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第26話 これでどうやって空を飛ぶんだろう

ルーザってなんだかとっても不思議。身体の割に羽根は小さい。これでどうやって空を飛ぶんだろうと思ったら、デッカイ羽根がでてきて4枚羽根になりマシタ。収納式でいらっしゃいましたか。

軽く羽ばたいてから伏せの状態になったルーザの上にディーさんが手を貸して乗っけてくれる。

そんな私の胴にディーさんは首輪みたいなベルトを巻きつけた。その先は鎖に繋がっていて、さらにその先は豪奢な鞍にガチャリと嵌められる。コレはあれか。シートベルトみたいなもん? って思ったら何故かディーさんは着けずに私の後ろに乗った。


「? ディーさんはコレ着けないの?」


チャラリと鎖を持ち上げて言えばディーさん頷きながら一言。


「ミオンは初めてだからな。方向転換の時に落ちたら困る。子供用のものだがないよりはましだろう」


がーん。子供用ですか? でも落ちるよりマシか………。しかしちょっとショック。

鞍は二人乗り用らしく、鐙が二人分ついていた。ディーさんがさっき調整してくれてたので足の長さにぴったりだ。私は、鞍についていた取っ手みたいなものを握るとディーさんにこれでいいかと目で合図。

頷いたディーさんがルーザの手綱を握る。ククンと二回引っ張るとルーザはブルリと身体をゆすり立ちあがり、一気に羽ばたいて空へと飛びあがった!


「?!」


一気に上昇するルーザ。不思議とGはかからない。しかし、旋回した所で私の身体が少しずれた。一瞬ひやりと心臓が縮む。命綱はありますけどね? それでもぶら下がるのは勘弁です。


「ミオン。足で鞍を挟め。その方が安定する」


昔バイク乗りの友達に二人乗りして貰った時の事を思い出す。『深音! あんた足でシート挟んでよ! 安定しなくてカーブ怖い。このままだとコケル。後、曲がる方、下見ない。まっすぐ見てて』と怒られた。私が曲がるほうばっか見てて怖くなるから身体が逃げちゃって運転手としてはもっと車体を倒したいのに倒せなくて怖かったと後で聞いたっけ。ルーザに乗るのもバイクに乗るのと同じ要領なのかも。


「分かった。こうね」


そうして挟んで見せれば満足そうに頷くディーさん。


「見てみろミオン。あれがシイナイ山脈だ」


ディーさんの指の先には雪化粧した切り立った山脈。あんな遠くからお城の水は流れてきてるんだ。

そして下を見ればお城がかなり小さくなってる。お城は丘の上に建ち、すそのには所狭しと家々の建った大きな街。更に遠くには外壁に囲まれた農地も見える。お城の後ろの森はかなり広いけど街とお城をぐるりと囲んだ外壁の外に広がる森に比べたら可愛いものだ。

ここは森の中の王国なのだ。それを改めて認識した。

空の空気は澄んでいて、少し冷たい。でも不思議と服は地上にいたときより暖かく感じる。全然寒くない。むしろ冷たい空気を心地よく感じるくらい。


「凄い景色だねぇ………なんかこれだけで感動!」


「そうか? だが、感動するのはまだ早いぞ? 今日は普段行けないような所に沢山行こう。同じように綺麗な場所をミオンに見せてやる」


「うん。楽しみ☆」


ディーさんが再び手綱を引く。ルーザは羽ばたき山脈の方へと羽根を進めた。ルーザのスピードがどんどん速くなり羽ばたきの回数は少なくなる。


「大丈夫か? ミオン」


「へーきへーき! 私、絶叫系好きだしもっと早くても大丈夫。ジェットコースターみたいで楽しい~!」


「ジェット………? ミオンの世界の乗り物か? まぁ、楽しんで乗って貰えればこちらも有難い」


「ジェットコースターは遊ぶ所にある乗り物。回転したりとか、いきなり急降下したりとかするの!」


ディーさんふむ、と頷くといきなりルーザを急降下。森すれすれまで降ろす。驚いた鳥たちが抗議の鳴き声をあげて飛び出した。


「きゃ~☆面白い~!!!」


「流石にミオンを乗せて回転は危ないからな。まぁ、急降下なら時々してやろう」


「あ、回転できるんだ?」


「あぁ、もうすぐ豊穣祭の季節だしな。その時の出し物で飛竜の連帯飛行があって回転は当たり前にやるし他にも煙幕を積んで空に文字を書いたりするんだ。飛竜乗りは大抵それらが出来る」


