、告げ口する気もないんでそのまま何も言わずに一緒に部屋に戻る。ミーシャさんがお使いから帰って来てて美味しい紅茶を淹れてくれた。心癒されるわぁ。今日のイリアナさんはまだ序の口って感じだったしな。先が思いやられる………。まぁ、二人きりで会う事もないとは思うけど………。エヴァンジェリンちゃんが時々隠れて会いに来てくれてるのもバレないようにしないとまずそう………。エヴァンジェリンちゃんがイリアナさんと気まずくなるのも可哀想だ。仲良く、なんてものは無理でももうちょっと関係改善できないものか?



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