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第32話 二人で外をお散歩

午後になってディーさんが帰ってきたら二人で外をお散歩。階段の上り下りだけでこんなに疲れるなんて、どんだけ体力落ちてるの私。それでも、庭の散策は、いい気晴らしになった。ずっとベットの上じゃあねぇ………。こりゃ、体力戻るのに時間かかりそう。時折、躓いて転びそうになるので、ディーさんと手をつなぐ。

視線を感じてみてみれば、二階の渡り廊下のにイリアナさん。もはや取り繕う事もなく凄い形相で睨まれています。あちゃあ、と思ってるとそのまま踵を返して行ってしまった。完全に誤解されたコースだな。でも、エヴェンジェリンちゃんとの約束もあるのでこのまま誤解されてた方がいいのかもしれない。今なら少し嫉妬と言う気持ちが分かる。疑似体験したからね?あんな思いを何時も抱えてるんじゃ苦しくてしょうがないはず。

私が図書館に行ってみたいと言ったので、ディーさんと移動。図書館は、ドーム型の屋根が素敵な洋館でした。所蔵数半端ない。街の図書館なんて目じゃない感じ。


「………コレの中から資料さがすのかぁ………」


なんか小石の中から宝石探せって言われてる気分。


「一応、館長に蔵書の中から呪いの王子の話と資料を選別するように言ってあるがな」


それでも、膨大な量になるという。


「先は長いねぇ………」


「俺も暇なときは手伝うが、正直短くはないな」


「困ったね。こう言う時、夢で場所を教えてくれればいいのに」


「正直俺はもう女神関係の夢をミオンに見て欲しくない」


溜息を吐かれてみれば、その意見には賛成なんだけどさ。こんなぶっ倒れる事態避けたいもの。


「出来ればそうだけど………。このままだったらと思うとさ」


「焦りは禁物だミオン。焦りは判断を鈍らせる」


「そだね。怖い夢を見たらディーさんが起こしてくれるしね」


「あぁ。傍にいる。大丈夫だ」


ディーさんがそう言ってくれると安心できる。

部屋に戻ればディーさんはお仕事をするので、私は、現状で纏まってる資料を借りて行く事に。結構沢山あったので、取りあえず、目についた一冊を持っていく事にする。他の資料は後で部屋に持ってきてもらう事になった。ディーさんと二人、図書館を後にして庭を歩けば、薄曇りだった空が晴れて太陽が覗く。庭の木々や花々が生き返ったようにその色彩を鮮やかにした。


「そう言えば、ミオンに礼を言ってなかった。レンカの花をありがとう………かなり癒された」


「そっか、良かったぁ。そう言えば、悩み事は解決したの?」


「解決はしてないな。だが、まだ起こりもしない事に恐怖するのはやめた。そのせいで、今ある大切なものを失うのはごめんだ」


ディーさんの真剣に言う顔は少し苦痛に歪んでいた。


「確かに、まだ起こってないのに、あーだこーだ言ったって実際その時になってみないとどうなるかなんて分からないものね」


「そうだ。それに費やす時間が勿体無い………それにミオンがあの夢を見て倒れた時、考えてもしょうがない不安に囚われず、俺がもっと早く帰って来ていればこんなことにはならなかったのじゃないかと凄く後悔した」


「ディーさん………」


「………起こってしまった事はもう戻らない。だがこれからは、そんな後悔はしたくない」


「ディーさんはちゃんと私の事助けてくれたよ。私、嬉しかったしとっても安心できた」


「それでも、だ。俺はこんな形でミオンを失いたくはない」


そう言って頬に触れたディーさんの手は暖かくて、無性に安心できる私がいた。


「うん。ありがと」


二人揃って庭を後にする。部屋に帰ればミーシャさんがいつもの笑顔でお帰りなさいと言ってくれて紅茶をいれてくれる。ディーさんはそのままこの部屋でお仕事。私は持ってきた本を読むことにした。

書く方はまだまださっぱりだけど、読むほうはまだなんとか読めるようになったんだよね。難しい言い回しとかは分からないけど。持ってきた本はどうやら女神と王子の神話だったらしい。とても古い感じの本で、良く見ればどうやら初版本らしい。あんまり適当に持ってくるのは良くないね。そう思いながらもパラパラと本をめくる。特に進展はない。ディーさんに教えて貰った女神様と王子の神話が書かれているだけだ。諦めて本を戻そうと思った時、ちょっとした違和感に気付く。装丁の厚みが表と裏で違ったのだ。失敗したのだろうか?でもそれにしては装丁が綺麗に張られている。


「?」


私は本の内側、まるでそこだけ失敗したようにはみ出た装丁を引っ張った。すると、いきなりふたが開き中にはもう数枚の紙が入っていた………手紙だ。そこだけ空洞になってて隠せるようになってた訳だ。私は慌ててそれを取り出すと。神話の本を横に置く。


―――いつかこれを発見してくれる人へ


出だしはそう、拙い字で書いてある。


僕の名前はディークラウド・ウル・ガ・エルディス・ルーヴェンシア。女神の息子。父上はこのまま自分が愚かだった事にして神話を書かせるようだけれど、僕はそれは我慢できないのでお願いしてこれを残して貰う事にした。いつか誰かがこれを見つけて父上の哀しみを理解してくれるように。

父上は、母上を裏切る気なんて全くなかった。あの森に戻るつもりでいたんだ。だけど、僕のおじい様はそれを許さなかった。身分もない、森で出会っただけの小娘を王妃に据える気はなかったんだ。

だから、父上を幽閉し、又従兄妹の女性と無理矢理結婚させ母上が僕を連れて来た時、王子は喜んで又従兄妹と結婚したと嘘を吐いた。

後は、神話の通りだ。怒った母上に、又従兄妹の女性は石にされ、父上は呪いを受けた。おじい様はあまりの事態にお倒れになり、結局父上が王位を継いだ。

父上は、呪いをかけた母上を今でも愛している。傷つけてしまったと哀しんでいる。母上はが住んでいた森は消えてしまってもうない。父上は母上に呼び掛ける術を失ったとおっしゃる。森の泉がもうないからだ。僕にも、済まない事をしたと何時も言う。自分の所為でお前は母の愛を知る事ができないと。

でも僕は、母上の誤解が解ければきっとここにいらしてくれると信じている。父上は、近々泉を再現するとおっしゃっていた。そうすれば母上に心が届いてお怒りをといてくれるかもしれない。僕はきっとそうなると信じている。


『かあさま………かあさま?どこ??』


そう言った声が聞こえた気がした。この男の子の願いは叶わなかったのだ。女神は帰らず神話がハッピーエンドに変わる事はなかった。女神は王子が無理矢理結婚させられた事をまだ知らないのだろう。そして今もどこかに隠れている。苦しくツライ心のまま。私は大きく溜息を吐くとその場に手紙をそっと置いた。

ちょっと進展。神話に新事実発覚です。

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