第2話 ツマって刺身についてるアレデスカ?
ツマ? 今何とおっしゃったでしょうか?? ツマと???
「ツマって刺身についてるアレデスカ?」
銀色の虎さんにボー然と聞けば案の定。
「さしみ? さしみとはなんだ?? それも妻なのか?」
お約束☆な答えが返ってきた。えええ-?! 聞き間違いじゃなければ妻だよねっ☆
つーか、種族も体格も………普通の人間より一回り位おっきい―――抱き枕にはなんかよさそう☆
じゃなくて………違い過ぎるだろ! 色々。神々とやらは何考えてるんだ!!!
クーリングオフを要求する!! つーか虎さんにして頂きたい。
「種族も違けりゃ、体格も違うじゃん!!!」
「それは、俺も驚いた………。こんな無毛の………その………スマン。しかし神々の定めた事だ。しょうがあるまい」
いやいや。しょうがなくないから!!! そこ!! 諦めない!!!
しかも人をハゲみたいに扱うな!!
無毛のあたりで目を逸らすな。あんたらにとっては無毛=カワイソウかもしれないが、私の種族の中ではいたって普通です! 胸ないけど。むしろボーボーだったら乙女的に大問題だ。
「あきらめちゃだめだよ!!! 虎さん!! きっとあなたにピッタシの素敵彼女がどっかにいるよ。神様にもう一度頼もう!!! ついでに私を元いた世界に!!」
拳を握り込んで力説すれば呆れたようにため息を吐かれた。
「―――虎じゃない。………無理だ。神々に願えるのは一度と決まっている。所でお前名は???」
「え? 神埼 深音デスガ」
神様、神様? 一回しか願えないのに何やらかしてくれちゃってるんですか?? もし、会える事があったら神であろうとかまうもんか。絶対ナグッテヤル。
そんな事を下を向いてブツブツと呟いていたら虎さんに頤をあげられました。
「カンザキ ミオン。俺の名はディークラウド・エル・ガ・シザリオン・ルーヴェンシア。今これよりお前を生涯愛し、守り抜くものだ」
無駄に長い名前はお貴族様ですか? そういや着けてる鎧とか、服とか上等ですものね??
―――というか何一人で納得してるんですか?!
私はディークラウドゥ………あ。噛んだ。なんちゃらさんの妻になる予定はありませんが!!!
「は? ちょっと待って拒否権は?!」
「………神々が決めた事に否やはない」
何度目かの盛大なため息の後、断言されました。私、どんだけオロカモノと思われてますか?
私はちゃんと常識人、のハズ。
「だって色々問題あるよね? ええっとディーさん?? 私なんかお父さんお母さんに紹介したら吃驚して腰抜かしちゃうよ」
「………まぁディーでいいが………俺の父も母も既に儚くなって久しい」
儚くってあれか。死んじゃってるってことだよな。
「えーっと、それはご愁傷様でした???」
「お前は可笑しな女だな。まだ、幼いカンザキ ミオンにいきなりこの世界で暮せというのは可哀想ではあるがこれも定め。諦めてくれ」
憐れむような視線がイタイ。
「いや、幼くないし。成人まであと半年だし。それに………神埼は名字で名前は深音。つなげて呼ばなくていいから」
出来れば胸が小さいからっていう判断基準で幼いと言われてない事を祈る。
「そうなのか?! 俺はてっきり………いや、一応聞こう。年は? それとミョウジとはなんだ?」
「あー、年は19才だよ。名字っていうのは………ん-説明しづらい。取りあえず深音て呼んで」
「そうか、ミオン。お前が19………。我等の世界ではとっくに成人している事になるな」
なんですか? その信じられませんって顔は!!! 日本人は童顔なんです。あ。顔じゃなくて体型でか?! そんなのそっちがでっかいんじゃん。
「それなら話は早い。言うのは酷だが、速く我が国に慣れて貰っていずれは我が子を産んで貰わねばならん」
頭が真っ白になりました。我が子?子供って赤ちゃんですよね??それを誰が産むと?
「え、無理だよ無理無理。なんかもう色々………私取りあえずトイレに戻らせて………」
そんな飽和状態の脳みその私が取った行動は回れ右をする事でしたが、そこにはもうトイレの扉なんてありゃあしなかった。
「………ありえない………。私あのまま入ってたら戻れたんじゃん??」
ボー然と呟けば憐れみの表情を再び浮かべたディーさんと視線が合いました。
うおぉお―――神々に呪いあれ。




