第24話 なんだか不思議な夢を見ました
今日は後半湿っぽくなっちゃいましたが最後の最後でディーさんから嬉しいお話が。お休み取れたんだって!!! 急だけど明後日。一応リン先生にはディーさんからお休み申請してくれたそう。明後日は飛竜に乗りますょ☆大変楽しみ。さて、夜も遅くなった所でいつものようにお休みした所、なんだか不思議な夢を見ました………。
まず聞こえたのは水音。何かに呼ばれた気がして、私は上手く動かない身体をそちらに向ける………。
気付けばそこは見た事もない泉の上だった。そこには女性。白い綺麗な毛並みがフワフワと風に揺れてる。背中を向けていて顔を伏せているので表情は良く分からない。私と彼女の間にはまるで薄い膜が張られているよう。
水の上に立っているって言うのに不思議と恐怖はない。ただ、寂しげなその背中を抱きしめてあげたくて私はそっと手を伸ばす。それは酷くゆっくりでもどかしく妙な焦燥感を私は覚えた。
そんな私に気付いたのか女性が顔をあげて………涙を湛えた緑の瞳が驚いたように私を見つめる―――。私は胸が苦しくて心臓がドキドキしてたまらなくて………伸ばした手は彼女に届かず、そのまま私は暗闇に落ちた―――。
がばっといきなり起きた私に、隣で寝ていたディーさんが驚きながら目を覚ます。
外はまだ薄暗い。朝はまだ先のようだ。
「どうした! ミオン」
「ごめん………なんか………夢見た」
「怖い夢だったのか?」
そう言ってディーさんが私の頬を指でなぞる。そこで初めて私は自分が泣いているんだって気付いた。
「んーん。怖くはなかったの………ただ、とても哀しい感じ」
そこで私は夢で見た内容をディーさんに話して聞かせる。
「見た事ない場所で、見た事もない人だったのになんだかその人の気持ちに同調してるっていうの? 凄く不思議な感じだった」
私が落ち着くように背中を撫でてくれていたディーさんがポツリと呟く。
「神夢だな………。泉は神々の象徴だ。神々は地上に降りられる時は泉を門として使うと言う。俺がミオンを召喚したのも泉だっただろう? 神々と対話できるのも泉と言われているんだ。巫女や神官の多くは神々と夢で対話する事もある。その時出てくるのがやはり泉だ。その夢は神々からの啓示だろう」
「でも、哀しいだけで何をしなさいとかなかったよ?」
「神々の啓示は先に分かる事の方が珍しいんだ。大抵終わってみたらこう言う意味であったのかと分かる事の方が多い………だが、俺にはその女性が、俺の先祖に呪いをかけた女神のように思えてならない」
「やっぱり、探せって事なのかなぁ………」
「そうだな………その可能性もある。明日、午後にジュド―を行かせる。夢の内容を話してみるといい。神官のあいつの方がその手の夢には慣れている。何か分かる事もあるかもしれん」
コクリと頷くと大きな手で頭を撫でられた。
「さぁ、もう寝るがいい。哀しい夢や怖い夢を見たとしても隣には俺がいる大丈夫だ」
「うん。お休みディーさん。アリガト」
そう言って手を握る。子供っぽかったけど、今はなんだか寂しくてそうしたい気分だった。
そんな私に黙って手を繋いだままでいてくれるディーさんはやっぱりとっても優しいと思う。
さて今度こそ朝が来て、今日のリン先生の授業は神話から学ぶ事で一杯でした。一通り神話授業が終わったら今度はこの国の歴史をやるんだって。後この世界の地図も貰っちゃった!
国の場所、首都、各国の交流関係、工芸品や名産品等がイラスト付きで描かれてる。どうやらリン先生がわざわざつくってくれたみたい。
「リン先生! これ先生が?」
「えぇ、市販されているものだとミオン様に分かりにくそうだったので………あまり上手ではありませんが描いてみました」
「とっても上手です! 有難うございます。私この地図大事にしますね!!」
嬉しくてそう言えばリン先生もにっこり笑ってくれた。
「そう言って頂ければつくった甲斐がありました。ミオン様のその笑顔が私へのご褒美ですね」
「私の笑顔が御褒美になるんでしたら私、リン先生には何時でも笑ってなきゃ。だってとってもお世話になってるんですもん」
考えながらそういうと、リン先生は大まじめにこう言った。
「ははは。無理に笑う必要はありませんよ? 心から笑いたいときだけでいいんです」
「はい。でも本当に嬉しかったので………有難うございます」
ぺこりと頭を下げるとミーシャさんが良かったですねミオン様と言ってくれた。
今日の授業はこれでお終い。リン先生を見送った後はディーさんと美味しくお昼を食べて午後になり、さぁ宿題やるぞという所で訪問者。ミーシャさんのお兄さん、神官のジュド―さんだ。
「妃殿下、お久しぶりです。私の事は覚えてらっしゃいますか?」
「こんにちは、ジュド―さんですよね?私が召喚された場にいた………ミーシャさんのお兄さん」
そう言うとジュド―さんニコリと微笑んだ。
「そうです。覚えていて頂いたのですね。突然の訪問お許し下さい………陛下から、妃殿下が夢を見たと伺いました」
「あ、はい。取りあえずどうぞ座って下さい」
私が立ったままのジュド―さんに椅子をすすめると、ジュド―さんも椅子に座り、そこにミーシャさんが紅茶を淹れて持ってきてくれた。
私はそのまま、昨日ディーさんに話したのと同じ夢の内容をジュド―さんに話す。
「間違いなく神夢ですね。私も何度か見た事があります。神夢はまず水音からはじまると決まっているのです。妃殿下は感知能力がお高いのでしょう。それほどまでにはっきりと御姿を見れるものはこの国で限られた巫女と神官だけです」
どうやら普通はあんなにはっきり見れるものでもないらしい。
「陛下がおっしゃった通り、その方は呪いの女神である可能性が高い。何故妃殿下の夢に出てこられたのかは正直分かりかねますが………女神は妃殿下を御覧になったのですね?」
「うん。驚いた顔をしてたよ」
「でしたら、女神は実際に妃殿下に気付かれたのだと思います」
考え込むようにそう言ってジュド―さんは言葉を一旦切った。
「これはまずない事です。神々の夢は一方的に流れるだけで、神々が私達をお認めになる事はありません」
「そうなの………?」
「はい。正直、それが何をもたらすものなのか………なにぶん前例がないので」
「そうなんだ………」
「お役に立てず申し訳ありません。ですが、その時お感じになられた感情は妃殿下のものではありません。女神のものです。難しいかも知れませんがなるべく切り離してお考えいただいた方が良いと思います」
確かに。毎回、感情に引きずられてたら身が持たない気がする………。またあるかどうかは分かんないけど。
「努力します」
私はそう言って苦笑いした。
深音に新たな能力発覚。女神は何を哀しんでいたのか?