第28話 皆のお土産買いました
帰る前に皆のお土産買いました。ディーさんと一緒に選んだの。楽しかった
。ミーシャさんにはシラハと言う植物から採れた少し甘い香りの香水。瓶がエジプトとかの香水瓶みたくてとても可愛い。リン先生には異国の本。これは完全にディーさんに選んで貰った。リン先生異国の初版本集めてるんだって。ヨランダさんにはレテゥカという発音しにくい布の切れはし。切れはしと思うなかれ。コレは中々出て来ない品らしい………古代の民族衣装なんだって。不思議な意匠の刺繍には一見の価値あり。これが額に入ってる。そして、最後に我儘言って白のレース刺繍のリボンを買って貰いました。金具がついてて耳の所につけるタイプね。馬鹿でかいリボンですが、なんかコレ見た瞬間エヴァンジェリンちゃんの顔が出てきちゃったんだよねぇ。コレ着けたら可愛いなぁと。そんなこんなでお土産を持ってお城に帰還。
でも、さっきからディーさんの様子がおかしいんだよね。あんな事があったから仕方がないのかも知れないけど………。ルーザから降りる時も私の事暫く抱きしめたまま動かなかったし。あのおばあさんに何を言われたんだろう………?
お土産は今日のうちに渡しちゃえと言う事でその足でリン先生の所に。行ってみてビックリ。リン先生、文部省ならぬ文化技術省の大臣さんだった………私、エライ人に勉強教えて貰ってたのね。いつも忙しいんじゃなかろうか? リン先生自体は私のそんな心などお構いなしにお土産とても喜んでくれたけど。次に、今日はドレスの採寸の為お城に来ていると言うヨランダさんの所に。お城の中に簡易採寸所みたいな所があって、―――豪華だったけど。お城から受けた御用命の服の採寸は普通ここでやるそう。ここでも大喜びされました。「一生大事にするわぁ☆」と満面の笑み。最後にミーシャさん。
「おかえりなさいませ。陛下、ミオン様。飛竜乗りは楽しかったですか?」
「ただいま! ミーシャさんすっごく楽しかったよ!!! これお土産。ディーさんと選んだの」
「まぁ! 私にですか?よろしかったのに………」
受け取ったミーシャさんとても嬉しそう。
「シラハですね。嬉しい。この香り好きなんです。瓶も可愛いですわ」
「良かったぁ………あとこれなんだけどね? こっそりミーシャさんからって言ってエヴァンジェリンちゃんに渡して貰えないかな?」
「ミオン様からではなく私からと言ってですか?」
「うん………そのちょっと、お姉さんのイリアナさんに嫌われてる気がして、私からだとあんまり気持ち良くないかなって」
そこで二人ディーさんを見ながら声を沈めて話す。
「………お気づきだったのですね………あの子は幼いころから陛下のお嫁さんになるのが夢で………誰も陛下の呪いの事を教えてなかったものですから、大人になってそれを知った時には泣いて泣いて大変だったんです。あの子のあれは、ミオン様が嫌いなんじゃありません。陛下のお嫁さんになる人はきっと皆嫌いになっていたと思います………できれば許してあげて下さいね」
そうだったんだ。どうして誰も教えてあげなかったんだろう………。その思いが顔に出ていたのかミーシャさんが苦虫をかみつぶしたような顔で一言。
「叔父も、叔母もどちらかと言うとボーっとした方ですし、神話もありますでしょう? 皆が皆イリアナが知っていると思っていたようです」
それで、大きくなるまで知らなかったんだ。なんか脱力。
「理由は分かったよ。特に何かされてるわけじゃないし私が許すとか許さないとかはないから大丈夫。………これ渡してもらえる?」
「分かりました。今日帰る時に寄って私からと言って渡しておきますわ」
「有難うミーシャさん」
満面の笑顔で言えば大したことじゃありませんもの、とミーシャさん。
「そう言えばミオン様素敵な首飾りをしてらっしゃいますね?」
