第25話 心おきなく遊べる
ジュド―さんが帰ってすぐにはなんだか宿題をする気になれず、数時間ミーシャさんとおしゃべりして過ごした。ミーシャさんは、さっきの話を聞いてたのに何も言わずただ私の無駄話しに付き合ってくれる。
甘えさせてもらってるなぁ。私。うん。明日はミーシャさんにもお土産買ってかないと………ディーさん出世払いでお小遣いくれないかな? あーでも返せる当てがないんだよな。
アルバイトでも出来ればいいのに。まぁ、この容姿じゃ目立ちすぎて何処も雇ってくれないと思うけど。今度、ヨランダさんに私が出来そうな事ないか聞いてみよう。
最後にお茶を頂いて休憩終り。宿題は頑張ってなんとか終わらせた。
これで、明日は心おきなく遊べるぞう!!!
そんなこんなでアッと言う間に時は過ぎ、今は夜。ディーさんは、最後の最後でトラブルがあったらしく夕飯も一緒に食べられなかった。今さっき先に寝てるようにと言伝が。ここへきて初めての一人寝です。隣が空いてるのは何だか寂しい。ワクワクしすぎて寝れなかったらどうしようと言う心配もすることなく御就寝。あっと言う間に夢の中でした。
「朝だーっ!」
快調に飛び起きた私は子供のようにベットの上で一跳ねするとディーさんを起こしにかかった。って言っても私の第一声で起きてた模様。残念。
「元気だなミオン」
「うん!! だって楽しみにしてたんだもん♪」
ワクワクしすぎていつもより早く目が覚めたちゃった。
そこで、はたと思い出した。ディーさん昨日は残業だった!!!
「は。ごめん昨日遅かったんだよね? まだ寝ててもイイデスヨ?」
「問題ない。そんなに遅くはならなかった。どのみち今日はいつもより早く起きるつもりだったから丁度いい」
そう言ってディーさん欠伸を噛み殺す。
「着替えたら厨房に寄って軽食を貰ってから竜舎に行くぞ」
「はぁい!」
この日の服はほぼ乗馬服。鶯色に染められた一つボタンでとめるブレザーと編み上げブーツに濃紺色のジョッパーズパンツ。ブレザーは襟と袖口の所に金糸で刺繍が施されてて腰のあたりには可愛く大き目のリボンがついてるもの。ジョッパーズパンツもサイドに金糸の刺繍が入っててブーツインすれば今日の着替えが完成だ。人目につきそうな所ではラシャをかぶらないとだけどね。
ディーさんの服は二つボタンのブレザーにもちろん腰にリボンはなくて代わりに両肩に肩章と右肩に飾緒がついている。どちらかというと軍服寄り。色は上下黒。私と同じように刺繍が入っていてそれはやっぱり金色だった。どちらかと言うと派手な組み合わせなのに煩くないのは何故だろう? ヨランダマジック? やっぱり編み上げブーツにパンツを入れて帯剣すれば今日のディーさんのお着替えも終了です。
「では行こうかミオン」
「うん! ミーシャさん行ってきます!!」
手を振りながら言うとミーシャさんも手を振り返してくれた。
「行ってらっしゃいませ。陛下、ミオン様。楽しい一日をお過ごし下さいね」
ミーシャさんに見送られ向かった先はまず厨房。そこではゼファンさんをはじめ、料理人さん達がずらりと並びお出迎え。軽食のハズがちょっと荷物が大きく見える。
「………ゼファン大きくないか?」
「は。その済みません。お二人に美味しいものを食べて頂きたいという我等の気持ちが勝りまして」
少し多くなりました、とゼファンさん。
「まぁ、飛竜に積めるから良いが………そうか」
少し困惑した顔のディーさんにハラハラしてる料理人さん達。みんな分かりやすいなぁ。
「大丈夫だよ。食べきれなかったらお昼にも食べればいいじゃん。美味しいお料理が二回も食べれるんだよ?」
そう言ったら料理人さん達が嬉しそうにガッツポーズ。
「そうだな。貰って行くぞゼファン」
「は。どうぞ。良い一日をお過ごし下さい」
受け取ったディーさんが軽々と荷物を持ち上げる。見た目の大きさより意外と軽かったのかな。
皆にお礼を言ってその場を後にして………さぁ、いよいよ飛竜とご対面☆
外に出ればピカピカの快晴。秋口の涼しい風が心地いい。
そんな中進んで行けば裏の方に厩舎を大きくしたような建物があった。あれがおそらく竜舎なんだろう。ディーさんの後に続いて入ればなんだろう、お香のような香りがする………? 意外だ。ごめんなさい、もっと汚れてる所を想像してました。そんな感じで中に入っていくとクルルルと可愛らしい鳴き声が。
「これが飛竜?」
声の主はエリマキトカゲを馬鹿でっかくして羽根を生やしたつぶらな目のイキモノ。やだ、なんか可愛い。想像してたドラゴンって感じじゃないけどこれはこれでありかな。
鈍色に輝く鱗はまるで宝石のよう。お香のにおいだと思ったのはどうやらこの子の体臭らしい。
「そうだ。名はルーザという」
「よろしくね、ルーザ」
そう言って鼻先を撫でてやればその手をぺろりと舐められた。
「どうやらルーザはミオンが気に入ったらしいな」
「ほんとに? やった!」
撫で撫でしているともっと撫でて撫でてとすり寄って来る可愛いルーザ。なんだかワンちゃんみたい。
ディーさんが一旦お弁当を置いて近くに掛っていた豪華な鞍をルーザに装着し始める。
「こう言うのって普通王様はやらないんじゃないの?」
「普通はそうだ。こいつは存外気難しくてな。普段ルーザの面倒を見て貰う竜舎番はいるが………こいつは主と認めた俺以外の者が鞍を置くのを嫌う。これは野生種の血が濃いものに多い。おかげでこいつに主と認めさせるのにかなりの時間がかかった」
「ふーん………認めてもらうのって大変なんだね」
こんなに懐かれた身としてはちょっと信じられない。
「じゃあ、気に入ってくれた私でも駄目かな?」
「どうかな? 試してみるか?」
悪戯っぽく言われて、ちょっと考える。
「やっぱりいいです………。嫌われたくないもん」
「まぁ、それが無難だな」
ディーさんが鞍を置き終わったので、私はお弁当を手渡そうと荷物を持った、と思った。
「重!!!」
ディーさんが軽々持っていたのでもっと軽いかと思ったら、とてつもなく重かった。勢いでそのまま後ろに倒れそうになる。ゼファンさん、一体何入れたの???
「あぁ………大丈夫か? それはミオンには無理だ。」
そう言ってディーさん軽々と荷物を鞍の後ろに括りつける。
「そんな重いのルーザ大丈夫なの?」
「問題ない。もっと重い物をのせても軽々運ぶ」
ここでひ弱なのはどうやら私だけのようだ。ディーさんてとっても力持ちだったんだなぁ………。それともやっぱり男の人だからかな?
ルーザにあっという間に好かれました。楽しいデートの始まりです。