ふむふむ。私のいた世界で飛行機が連帯飛行するのと同じ感じですな。


「豊穣祭っていつやるの?」


「麦や米の収穫が終わったらするな。来月の下旬頃になると思う」


「それも楽しそう!」


「安心しろ。王族には参加の義務がある。ミオンにはちと大変な思いをして貰う事になるがその頃には式典用の儀礼も覚えて貰わねばならん。………お堅いのは最初だけだ。式典が終われば後で街にでも抜け出せばいい」


「そっかぁ、頑張んないとね。あ、もしかしてディーさん式典終わったら毎回抜け出してる?」


その言葉にディーさん無言で笑顔。こりゃ抜け出してるな。


「式典ほど重要で退屈なものはない。毎回決まった事しかやらんからな。しかし、街は面白いぞ? 王都に人出がかなり集まるからな。外国の商人も多く来るし珍しい品物も露天に並ぶ」


「じゃあその時はディーさんと一緒に行っていい?」


「あぁ。一緒に回ろう。こっそり抜け出すのは中々楽しい」


「こっそりなんだ?! 怒られないの?」


「毎回だからな。皆もう諦めてるだろう」


それを許してあげるなんて皆心が広いなぁ。それだけディーさんが信用されて好かれてるって事でもあるんだろうけど。

ルーザは再び上昇し、景色は再び遠くなる。木をなぎ倒すような音がして見てみれば今までいた所にティラノサウルスみたいな恐竜が口をガチンと閉じて悔しそうに私達を見ていた。


「え?! 何あれ!!!」


危なかったぁ………一気に血の気が下がる。


「あれが地竜だミオン。今の奴はかなりでかかったな。普通は馬車より少し大きい位なんだが。飛竜は危険に敏感だ。任せておけば危険はない」


まだ心臓がドキドキしてるよ。


「ディーさん気付いてたの?」


「上昇する瞬間にな。ルーザが一瞬緊張した」


「教えてくれれば良かったのに。ビックリしたよ」


「む。そうかスマン。安全なのは分かってたのでな。つい言いそびれた」


今度は言ってねというと神妙な顔でディーさんが頷く。

シイナイ山脈の手前、小さな山がある所、虹がかかってると思って目を凝らせば小さな滝が目に入る。川があるであろう所は木々に隠れて見えないけれど遠目からとても綺麗な滝だと解った。一直線に落ちる水がキラキラキラキラ太陽に反射して宝石みたい。ルーザが身体を倒してそちらに向かうのが分かった。


「あそこにいくの?」


期待を込めてそう聞けば楽しそうに笑うディーさん。


「そうだ。今日はあそこで朝ご飯だな」


「そう言えばディーさんいつもは朝食べないよね」


「いつもはな。どうも朝食べると身体が重くなる気がして仕事にならん。今日は休みだしな問題ない」


そうだったんだ。新事実発見ですな。

そうこうしているうちにルーザがどんどん滝に近づいていく。小山だと思ってたんだけど意外と大きい。滝も大きく大量の水が滝壺に落ちていた。虹も一つだけでなく2個、3個と掛っている。


「うわぁ~!凄い綺麗~!!」


山の上の方は丁度紅葉が見頃で滝の水と共に色の変わった葉がヒラヒラと宙を舞い落ちる。滝の横にある岩棚にはクラスター状の水晶のようなものが群生し見る方向によって色を変えていた。それはとても幻想的な光景だった。

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