「うん。ディーさんに買って貰ったの」
「陛下ったら。自分の瞳の色と同じ宝石を贈るなんて………意外と独占欲とかあったんですねぇ」
「え?! そんなんじゃないと思うよ? なんかこの見た目に私が惹き付けられて立ち止まったから買う事になったんだし」
「そうなんですか? 陛下もやっとその辺の機微が分かるようになったのかと思ったのですが………」
「も、もしかして皆そう思うかな?」
「多分、皆そう思いますねぇ」
どうしよ!!! 大変なものを買って貰ってしまった。
「ミオン様。はずしたら陛下がおかわいそうですよ?」
「えぇ?! だって誤解が大変だよ?」
ちょっと涙目になりながら混乱気味に言うと、ミーシャさんが駄目です。と念を押す。
「殿方からのプレゼントですよ? 暫くはつけてあげないと………それに誤解はもう生まれてますからね。今更取り繕っても………残念ながら無意味かと」
しおしおしていく私を見て気の毒そうにミーシャさん。きっぱり言うなぁ。私はでっかく溜息を吐くと降参の意味で両手をあげた。今更取り繕った所で遅いってことね。いいでしょう。女は度胸。ディーさん色のチョーカーをつけ続けてやる。
そんなやり取りを二人しているのにディーさんは一向にこちらを気にする風ではない。
何か独り考え込んでいる。
「ミオン様………陛下は何かあったのですか?」
「うーん………実は………」
そう言ってオアシスであった出来事をミーシャさんに説明。
「不思議な占い師の方ですね………それから陛下のご様子がおかしいと」
「うん。お城につく頃にはすっかり無口になって………お土産渡す人達の所には案内してくれたんだけど後は生返事なんだよね………」
「困りましたねぇ………」
「せめておばあさんが言った事が分かればいいんだけどね。暫くはそっとしておいた方がいいみたい」
二人一緒に考え込んでるディーさんをみると、同時に溜息を吐いた。
「では陛下は放っておいて、夕食の準備をしますね。ミオン様暫くお待ち下さい」
そう言ってミーシャさんは指示を出しに外に行ってしまった。準備ができるまでこのディーさんとまた二人っきりだ。
「ミオン………」
突然名前を呼ばれて驚く。
「? どうしたのディーさん」
「お前はもし自分の世界に帰れるとしたら………帰りたいよな?」
「え? だって帰れないじゃん。でもそうだなぁ………できれば帰りたい………かな? ………なんで?」
「いや、ふとそう思っただけだ」
そうか………帰りたいよな、と呟くディーさん。なんかディーさんの背後に落ち込んでる感じの空気が広がっております。
でも正直微妙なんだよね。あっちに家族がいるわけじゃないし。友達はいるけど、友達ならこちらにも出来た。しかも家族みたいって思える友達が。
でももし呪いが解けたら私はここにいる意味がなくなってしまう。本当はそれが一番怖い。だから、そうなったら帰りたくなるかもしれない。あちらでだったら私ちゃんと結婚できるし………多分ね?。
そしたら家族がつくれるわけでしょ? 一人寂しい余生を送らずに済むじゃん。
私は家族が欲しいの。ディーさん。
呪いが解けてディーさんがお嫁さんを貰ったら私の家族はここにいなくなってしまう………。
私は一人、そんな暗い考えに頭を振った。もやもやした考えを頭の中で手を振って追い払う。
「ねえ………大丈夫?」
「うむ。問題ない」
「あんまし問題なくなさそうなんだけど………」
「そうか? 俺は大丈夫だ」
全然駄目そうなんだけどなぁ………。早くいつものディーさんに戻って貰いたいものです。会話もできないなんてちょっと寂しい。考え事に戻ってしまったディーさんに私はそっと溜息を吐いた。
ディーさんの不安と深音の不安。話せばきっと分かりあえるはずなんですけど、すれ違い。